平成25年度 秋期 ITパスポート試験 問1−20 解答編




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ITパスポート

(エントリ試験)

解答と解説のページです。

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問1 A社では、新たなシステムの開発を予定している。そのシステムの著作権をA社に帰属させるために必要なことだけを全て挙げたものはどれか。ここで、著作権に関する特段の契約や取決めはない。

@ A社は開発の全てを委託する。
A A社は開発を委託した会社と機密保持契約を締結する。
B A社の社員と派遣社員によって開発する。
@、A
@、B
A、B
B
解答
解説 著作権は特段の取決めない場合、作った会社に権利があり担当者がだれであろうと会社に帰属します。よって、A社に著作権を帰属させるためには、A社の社員や派遣社員によって開発を行う必要があります。なお開発元に著作権がないとプログラムの修正が開発元側で行えないので、プログラムの著作権を委譲するように開発契約に含める場合もあります。

問2 証券業を営むA社は、システムベンダのB社に株式注文システム構築プロジェクトを委託している。当該プロジェクトの運用テストにおいて、A社が定めている“株式注文時の責任者承認における例外ルール”をB社が把握できていなかったことに起因する不良を発見した。ルールを明らかにするのはどの段階で行うべきであったか。
業務要件の定義
システムテスト要件の定義
システム要件の定義
ソフトウェア要件の定義
解答
解説 まず、それぞれの要件を以下にまとめます。

業務要件の定義:(システム開発を行う前に)今行われている業務を整理しシステム開発によって行うべき業務を定義する作業です。
システムテスト要件の定義:システム開発を行った際に行うテスト項目・テスト観点を定義する作業です。
システム要件の定義:業務要件を受けて、システムが満たすべき要件を定義します。
ソフトウェア要件の定義:システム要件を受けて、より小さい単位(ソフトウェア単位)で満たすべき要件を定義します。

問3 ROE(Return On Equity)を説明したものはどれか。
株主だけでなく、債権者も含めた資金提供者の立場から、企業が所有している資産全体の収益性を表す指標
株主の立場から、企業が、どれだけ資本コストを上回る利益を生み出したかを表す指標
現在の株価が、前期実績又は今期予想の1株当たり利益の何倍かを表す指標
自己資本に対して、どれだけの利益を生み出したかを表す指標
解答
解説 投資の指標について以下にまとめます。

ROE(Return On Equity:自己資本利益率)=利益/ 自己資本でもとめられ、資本に対してどれだけ利益を上げられたか、高いほどよい
ROA(Return On Assets:総資産利益率)= 利益 / 総資産でもとめられ、高いほど資金を有効に利用していることになる
ROI(Return On Investment:投下資本利益率)=利益/{(期首総資本+期末総資本)÷2}で求められ、投資額に対してどれだけ経常利益を生み出しているか、高いほどよい
総資本回転率:売上/総資本でもとめられ、少ない元手でどれだけ売り上げを出しているかをあらわし、高いほどよい
売上総利益率:売上総利益 / 売上高でもとめられ、収益性の高さをあらわし、高いほどよい
棚卸資本回転率: 売上原価 / 棚卸資産額でもとめられ、在庫の入庫から販売までの指標であり、高いほどよい
流動比率:流動資産 / 流動負債でもとめられ、基本的に1年以内に資金化して支払いできる能力の指標であり、高いほどよい、200%以上がよいとされている。
自己資本比率:自己資本 / 総資産でもとめられ、総資産の自己資本比率をあらわし、高いほどよい
株価収益率(Price Earnings Ratio:PER):時価総額÷純利益で求められ、時価総額が純利益の何倍まで買われているかを表す指標

他の選択肢は以下のようになります。
選択肢イ:ROA
選択肢ウ:ROI
選択肢エ:PER

問4 個人情報に該当しないものはどれか。
50音別電話帳に記載されている氏名、住所、電話番号
自社の従業員の氏名、住所が記載された住所録
社員コードだけで構成され、他の情報と容易に照合できない社員リスト
防犯カメラに記録された、個人が識別できる映像
解答
解説 個人情報とは、個人情報保護法第二条において「個人情報は生存する個人に関する識別可能情報」と定義されていますので、個人を特定(=識別)できないものは個人情報に該当しないといえます。選択肢ウのように情報を統計的に分析したり、抽象化したりしたものは個人を特定することはできなくなるので、個人情報ではなくなります。

