平成22年度 春期 ITパスポート試験 問1−20 解答編




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ITパスポート

(エントリ試験)

解答と解説のページです。

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問1 他社が開発した先進的な技術と高い研究開発能力をもった人材を、自社固有の経営資源として取り込むことが可能な戦略はどれか。
M&A
R&D
アライアンス
技術提携
解答
解説 四つの用語を下にまとめます。

M&A(Mergers and Acquisitions):株式などによる企業の合併・買収
R&D(Research and Development):企業の研究開発活動
アライアンス:企業提携のことであり、共同で事業を行っていくこと。
技術提携:その名のとおり、複数の会社が技術的な情報を提携すること。

問2 A社、B社の売上高及び営業利益のグラフの説明として、適切なものはどれか。

画像(問2)を表示できません
A社はB社より売上高の伸び率が高いが、2008年の売上高営業利益率は低い。
A社はB社より売上高の伸び率が低いが、2008年の売上高営業利益率は高い。
A社はB社より売上高の伸び率も2008年の売上高営業利益率も高い。
A社はB社より売上高の伸び率も2008年の売上高営業利益率も低い。
解答
解説 売上高や売上高営業利益率について知っておくことが望ましいですが、今回は用語の意味ではなく、グラフの読取りに関してなので、これらの知識は必要ありません。

グラフから、売上と売上高営業利益率に関して読み取れることをまとめます。
・売上の伸び率はB社のほうが高い
・売上高営業利益率はA社のほうが高い(売上高営業利益率の伸び率ではありません。)

よって、選択肢イが正解であることがわかります。

問3 問題解決手法の一つであるブレーンストーミングのルールとして、適切なものはどれか。
各自でアイディアを練り、質が高いと思うものだけを選別して発言する。
他人が出したアイディアを遠慮なく批判する。
他人の出したアイディアに改良を加えた発言は慎む。
突飛なアイディアも含め、自由奔放な発言を歓迎する。
解答
解説 ブレーンストーミングは集団で行う問題解決法・アイディア創造法で、以下のような原則があります。

@批判厳禁:どんなに突拍子もない意見であっても否定・批判をしてはいけません。
A質より量:熟考して出した一つの意見よりも、たくさんの意見を出します。
B結合・便乗:前に出た意見は、自由に自分の意見に利用してもかまいません。
C自由奔放:突飛なアイディアを歓迎します。

これにより、自由な意見を発言することができ、アイディアが生み出されやすくなるという手法です。

問4 B社は図のような流れで情報システムを調達した。aに当てはまるものはどれか。

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NDA
RFI
RFP
SLA
解答
解説 RFI、RFP、RFQの3つを順に解説します。

RFI:(Request for Information)情報提供依頼書
RFP:(Request For Proposal)提案依頼書
RFQ:(Request For Quotation)見積依頼書

まず、RFIで業者に情報提供を依頼し、それをもとに業者を選定します。その後選定した業者に、具体的な内容を求めるRFPを依頼します。最後に価格などを決めるRFQを依頼します。RFPとRFQは一緒になる場合もあります。

NDA(Non-Disclosure Agreement)とは、秘密保持契約のことです。
SLA(Service Level Agreement:サービス水準合意)とは、サービスレベル合意書に基づき、顧客要件を満たすITサービスの提供を実現し、その品質の継続的な改善に必要なプロセスを構築するという考え方です。

問5 次の損益計算書から求められる営業利益は何百万円か。

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300
500
550
1,500
解答
解説 代表的な利益の計算方法について以下にまとめておきます。

売上総利益、粗利益:商品や製品そのものの儲け『売上高 − 売上原価』
営業利益、営業損益:原材料に、仕入れコストなどを考慮して出した利益『売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費』
経常利益、経常損益:活動で得られる利益。企業の採算性の指標となる『売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費 + 営業外損益』
純利益:経常利益に特別損失と税金などを差し引いて残る利益『売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費 + 営業外損益 + 特別損益』

よって、営業利益=売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費=7,500−6,000−1,000=500となります。

問6 企業の売上高、固定費及び変動費が分かっているとき、損益分岐比率、損益分岐点及び変動費率は、それぞれ次の式で求めることができる。これらの式から言える適切な記述はどれか。

