平成24年度 春期 ITパスポート試験 問1−20 解答編




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ITパスポート

(エントリ試験)

解答と解説のページです。

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問1 販売価格10万円の製品1,000個を製造し、販売する予定である。A案とB案に関する記述のうち、適切なものはどれか。

画像(問1)を表示できません
A案、B案ともに利益は出ない。
A案とB案の利益は等しい。
A案の方が利益は多い。
B案の方が利益は多い。
解答
解説 用語を整理してから計算します。

固定費:売上に関係なくかかる費用(例:人経費)
変動費:売上に比例してかかる費用(例:材料費)
利益(企業の儲け):利益 = 売上高 − 費用 = 売上高 − (変動費 + 固定費)

それでは、それぞれの案について売上を考えていきます。
A案の利益 = 10万×1,000 −(3万×1,000+1,000万)=10,000万 − 4,000万=6,000万
B案の利益 = 10万×1,000 −(2万×1,000+2,000万)=10,000万 − 4,000万=6,000万

よって、二つの案の利益は同じになるといえます。

問2 グループウェアで提供されている情報共有機能を活用したサービスとして、最も適切なものはどれか。
スケジュール管理
セキュリティ管理
ネットワーク管理
ユーザ管理
解答
解説 グループウェアとは、複数人で情報を共有しながら利用されるシステムのことです。ここでは、グループに参加しているそれぞれのメンバのスケジュール管理が相当するといえます。他にもファイルの共有やプロジェクトの進捗管理、会議室の予約などを行ったりもします。

問3 製品開発のライフサイクルにおいて、技術開発や製品の機能設計、ハードウェア設計、試作、製造準備といった作業工程のうち、同時にできる作業は並行して進め、手戻りや待ちをなくして製品開発期間を短縮する手法はどれか。
インダストリアルエンジニアリング
コンカレントエンジニアリング
バリューエンジニアリング
リバースエンジニアリング
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

インダストリアルエンジニアリング:組織が資源や資金を有効に利用するためにはどのようなことが有用かを研究する学問分野です。
コンカレントエンジニアリング:工程を並列的に行うことで納期を短縮する手法です。(コンカレントとは並行という意味です。)
バリューエンジニアリング:価値=機能/コストという考え方のもとに、コストあたりの価値を最大にする手法です。
リバースエンジニアリング:現在動いているプログラムから、その設計書などを作成する手法をいいます。市場の製品をリバースエンジニアリングをすることは、一般的には禁止されていることが多いです。

問4 不正アクセス行為の禁止等に関する法律で禁止されている行為はどれか。
OSなどに存在するセキュリティ上の弱点を電気通信回線を通じて攻撃してコンピュータを不正利用する行為
営業秘密や営業上のノウハウの盗用などの不正行為
他人を誹謗中傷する内容をホームページや掲示板などへ掲載する行為
本人に対して個人情報の利用目的を隠し、不正な手段で取得する行為
解答
解説 不正アクセス禁止法では『ネットワークを通じて、アクセス制限がかかっているデータに不正な方法でアクセスすることや、パスワードなどを第三者に漏えいさせること』を禁止しています。曲解すれば、ネットワークを使わない場合や、アクセス制限がかかっていないデータへのアクセスは、違法行為とはいえないといえます。

選択肢イは、不正競争防止法に抵触すると考えられます。
選択肢ウは、刑法に抵触すると考えられます。
選択肢エは、個人情報保護法に抵触すると考えられます。

問5 次の損益計算資料を基に算出した損益分岐点の売上高は何百万円か。

画像(問5)を表示できません
1,200
1,231
1,600
2,154
解答
解説 各用語がどんな意味をもち、どうやって算出されるのかを下にまとめておきます。

固定費:売上に関係なくかかる費用(例:人経費)
変動費:売上に比例してかかる費用(例:材料費)
変動費率:売上高に対する変動費の割合 これは変動費/売上高で算出されます。(変動費=変動費率×売上高)

利益:企業の儲け 利益 = 売上高 − 費用 = 売上高 − (変動費 + 固定費)= 売上高 − (売上高 × 変動費率) − 固定費

固定費を移行して、売上高を括弧でくくると
利益 + 固定費 = 売上高(1 − 変動費率)

(1 - 変動費率)で両辺を割ると
(利益 + 固定費)/(1 − 変動費率)= 売上高 ・・・ @

損益分岐点とは損と売上が0つまり、これを上回ると黒字、下回ると赤字という分岐点のことです。
@の式で利益が0なので、損益分岐点 = 固定費/(1− 変動費率)で求めることができます。