問5 SCMの導入効果として、最も適切なものはどれか。
売掛金に対する顧客の支払状況を迅速に把握できる。
顧客に対するアプローチ方法を営業部門全体で共有できる。
顧客の要求に合わせてタイムリーに商品を供給できる。
個々の商品への顧客のニーズに対する理解を深めることができる。
解答
解説 サプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain Management:供給連鎖管理)とは、物流システムを全社規模で一元管理し、最適化することで納期の短縮やコストの低下を目的とする管理方法です。

他の選択肢は以下の導入効果になります。
選択肢ア:販売管理システムの導入効果
選択肢イ:SFA(営業支援システム:Sales Force Automation)の導入効果
選択肢エ:CRM(顧客関係管理:Customer Relationship Management)の導入効果

問6 当期純利益を求める計算式はどれか。
(売上総利益)−(販売費及び一般管理費)
(売上高)−(売上原価)
(営業利益)+(営業外利益)−(営業外費用)
(経常利益)+(特別利益)−(特別損失)−(法人税、住民税及び事業税)
解答
解説 代表的な利益の計算方法について以下にまとめます。

売上総利益、粗利益:商品や製品そのものの儲け『売上高 − 売上原価』
営業利益、営業損益:原材料に、仕入れコストなどを考慮して出した利益『売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費』
経常利益、経常損益:活動で得られる利益。企業の採算性の指標となる『売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費 + 営業外損益』
純利益:経常利益に特別損失と税金などを差し引いて残る利益『売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費 + 営業外損益 + 特別損益』

他の選択肢は以下のようになります。
選択肢ア:営業利益
選択肢イ:売上総利益
選択肢ウ:経常利益

問7 企業が作成する計算書類などを監査する者はどれか。
会計監査人
システム監査人
司法書士
税理士
解答
解説 まず、計算書類とは会社の利益を算出し確定するために作成される書類のことをいいます。利益などの監査は会計監査人が担当します。

他の選択肢の立場の人は以下のようなもの作業を行います。
システム監査人:システムの効率性・有効性・セキュリティなどを監査します。
司法書士:不動産や公的な書類の作成を行います。
税理士:税務処理の手続きや書類の作成を行う。

問8 技術を理解している者が企業経営について学び、技術革新をビジネスに結び付けようとする考え方はどれか。
JIT
MOT
OJT
TQM
解答
解説 選択肢の用語を以下にまとめます。
JIT(Just In Time):工程の状況に合わせて、必要なものを必要な分だけ必要になったら調達する方式
MOT(Management Of Technology:技術経営)技術開発のイノベーション(革新)を促進させることで経済的価値を見出していく経営戦略
OJT(On the Job Training):現場で実際に業務を行いながら行う研修
TQM(Total Quality Management)特定の組織・部門だけではなく、全社レベルを横断的に統一された目標の下に行う品質管理を経営戦略に応用する考え方

問9 インターネットを利用した広告において、あらかじめ受信者からの同意を得て、受信者の興味がある分野についての広告をメールで送るものはどれか。
アフィリエイト広告
オーバーレイ広告
オプトアウトメール広告
オプトインメール広告
解答
解説 それぞれの選択肢の広告を以下にまとめます。

アフィリエイト広告:Webサイトの管理者が自分のサイトに広告を表示し、閲覧者がそのサービスの利用をすることで、管理者に報酬が支払われるという広告の形態
オーバレイ広告:ウェブページのコンテンツの上に表示される(場合によってはスクロールしても表示され続ける)広告の形態
オプトアウトメール広告:ユーザに拒否されるまで商品の宣伝を行う手法(=オプトアウト)のメールを利用する形態
オプトインメール広告:あらかじめ承諾を得たユーザに対して、商品の宣伝を行う手法(=オプトイン)のメールを利用する形態

