平成23年度 秋期 応用情報技術者試験 問21−40 解答編




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応用情報

(応用情報技術者試験)

解答と解説のページです。

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問21 デマンドページング方式による仮想記憶の説明として、適切なものはどれか。
あるページのアクセス時に、連続する後続のページも主記憶に読み込む。
プログラムで次に必要な手続を指定して、当該ページを主記憶に読み込む。
プログラムと同時に、処理対象のデータ部分も主記憶に読み込む。
ページフォールトが発生したときに、当該ページを主記憶に読み込む。
解答
解説 デマンドページング方式は、ページフォールト(物理メモリへのアクセス要求)が発生したときに、該当するページを読み込むものです。これによりメモリ量の節約や取り扱うページ量の縮小、ロード時間の短縮などの効果があります。

他の代表的な方式として、以前参照されたページを覚えておき、スケジューリングと照らし合わせて前もってロードするプリページング方式等があります。

問22 メインプログラムを実行した結果はどれか。ここで、staticは静的割当てを、autoは動的割当てを表す。

画像(問22)を表示できません
画像(問22ans)を表示できません
解答
解説 まず、変数の動的割当てとは、そのプログラム(関数)が終了すると同時に解放される(値が消える)もので、静的割当てとは、そのプログラムが終了しても値を保持し続けるものです。(初期化は最初の1回のみ行われるのが普通です。)

x=f(2)+f(2)は、まず左側のf(2)が実行され、u=2,v=1なので、v=3が返されます。
右側のf(2)についても同じなので、3+3で6となります。

y=g(2)+g(2)は、まず、左側のg(2)が実行され、u=2,v=1なので、v=3が返されます。
右側のg(2)はvが3を保持したままなので、u=2,v=3により5が返されます。よって、3+5で8となります。

問23 LSIの故障メカニズムの一つであるESD(Electrostatic Discharge)故障の説明として、適切なものはどれか。
機械的な力によって、配線が切断されてしまう現象
寄生サイリスタの導通によって、半導体素子が破壊されてしまう現象
静電気放電によって、半導体素子が破壊されてしまう現象
電流が過度に流れることによって、配線が切断されてしまう現象
解答
解説 それぞれの故障をまとめると以下のようになります。

選択肢ア:物理的要因による故障の説明です。
選択肢イ:ラッチアップによる故障の説明です。
選択肢ウ:ESD(静電気放電)による故障の説明です。
選択肢エ:過電流による故障の説明です。

なお、サイリスタとはスイッチの一種で、オンのみを操作しオフは電流がなくなることで制御するものです。

問24 図の論理回路において、S=1、R=1、X=0、Y=1のとき、Sを一旦0にした後、再び1に戻した。この操作を行った後のX、Yの値はどれか。

画像(問24)を表示できません
X=0、Y=0
X=0、Y=1
X=1、Y=0
X=1、Y=1
解答
解説 このように、出力を入力にフィードバックし、一時的に値を保持する論理回路をフリップフロップといい、様々な種類があります。順番に追いかけていきます。

初期条件(フィードバック部分を赤で補完します)

画像(問23_1)を表示できません

Sを1から0にします。

画像(問23_2)を表示できません

Sを0から1に戻します。

画像(問23_3)を表示できません

このようなフィリップフロップをRS型(リセット・セット型)といいます。S=R=0の場合は前の状態を保持するというのが特徴です。

問25 マイクロプロセッサの省電力対策に関する記述のうち、適切なものはどれか。
CMOSよりもバイポーラ素子を使用した方が、消費電力を少なくできる。
CMOSを使用したプロセッサでは、動作周波数を低くすることによって、論理反転時の電流が減少し、消費電力を少なくできる。
クロックゲーティング方式を使用すると、スタンバイ時にプロセッサに対する電圧供給を停止できるので、消費電力を少なくできる。
動作電圧を高くすることによって、内部の演算処理が高速になり、消費電力を少なくできる。
解答
解説 それぞれの選択肢について順に見ていきます。