これを図でまとめると以下のようになります。
損益分岐点を表示できません

この問題では、変動費は変動製造費と変動販売費の合計となるので、1400+600=2000となります。
変動費率は、2000÷4000=0.5となり、 損益分岐点 = 800/(1− 0.5)= 800/0.5 = 1600となります。


問6 プロセス間で受け渡されるデータの流れの視点から、業務やシステムを分析するために用いられるモデリング手法はどれか。
BPR
DFD
MRP
WBS
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

BPR(Business Process Reengineering):企業改革のために、ビジネスルールなどを抜本的に見直し、業務フローなどを再構築する考え方。
DFD(Data Flow Diagram):データの源泉・吸収・処理・蓄積などの関係を、データフロー、プロセス、ファイル、外部の4つの記号によって表現する。
MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画):適切な場所で適切な量(過剰や不足を防ぐ)の在庫を確保するために、発注点や発注量を計算し計画すること。Materialとは資材・物質、Requirementsは必要物、要求という意味です。
WBS(Work Breakdown Strucuture:作業分割構成):仕事を分割して、作業のしやすい量にして管理することです。この分割の最下位の仕事の単位をワークパッケージといいます。

問7 CRMの目的として、適切なものはどれか。
長期的視点から顧客と良好な関係を築いて、収益の拡大を図ること
調達から製造、物流、販売までの複数企業にわたる一連のプロセスを改善し、納期、コストの最適化を図ること
部署別に個別管理されている情報を統合し、一元管理することによって、経営資源の有効活用を図ること
部品表と在庫情報を基に、製品を製造するために必要な資材を、いつ、どれだけ購入すべきかを決定すること
解答
解説 CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)は、企業内のすべての顧客チャネルで情報を共有し、サービスのレベルを引き上げて顧客満足度を高め、顧客ロイヤルティの最適化に結び付ける考え方です。

選択肢イは、SCM(Supply Chain Manegement)の説明です。
選択肢ウは、ERP(Enterprise Resource Planning)の説明です。
選択肢エは、MRP(Materials Requirements Planning)の説明です。

問8 システム開発における業務要件を定義する目的として、適切なものはどれか。
企業の営業資源を有効に活用し、統合的に管理すること
業務フロー、組織、システムを抜本的に見直し、再構築すること
経営目標を達成するためにIT化の方針と実施計画を作成すること
システム化の範囲と機能を具体化し、利害関係者間で合意すること
解答
解説 要件定義とは、システム開発の一番最初に行われる工程で、作成するシステムにはどんな機能や性能が必要かを洗い出し、決める作業をいいます。

問9 X社の要員をA社に在住させ、A社のプロジェクトリーダの指示の下でヘルプデスク業務を行っている。このときA社がX社と取り交わす契約書として適切なものはどれか。
請負契約書
雇用契約書
売買契約書
労働派遣契約書
解答
解説 まず、派遣・請負契約の形態を以下にまとめます。

派遣・請負契約を表示できません

問題では、X社の要員をA社に在住させ、A社の指示に従っているので、移動先と指揮・命令関係があることが分かります。よって、派遣契約が正しいといえます。

問10 情報戦略に基づいて、開発の対象業務、費用、スケジュール、体制、投資効果などを明確化する業務はどれか。
運用業務
開発業務
企画業務
保守業務
解答
解説 それぞれの業務を以下にまとめます。

運用業務:開発したシステムを利用し、管理する業務です。
開発業務:要求のあったシステムを実際に開発する業務です。
企画業務:開発業務で開発を行うシステムの具体的な内容を明確化する業務です。
保守業務:運用業務と連携して、システムに正常に動作し続けるようにメンテナンスする業務です。


問11 著作者に断ることなく、コピーや改変を自由に行うことのできる無料のソフトウェアはどれか。
シェアウェア
パッケージソフトウェア
パブリックドメインソフトウェア
ユーティリティソフトウェア
解答
解説 それぞれのソフトウェアを以下にまとめます。

シェアウェア:使用期間や使用機能に制限を持たせたソフトウェアです。完全版を利用する場合には有償になるソフトウェアです。
パッケージソフトウェア:汎用的に利用できる機能をまとめて作成されたソフトウェアをです。
パブリックドメインソフトウェア:著作権が放棄され、利用に制限のないソフトウェア(あるいはプログラム)です。
ユーティリティソフトウェア:本来のシステムを補助したり、有効に利用するために使われるソフトウェアです。