損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 売上高
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1−変動費率)
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
売上に占める固定費が大きいほど、損益分岐点比率は低くなり、利益は増加する。
損益分岐点比率が高いほど、売上に対する利益は多くなる。
損益分岐点比率が低いほど、売上に対する利益は多くなる。
変動費率が高くなれば、損益分岐点比率は低くなり、利益も低下する。
解答
解説 まず、重要な用語を下にまとめます。

損益を表示できません

なお、損益分岐点売上高は、損益分岐点のときの売上で、損益分岐点比率は、損益分岐点売上高の売上高に対する割合を指します。
これと、問題文中にある定義式を使って、選択肢を見ていきます。

選択肢ア:固定費が大きいほど、損益分岐点比率は高くなり、利益は減少します。
選択肢イ:損益分岐点比率が高いほど、売上に対する利益は低くなります。
選択肢ウ:損益分岐点比率が低いほど、売上に対する利益は高くなります。
選択肢エ:変動費率が高くなるほど、損益分岐点比率も高くなり、利益は減少します。

問7 コンピュータを活用した新しいビジネスモデルを構築した。このビジネスモデルを保護する法律はどれか。
意匠法
商標法
著作権法
特許法
解答
解説 それぞれの法律(法律で保護されている権利)を下にまとめます。

意匠権は、新規の美術・工芸・工業製品などで、その形・色・模様・配置などについて加える装飾上の工夫を、独占的・排他的に使用できる権利です。
商標権は、事業者が自己の商品を他人の商品と識別するために商品について使用する標識を、独占的・排他的に使用できる権利です。
著作権は、作成者が、作成物を排他的に独占できる権利で、作成した瞬間から死後50年間保護されます。省庁への申請や登録は必要ありません。
特許権は、産業上利用することができる新規の発明を独占的・排他的に利用できる権利であり、所轄の官庁への出願及び審査に基づいて付与される権利です。

問8 経営戦略が策定され、その戦略の一つに“営業部門の組織力強化”が掲げられた。この戦略を実現するための情報システムとして、適切なものはどれか。
MRPシステム
POSシステム
SCMシステム
SFAシステム
解答
解説 選択肢の用語を以下にまとめます。

MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)とは、適切な場所で適切な量(過剰や不足を防ぐ)の在庫を確保するために、発注点や発注量を計算し計画することです。Materialとは資材・物質、Requirementsは必要物、要求という意味です。
POS(Point of sale:販売時点情報管理)とは、コンビニやスーパーなどのレジで利用されるもので、商品の売上の計算などを行う装置(システム)です。
SCM(Supply Chain Management:供給連鎖管理)とは、材料の調達から販売までを最適化することで無駄をなくし、最適な生産を行うという材料販売管理システムです。
SFA(Salse Force Automation:営業支援)とは、営業の支援を行うシステムや、システムを使った効率化のことをいいます。

問9 “モノ”の流れに着目して企業の活動を購買、製造、出荷物流、販売などの主活動と人事管理、技術開発などの支援活動に分けることによって、企業が提供する製品やサービスの付加価値が事業活動のどの部分で生み出されているかを分析する考え方はどれか。
コアコンピタンス
バリューチェーン
プロダクトポートフォリオ
プロダクトライフサイクル
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

コアコンピタンス:利益をもたらすことのできる、他社より優越した自社独自のスキルや技術に経営資源を集中すること。
バリューチェーン:主活動(購買、製造、出荷、マーケティング・販売、サービス)と支援活動(企業インフラ、人材資源管理、技術開発、調達)の各プロセスを付加価値が追加されていくとみなす考え方
プロダクトポートフォリオ:市場成長率と市場占有率を縦軸と横軸にとり、4つの事象に分けることで自社の製品を客観的に把握し、今後の方針を決める手法です。
プロダクトライフサイクル:製品を作る(導入期)、売上が伸びる・改良する(成長期)、製品が安定して売れる(成熟期)、ピークを過ぎて売上が落ちてくる(衰退期)の流れをいいます。