まず、バイポーラ型一般的に用いられるトランジスタの一種で、CMOSはMOSFETという電界効果トランジスタを用いたゲート構造をいいます。

選択肢ア:CMOSの方が、バイポーラ型よりも省電力です。
選択肢イ:動作周波数を低くすると、消費電力を少なくできます。
選択肢ウ:クロックゲーティングは、使用されていない回路へのクロックを停止する技術で、電力供給ではなくクロックを停止します。
選択肢エ:動作電圧を高くすると、処理は高速になる場合が多いですが、消費電力は増えます。

問26 フールプルーフに該当するものはどれか。
更新の対象となるデータをコピーして保存する。
入力したデータの取消し操作を行うことができるようにする。
メニュー画面上の使用権限のない機能は、実行できないようにする。
利用者の操作内容をログとして保存する。
解答
解説 フールプルーフとは、ユーザが誤った操作をした場合、危険に晒されることがないように事前に安全策を行うことです。

具体的なユーザインタフェースの例としては、以下のようなものがあります。
・処理を確定させる前に確認をする。
・異常な値や形式が異なる場合には警告をする。
・使用できないものは、あらかじめ実行不可にしておく。

問27 自然言語の解析などのために、文学作品、会話、新聞記事などの大量の文章を蓄積したテキストデータベースはどれか。なお、生の文章そのものを収集したもの、文法的情報を付加したもの、意味的情報を付加したものなど様々な形態がある。
アーカイブズ
コーパス
シソーラス
ハイパテキスト
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

アーカイブズ:文書保管を行う公的な施設や保管の仕組みなどを表します。また複数のファイルをまとめることやまとめたファイルのことを指す場合もあります。
コーパス:言語解析などに用いるために、自然言語を構造化し蓄積した主にテキストベースのデータベースをいいます。
シソーラス:「医師、医者、doctor」などの類似した意味を分類しまとめた辞書やデータベースをいいます。類似関係だけでなく、上下関係、部分関係などもあります。
ハイパテキスト:リンクを用いて、複数のテキストを相互に参照可能にしたものや、その仕組みをいいます。

問28 表の所有者が、SQL文のGRANTを用いて設定するアクセス権限の説明として、適切なものはどれか。
パスワードを設定してデータベースへの接続を制限する。
ビューによって、データベースへのアクセス処理を隠蔽し、表を直接アクセスできないようにする。
表のデータを暗号化して、第三者がアクセスしてもデータの内容が分からないようにする。
表の利用者に対し、表への問合せ、更新、追加、削除などの操作を許可する。
解答
解説 基本的なSQLの命令を下にまとめます。

データ操作言語(DML)
SELECT:データを検索するときに使う
INSERT:データを挿入するときに使う
UPDATE:データを更新するときに使う
DELETE:データを削除するときに使う

データ定義言語(DDL)
CREATE:表などを作る
DROP:表などを削除する
ALTER:表などを更新する
TRUNCATE:表などを削除する

データ制御言語(DCL)
GRANT:アクセス権を付加する
REVOKE:アクセス権を剥奪する
COMMIT:トランザクションを確定する
ROLLBACK:トランザクションを取り消す

問29 価格設定年月日にNULLを含む“商品”表に対して、次の問合せを行った。この検索結果の行数は幾つか。

SELECT 商品コード FROM 商品 WHERE 価格設定年月日 < ’2011−12−01’

画像(問29)を表示できません
解答
解説 NULL(nilといわれる場合もあります)というのは空値を表し値がないことを表します。0や空の文字列とは異なり、特殊なものとなっています。

NULLは大小関係を付けられないので、問題文のSQL文では、抽出されません。(IS NULL、IS NOT NULLなどで抽出できます。)
よって、価格設定年月日 が2011−12−01より以前のS001とS002の2つが取り出されます。