問10 サービス指向アーキテクチャ(SOA)における“サービス”を構成する要素として、適切なものはどれか。
顧客からの問合せや要求、クレームに対するコールセンタの位置の単位
顧客の要望に合わせてシステムインテグレータが提供するソリューションの単位
利用者側から見たビジネスプロセス上で意味をもつ独立した機能の単位
利用部門からの要求に対する情報システム部門での開発や変更などの単位
解答
解説 SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)とは、製品からの視点ではなく、ビジネスプロセス上の独立した業務機能(=サービス)という視点で部品化し情報システムを構築していく考え方をいいます。


問11 経営理念に関する記述のうち、最も適切なものはどれか。
1〜2年ごとに見直し、修正するものである。
企業の使命や存在意義を表したものである。
経営計画や経営方針を具体化したものである。
社是、社訓などに明文化されていないものである。
解答
解説 経営理念とは「その会社が何のために存在し、何を行うことを目的としているのか」という不変的な意思を表したものです。経営方針や営業戦略などはこの経営理念に則り策定されます。原則として不変なので、修正が行われるものでありません。また明文化して経営層から一般社員までが理念の認識を共有します。

問12 ある資材を三つの工場A,B,Cに配分して、製品を生産している。資材の配分個数に応じた工場の利益は表のとおりである。合計4個の資材を工場に配分することによって得られる最大の利益は、何百万円か。
10
11
解答
解説 本来は、全ての組合せを検証する必要がありますが、Bの利益を見ると全ての項目においてBはA及びCよりも小さいことが分かります。よってBを使うことはなくAとCだけで組合せを考えればよいことが分かります。

(A,C)=(0,4)=0+8
(A,C)=(1,3)=2+6=8
(A,C)=(2,2)=5+4=9
(A,C)=(3,1)=7+3=10
(A,C)=(4,0)=8

よって、Aに3個、Cに1個割り当てると10百万円で利益を最大にすることができます。

問13 親会社が、子会社を含めた企業集団の一会計期間の収益と費用の状態を示した連結財務諸表はどれか。
連結株主資本等変動計算書
連結キャッシュフロー計算書
連結損益計算書
連結貸借対照表
解答
解説 まず、親会社(一般的に子会社の株式の過半数以上を保有する会社)が子会社を含めて計算される財務諸表には、「連結」という言葉を付けて「連結XXX(財務諸表名)」という表現をします。一方子会社をもっていても親会社1社だけで計算される財務諸表を明示的に表す場合は「XXX(財務諸表名)」あるいは「単独XXX(財務諸表名)」といいます。

各選択肢の用語は以下のようになります。「連結」を除いて解説します。
株主資本等変動計算書:連結貸借対照表の純資産の変動を表す財務諸表
キャッシュフロー計算書(C/F)は、収入と支出の資金についてを記載したもので、営業活動、投資活動、財務活動の3つからなります。
損益計算書(P/L)は、企業のある一定期間における収益と費用の詳しい状態を表したものです。
貸借対照表(B/S)は、企業のある一定時点における資産、負債、純資産の状態を表すものです。

問14 ビジネス戦略上の重要成功要因として“販売の機会損失の低減”が設定されたとき、この重要成功要因の達成度を評価するのに最も適切な指標はどれか。
売上債権回転期間
売上高利益率
欠品率
新規顧客獲得数
解答
解説 機会損失とは、販売側が売りたい状態で購入側が買いたい状態にも関わらず品物がないなどの理由で販売できる機会を失ってしまうことをいいます。すなわち機会損失の低減としては欠品率の低下が重要な要因になるといえます。

問15 クラスの学生の8科目の成績をそれぞれ5段階で評価した。クラスの平均点と学生の成績の比較や、科目間の成績のバランスを評価するために用いるグラフとして、最も適切なものはどれか。
円グラフ
散布図
パレート図
レーダチャート
解答
解説 それぞれの選択肢のグラフの特徴を以下にまとめます。