問10 親会社が、子会社を含めた企業集団の決算日における資産と負債、純資産を対比して示すことによって、企業集団の財政状態を表す連結財務諸表はどれか。
連結株主資本等変動計画書
連結キャッシュフロー計算書
連結損益計算書
連結貸借対照表
解答
解説 選択肢の財務諸表を以下にまとめます。

株主資本等変動計算書(S/S)は、純資産の変動状況を『株主資本、評価・換算差額、新株予約権、少数株主持分』の4つに分けて掲載する。
キャッシュフロー(現金流量)は、実際に得られた収入から外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れのこと
損益計算書(P/L)は、企業のある一定期間における収益と費用の状態を表す。
貸借対照表(B/S)は、企業のある一定時点における資産、負債、純資産の状態を表す。

問11 ある市場が今後、拡大、現状維持、縮小する場合の商品A,B,Cの販売利益が表のとおり見込まれており、拡大、現状維持、縮小する確率がそれぞれ0.2、0.5、0.3であるとき、どの商品を販売すると予想利益が最高となるか。ここで、商品の予想利益は販売利益の期待値から開発コストを差し引いたものとし、各商品A,B,Cの開発コストは、それぞれ20億円、10億円、15億円とする。

画像(問11)を表示できません
A,B,Cどれでも同じ
解答
解説 期待値とは、確率的な平均のことで、表のとおりの計算していくと以下のようになります。

商品Aの期待値=60×0.2+50×0.5+40×0.3=45。予想利益=45−20=25
商品Bの期待値=80×0.2+40×0.5+20×0.3=42。予想利益=42−10=32
商品Cの期待値=100×0.2+50×0.5+0×0.3=40。予想利益=40−15=25

よって、商品Bが最も予想利益が最大になります。

問12 ソフトウェアライフサイクルの主プロセスを、企画、要件定義、開発、運用、保守に分け、企画プロセスでシステム化計画の立案を行うとき、そこで実施する作業として、適切なものはどれか。
対象業務の業務内容やルール、制約などの業務要件を明らかにする。
対象業務を確認・分析し、業務機能をモデル化する。
対象システムの機能及び能力、セキュリティなどのシステム要件を明らかにする。
対象システムをテストするためのテスト仕様書を作成する。
解答
解説 ソフトウェアライフサイクルプロセス(共通フレーム2007)は、システム開発に関連する作業をプロセス、アクティビティ、タスク、リスト」の4つの階層で構成され。プロセスは、主ライフサイクル・プロセス、組織に関するライフサイクル・プロセス、支援ライフサイクル・プロセス、システム監査の視点、共通フレームの修正から構成されています。

選択肢アは、要求定義プロセスで行います。
選択肢イは、企画プロセスで行います。
選択肢ウは、開発プロセス(要求定義)で行います。
選択肢エは、開発プロセス(テスト)で行います。

問13 ASPの説明として、適切なものはどれか。
インターネットに接続する通信回線を提供する事業者、又はそのサービス形態
会員になったユーザが閲覧できる、閉じたコミュニティを形成するインターネット上のサービス
サーバ上のアプリケーションソフトウェアを、インターネット経由でユーザに提供する事業者、又はそのサービス形態
情報システムをハードウェアやソフトウェアといった製品からの視点ではなく、ユーザが利用するサービスという視点から構築していこうとする考え方
解答
解説 ASP(Application Service Provider)は、汎用的なアプリケーションシステムの機能やネットワーク経由で複数の顧客に提供するサービスをいいます。

選択肢アは、ISP(Internet Service Provider)の説明です。
選択肢イは、SNS(Social Network Service)の説明です。
選択肢エは、SOA(Service Oriented Architecture)の説明です。

問14 業務プロセスの分析時に作成するDFDの説明として、適切なものはどれか。
業務で扱う各種のデータと、それらの相互関係を示す。
業務で扱う各種のデータを、集合から要素へと階層的に詳細化して示す。
業務を構築する処理と、その間で受け渡されるデータの流れを示す。
業務を構築する処理の内容を、概要から詳細へと階層的に示す。
解答
解説 DFD(Data Flow Diagram)とは、データの源泉・吸収・処理・蓄積などの関係を、以下のような図を用いて、データフロー、プロセス、ファイル、外部の4つの記号によって表現します。