問30 更新可能なビューを作成するSQL文はどれか。ここで、SQL文中に現れる表は全て更新可能とする。
CREATE VIEW 高額商品(商品番号、商品名、商品単価) AS SELECT 商品番号、商品名、商品単価 FROM 商品 WHERE 商品単価 > 1000
CREATE VIEW 受注商品(商品番号) AS SELECT DISTINCT 商品番号 FROM 受注
CREATE VIEW 商品受注 (商品番号、受注総量) AS SELECT 商品番号、SUM(受注総量) FROM 受注 GROUP BY 商品番号
CREATE VIEW 商品平均受注数量(平均受注数量) AS SELECT AVG(受注数量) FROM 受注
解答
解説 ビューとは、実表ではない利用者の視点の一時的で仮想的な表のことです。ビューを更新する際は、元のデータと対応づいていなければなりません、つまり、 集計データであるGROUPBY句でまとめられている場合や関数・演算を使っている場合、DISTINCTで重複を排除している場合は、更新ができません。

問31 導出表を説明したものはどれか。
実表に依存していない表のことである。
実表の一部をコピーして別に保存した表である。
何らかの問合せによって得られた表である。
二つ以上の実表の関連である。
解答
解説 導出表とは、データベースにおいて元の表に何らかの処理を行い導出した表のことをいいます。具体的にはビューなどがこれの一種に相当します。

問32 “部品”表のメーカコードに対し、B+木インデックスを作成した。これによって、検索の性能改善が最も期待できる操作はどれか。ここで、部品及びメーカのデータ件数は十分に多く、メーカコードの値は均一に分散されているものとする。また、ごく少数の行には、メーカコード列にNULLが設定されている。
メーカコードの値が1001以外の部品を検索する。
メーカコードの値が1001でも4001でもない部品を検索する。
メーカコードの値が4001以上、4003以下の部品を検索する。
メーカコードの値がNULL以外の部品を検索する。
解答
解説 まず、B+木とはバランス木の一種で、これをインデックスに利用することで、効率よくデータを検索することができます。B+木は一定の範囲ごとをポインタで接続されている構造なので、選択肢ウが最も効率化が期待できます。

問33 元のデータベースと同じ内容の複数のデータベースをあらかじめ用意しておき、元のデータベースの更新に対し、非同期にその内容を複数データベースに反映する手法はどれか。
2相コミットメント
クラスタリング
ミラーリング
レプリケーション
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

2相コミットメント:分散しているDBなどにおいて、2段階でコミットやロールバックを指示するシステムのこと
クラスタリング:複数のコンピュータを接続し、1台の高性能なコンピュータのようにして利用する技術
ミラーリング:複数の保管場所(HDDなど)に同時に書き込むこと
レプリケーション:データの複製(レプリカ)を作成し、オリジナルのデータに変更が発生すると、レプリカに反映するもの

問34 10Mビット/秒のLANで接続された4台のノード(A,B,C,D)のうち、2組(AとB,CとD)のノード間でそれぞれ次のファイル転送を行った場合、LANの利用率はおよそ何%か。ここで、転送時にはファイルの大きさの30%に当たる各種制御情報が付加されるものとする。また、LANではリピータハブが使用されており、更に衝突は考えないものとする。

ファイルの大きさ:平均1,000バイト
ファイルの転送頻度:平均60回/秒(1組当たり)
10
12
解答
解説 まず、転送データ量をもとめます。(1000バイト(データ本体)+300バイト(各種制御情報))×60(転送頻度)×2(組)=156,000バイト。つぎに、転送回線は10Mビット/秒なので、1.25Mバイト/秒となり、156kバイト/1250kバイト=0.1248となり、約12%使用していることが分かります。

問35 ルータの機能に関する記述のうち、適切なものはどれか。
MACアドレステーブルの登録情報によって、データフレームをあるポートだけに中継するか、全てのポートに中継するかを判断する。
OSI基本参照モデルのデータリンク層において、ネットワーク同士を接続する。
OSI基本参照モデルのトランスポート層からアプリケーション層までの階層で、プロトコル変換を行う。
伝送媒体やアクセス制御方式の異なるネットワークの接続が可能であり、送信データのIPアドレスを識別し、データの転送経路を決定する。
解答
解説 OSI基本参照モデルと対応するネットワーク機器をまとめると、以下のようになります。