なお、よく勘違いされますがオープンソースソフトウェア(自由に改変、再配布できるソフトウェア)は著作権は放棄されていません。

問12 顧客に対する販売手法のうち、クロスセリングの事例として、適切なものはどれか。
エコノミークラスのチケットを求めている顧客にビジネスクラスの利用を薦める。
車の点検に来た顧客に新しいタイプの車への乗換えを薦める。
コンパクトカメラを求めている顧客に一眼レフカメラの購入を薦める。
スキー版を購入した顧客にスキーウェアの購入を薦める。
解答
解説 販売手法であるクロスセリングとアップセリングについて以下にまとめます。

クロスセリング:顧客が利用している商品/サービスの関連の商品/サービスの販売促進を行う。
アップセリング:顧客が利用している商品/サービスより高品質、価値の高い商品/サービスの販売促進を行う。

選択肢ア、イ、ウはアップセリングの説明です。

問13 住民基本台帳ネットワークシステム構築の目的として挙げられるものはどれか。
国民の納税情報を管理する。
住民サービスの向上と行政業務の効率向上を図る。
住民の個人情報を保護する。
民間への住民情報の公開を促進する。
解答
解説 住民基本台帳ネットワークシステム(よく住基ネットと略されます)は、行政機関が個々に管理する国民の情報を共有化しするために構築されたネットワークで、総務省によって管理されています。これにより、行政サービスの効率化や統一化、品質の向上を図ることを目的としています。様々な手続が簡素化される一方で、リスクの集中になるという指摘もあります。

問14 営業者又は取締役会による企業の経営を、株主などの利害関係者が監督・監視する仕組みはどれか。
TOB
コーポレートガバナンス
コンプライアンス
リスクマネジメント
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

TOB(Take Over Bid:株式公開買付け):特定の株式を期間、株数、価格を告知し、不特定多数の株主から株式を買い集めることをいいます。
コーポレートガバナンス:経営者の権力行使を牽制し、健全な経営を行うことができる仕組みを作り、維持することです。
コンプライアンス:個人情報保護やセキュリティなどに関する法令やガイドライン、社内規定などを遵守し、ITガバナンスを確立し、維持していく仕組みを構築することです。
リスクマネジメント:自社のシステムにおいて、起こり得るシステム故障などのトラブルを想定して、その社会的影響などを最小限に食い止める対策を策定することです。

問15 A工場では、製品Xを生産している。今週金曜日に受注した大口注文に対応するために、翌週できるだけ多く生産することにした。次の条件で生産するとき、翌週金曜日の終業時に出荷可能となる製品Xは何台か。ここで、各日の部品在庫数、製品Xの製造台数及び出荷可能台数は表のとおりである。

[条件]
・製品Xの生産台数は、1日に最大12台である。
・今週金曜日に製品Xの60台分の部品を発注し、発注した部品は、翌週金曜日の始業時に納品される。
・他の注文に対する出荷は無いものとする。
・製造上の不良品は発生しない。

画像(問15)を表示できません
57
60
72
75
解答
解説 1日ごとに追いかけていきます。

まず、今週の金曜日に材料が55台分あり、10台分製造し、出荷可能台数は15台となっています。

月曜日:在庫が45台分あるので、最大数12台製造します。出荷可能台数は15+12=27となり、翌日の在庫は45−12=33となります。
火曜日:在庫が33台分あるので、最大数12台製造します。出荷可能台数は27+12=39となり、翌日の在庫は33−12=21となります。
水曜日:在庫が21台分あるので、最大数12台製造します。出荷可能台数は39+12=51となり、翌日の在庫は21−12=9となります。
木曜日:在庫が9台分しかないので、9台製造します。出荷可能台数は51+9=60となり、翌日の在庫は0となります。
金曜日:発注した部品は、翌週金曜日の始業時に納品されるにより、在庫数が0+60=60となります。
金曜日:在庫が60台分あるので、最大数12台製造します。出荷可能台数は60+12=72となり、翌日の在庫は60−12=48となります。

よって、金曜日終業時点での出荷可能台数は72台といえます。

問16 著作権法の保護の対象となるものはどれか。
通信規約
パソコン本体の色や形状
パソコンの取扱説明書
プログラム言語
解答
解説 著作権法では以下のように定められています。