画像(問DFD)を表示できません


問15 組込みソフトウェアに該当するものはどれか。
工業製品の設計や図面の作成、モデリングなどを行うソフトウェア
自動車のエンジンに供給する燃料の量を制御するソフトウェア
ディジタルカメラで撮影した画像の編集を、PCで行うソフトウェア
表計算ソフトの機能の一つとして、マクロ計算を行うソフトウェア
解答
解説 組込みシステムとは、機器に埋め込まれてその制御を行うもので、身近なところでは、冷蔵庫や、電子レンジ、車などの数多くのものに使われています。しかし、大量のデータを高速に扱うこと(=高い演算能力)は向いていないため、使用されていません

問16 企業の経営に対する信念や価値観を社員や顧客、社会に対して示すものとして最も適切なものはどれか。
経営課題
経営計画
経営戦略
経営理念
解答
解説 選択肢の用語を下にまとめます。経営という言葉を除いて考えると簡単かと思います。

経営課題:目標を達成するために実現する問題。
経営計画:将来の予定を計画したもので、長期・短期などの長さにあわせて作成される。
経営戦略:目標達成の具体的な方針や、手順をまとめたもの。
経営理念:経営陣が、信念や方針を内外に示すもの。

問17 TOBの説明として、適切なものはどれか。
買付け価格と期間を公表し、不特定多数の株主から株式を買い集めること
株式の所有を通じて、他企業を支配又はコントロールすること
企業が自ら発行した株式を市場の時価で買い入れること
企業の経営陣が自社株の買取を実施し、企業の所有権を取得すること
解答
解説 TOB(Take Over Bid:株式公開買付け)とは、株式の取得を望む者が不特定多数の株主から買い集めることをいいます。

問18 業務要件の定義に関する記述として、適切なものはどれか。
システム開発を実施するに当たって、開発に必要な体制、資源を定義する。
システム戦略に基づいてシステムの全体像を定義する。
求められるシステムを構成するソフトウェアの動作や処理内容を定義する。
利用者のニーズを考慮して、システム化対象業務の業務手順や関連する組織における責任、権限などを定義する。
解答
解説 要求定義は、システム開発の最も最初に行われるプロセスです。このプロセスでは、成果物(この場合は業務内容)に求められる条件や機能を定義します。選択肢アは、計画プロセス。選択肢イは、企画プロセス。選択肢ウは、開発プロセスの説明です。

問19 企業の経営状況を外部に公開することを何というか。
株式公開
企業格付け
コンプライアンス
ディスクロージャ
解答
解説 選択肢の用語を以下にまとめます。

選択肢ア:株式公開は、証券取引所で株式を売買できるようにすることです。上場という場合もあります。
選択肢イ:企業格付けは、企業にランクをつけることです。
選択肢ウ:コンプライアンスとは、法令順守のことで、法律や条約を守った経営をすることです。
選択肢エ:ディスクロージャとは、情報公開と訳され自社の経営状態を外部に公開することです。

問20 消費財メーカにおけるBSC(バランススコアカード)で、顧客の視点に関する業績評価指標として、最も適切なものはどれか。
開発効率
キャッシュフロー
市場占有率
特許取得件数
解答
解説 バランススコアカードは、以下の4つの視点で分析を行います。

財務の視点:株主や従業員などの利害関係者の期待にこたえるため、企業業績として財務的に成功するためにどのように行動すべきかの指標を設定する。
顧客の視点:企業のビジョンを達成するために、顧客に対してどのように行動すべきかの指標を設定する。
内部プロセスの視点:財務的目標の達成や顧客満足度を向上させるために、優れた業務プロセスを構築するための指標を設定する。
成長と学習の視点:企業のビジョンを達成するために組織や個人として、どのように変化(改善)し能力向上を図るかの指標を設定する。

選択肢アは、内部プロセスに相当します。
選択肢イは、財務の視点に相当します。
選択肢ウは、顧客の視点に相当します。
選択肢エは、成長と学習の視点に相当します。