OSIを表示できません

選択肢アは、ブリッジやL2スイッチの説明です。
選択肢イは、ブリッジやL2スイッチの説明です。
選択肢ウは、ゲートウェイの説明です。

問36 電子メールの内容の機密性を高めるために用いられるプロトコルはどれか。
IMAP4
POP3
SMTP
S/MIME
解答
解説 まず、メールの転送の際のプロトコルをまとめると下のようになります。

メールを表示できません

IMAP(Internet Message Access Protocol)は、メールサーバ上の電子メールにアクセスして操作するプロトコルです。(POP3と違いメールは基本的にサーバ上に残ります。)
MIME(Multipurpose Internet Mail Extensions)とは、本来アスキーコードしか電子メールで様々なフォーマットを取り扱えるようにしたものです。
そして、S/MIMEは、Secure/MIMEのことで、MIMEにセキュリティ機能をつけたものです。暗号化やディジタル署名をすることができ、改ざんを検出することができます。

問37 IPの上位プロトコルとして、コネクションレスのデータグラム通信を実現し、信頼性のための確認応答や順序制御などの機能をもたないプロトコルはどれか。
ICMP
PPP
TCP
UDP
解答
解説 それぞれのプロトコルを以下にまとめます。

ICMP(Internet Control Message Protocol):IPプロトコルのエラー通知及び情報通知のために使用されるプロトコル。
PPP(Point to Point Protocol):ダイヤルアップ認証などに利用されるプロトコルで、これをイーサネットに拡張したPPPoEなどもあります。
TCP(Transmission Control Protocol):コネクション型で、信頼性を保証する分、UDPより遅い。インターネットで一般的に利用されている。
UDP(User Datagram Protocol):コネクションレス型で、信頼性は保証されない分高速に通信ができる。多少の誤りが許される場合や、自分自身でプログラムするときなどに用いられることが多い。

問38 ディジタル署名を生成するときに、発信者がメッセージのハッシュ値をディジタル署名に変換するのに使う鍵はどれか。
受信者の公開鍵
受信者の秘密鍵
発信者の公開鍵
発信者の秘密鍵
解答
解説 発信者(送信者)の秘密鍵を利用したディジタル署名は以下のようにして実現され、本人確認と改ざんの検出ができます。

ディジタル署名を表示できません

問39 フィッシング(phishing)による被害はどれか。
インターネットからソフトウェアをダウンロードしてインストールしたところ、設定したはずのない広告がデスクトップに表示されるようになった。
インターネット上の多数のコンピュータから、公開しているサーバに一斉にパケットが送りこまれたので、当該サーバが一時使用不能になった。
知人から送信されてきた電子メールに添付されていたファイルを実行したところ、ハードディスク上にあった全てのファイルを消失してしまった。
“本人情報の再確認が必要なので入力してください”という電子メールで示されたURLにアクセスし、個人情報を入力したところ、詐取された。
解答
解説 フィッシングとは、偽者のWebページに誘い出し個人情報を入力させ盗む行為です。

選択肢アは、アドウェアの説明です。
選択肢イは、DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃の説明です。
選択肢ウは、コンピュータウィルスの説明です。

問40 クライアントとWebサーバの間において、クライアントがWebサーバに送信するデータを検査して、SQLインジェクションなどの攻撃を遮断するためのものはどれか。
SSL−VPN機能
WAF
クラスタ構成
ロードバランシング機能
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

SSL−VPN機能:SSL(Secure Socket Layer)を応用して、仮想的な専用回線であるVPN(Virtual Private Network)を構築する機能です。
WAF(Web Application Firewall):パケットフィルタリングなどでアクセス許可を行うのではなく、アプリケーションレベルでの入出力内容などでアクセス許可を行うファイアウォールです。
クラスタ構成:複数のコンピュータを接続し、1台の高性能なコンピュータのようにして構築したもの
ロードバランシング機能:複数台サーバがある場合などに、アクセスの負荷が均等になるように接続先サーバを決める機能です。