第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
<中略>
九 プログラムの著作物

2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。

つまり、プログラムは著作物であるが、プログラム言語、プロトコル、アルゴリズムやフローチャートは保護の対象外であると定められています。

パソコン本体の色や形状は意匠権で保護されます。(意匠権は、新規の美術・工芸・工業製品などで、その形・色・模様・配置などについて加える装飾上の工夫を、独占的・排他的に使用できる権利です。)

よって、選択肢ア、エは著作権の保護範囲外、選択肢イは著作権ではなく意匠権で保護されるということになるので、選択肢ウが正解となります。

問17 企業戦略におけるアライアンスの効果として適切なものはどれか。
異文化をもった相手企業が合併や吸収によって加わることで、混乱や摩擦が生じることがあるが、有形・無形の経営資源を得ることができる。
外部の専門業者にその企業にとって中核でない業務を委託することによって、企業本来の業務に人員をシフトすることができる。
技術提携、生産や販売の委託、合併会社の設立などによって、複数の企業が互いの独自性を維持しながら連携を強化することができる。
グループ企業の株式を保有することによって、本社機能に特化した会社形態として経営を行うことができる。
解答
解説 アライアンスとは、企業提携のことであり、共同で事業を行っていくことをいいます。

選択肢アは、M&A(Mergers and Acquisitions):株式などによる企業の合併・買収の説明です。
選択肢イは、アウトソーシング(外部委託)の説明です。
選択肢エは、持株会社(ホールディングカンパニー)の特徴の説明です。

問18 規模が小さい企業、単一事業の企業、市場の変化が少なく安定した顧客を持つ企業などに最適な組織構造はどれか。
カンパニ制組織
職能別組織
プロジェクト組織
マトリックス組織
解答
解説 それぞれの組織構造を以下にまとめます。

カンパニ制組織:事業ごとに、あたかも小さな仮想的な会社のように扱う組織形態です。
職能別組織は、専門化を志向した組織であり、研究開発、製造、販売、人事・総務、経理・財務のような職能別に構成された組織形態です。
プロジェクト組織:特定の目的を達成するためのプロジェクトごとに人選を行い、柔軟かつ比較的一時的な組織形態です。
マトリックス組織:1人が複数の上司や部署に所属するものです。マトリックスとは行列の意味です。

問19 経営戦略策定の過程で、今後力を入れるべき事業、撤退すべき事業の分析に用いる手法として適切なものはどれか。
BPR
BSC
CSF
PPM
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

BPR(Business Process Reengineering):企業改革のために、ビジネスルールなどを抜本的に見直し、業務フローなどを再構築する考え方です。
BSC(Balanced Score Card:バランス・スコアカード):戦略を財務の視点・顧客の視点・ビジネスプロセスの視点・学習と成長の視点の4つに分類し、業績評価を行うシステムです。
CSF(Critical Success Factors:重要成功要因):目標達成に大きな影響を与える要因のことです。
PPM(Product Portfolio Management):市場における自社の客観的な立場を把握し、資源配分などを決めるために用いられます。例を下に図示します。

プロダクトポートフォリオマネジメントを表示できません

各象限の状態を解説しておきます。
問題児(導入期):マーケティングへの参入を考える
花形(成長期):今後に期待ができるが、まだ資金の投入が必要
金のなる木(成熟期):利益が安定し、収入が期待できる
負け犬(衰退期):マーケティングからの撤退を考える

マーケティングの流れは、問題児 → 花形 → 金のなる木 → 負け犬となります。

問20 A社は、自社の通常の業務に利用するためにソフトウェアを購入し、資産計上した。このソフトウェアの減価償却方法として、最も適切なものはどれか。
A社が毎年任意で選択した減価償却方法を用いて滅却する。
初年度に購入金額の半額を定額法で償却し、2年目以降に残りの半額を定率法を用いて償却する。
定額法を用いて償却する。
定率法を用いて償却する。
解答
解説 まず原価償却とは、長年にわたって使用する固定資産を利用した期間をによって計上することをいいます。原価償却の方法には、定額法と定率法という2種類があります。この2つを以下にまとめます。

定額法:毎年同じ額を計上する。例1000万円を10年なら、毎年100万円となります。(ただし、厳密には残存価額というのがあるのでこの通りではありません)
定率法:毎年同じ率を計上する。例1000万円で60%なら、1年目は600万円。2年目は400×0.6=240万円。(だんだんと額が下がっていきます)

ソフトウェアは無形固定資産というものに属し、定額法で償却することが法人税法等で定められています。