円グラフ:円を扇形に分割し構成比率を示した図
散布図:二次元データの値を縦軸と横軸の座標値としてプロットした図
パレート図:分類項目別に分けたデータを件数の多い順に並べた棒グラフで示し、重ねて総件数に対する比率の累積和を折れ線でグラフで示した図
レーダーチャート:放射状に伸びた数値軸上の値を線で結んだ多角形の図

問16 a〜dの機器のうち、組み込みシステムが実装されているものを全て挙げたものはどれか。

a 飲料自動販売機
b カーナビゲーション装置
c 携帯型ゲーム機
d 携帯電話機
a,b
a,b,c,d
a,c,d
b,c
解答
解説 組み込みシステムあるいはエンベデッドシステムとは目的の機械や家電製品などに組み込まれ、組み込まれたシステムのハードウェアの制御など、機器に特化した機能の提供を行うシステムを言います。選択肢の例であれば、全て特定の特化した機器の目的のために利用されるため、すべて組み込みシステムの例と言えます。

問17 提案依頼書の説明として適切なものはどれか。
依頼元の企業にシステム化の要望を提示するよう依頼することを目的として、発注先のベンダが作成する。
開発内容を正確かつ具体化することを目的として、依頼元の企業と発注先のベンダが共同で作成する。
発注先の候補となるベンダに具体的なシステム提案を行うよう要求することを目的として、依頼元の企業が作成する。
広く情報を収集しノウハウや知識を蓄積することを目的として、依頼元の企業が作成する。
解答
解説 提案依頼書はRFP(Request for Information)ともよばれ、発注先のベンダを選定するときなどに作成されるものです。

関連する3つのRFI、RFP、RFQを順に解説します。
RFI:(Request for Information)情報提供依頼書
RFP:(Request For Proposal)提案依頼書
RFQ:(Request For Quotation)見積依頼書

まず、RFIを発注元が作成し業者に情報提供を依頼し、それをもとに業者を選定します。その後選定した業者に、具体的な内容を求めるRFP作成し業者に提示します。最後に価格などを求めるRFQを作成し依頼します。

選択肢エがRFIに相当します。

問18 SWOT分析で用いる四つの視点である“脅威”になり得る事例はどれか。
家電メーカA社:技術力の低下によって、新製品開発件数が減少している。
自動車販売会社B社:営業員のモチベーションが以前に比べて下降気味である。
ブランドショップC社:ブランド好感度が下がってきている。
輸出企業D社:為替レートが円高基調で推移している。
解答
解説 SWOT分析とは、目的達成の環境を4つに分けて分析するものです。下に概要を示します。

まず、内部要因と外部要因に分けられます。

内部要因
強み(Strengths) :目標達成に貢献する個人や組織の要因
弱み(Weaknesses):目標達成に障害となる個人や組織の要因

外部要因
機会 (Opportunities):目標達成に貢献する外部の要因
脅威 (Threats) :目標達成に障害となる外部の要因

選択肢ア、イ、ウはいずれも「弱み」い分類されます。

問19 システムのライフサイクルプロセスを企画プロセス、要件定義プロセス、開発プロセス、運用プロセス、保守プロセスに分けたとき、企画プロセスの完了時の状態として適切なものはどれか。
経営目標を達成するために必要なシステム化の範囲、システム構成及び基本的なアーキテクチャが決定されている。
システムに対する要件及び制約事項が決定されている。
システム要件に照らして最適化されたソフトウェアの要件が決定されている。
対象システムを含む業務や運用のための組織に関する要件が決定されている。
解答
解説 共通フレーム2007は、システム開発に関連する作業をプロセス、アクティビティ、タスク、リスト」の4つの階層で構成され。プロセスは、主ライフサイクル・プロセス、組織に関するライフサイクル・プロセス、支援ライフサイクル・プロセス、システム監査の視点、共通フレームの修正から構成されています。

企画プロセスは、主ライフサイクル・プロセスに位置します。その中でも業務要件定義は実現すべき要件の定義を行うため、プロセスは様々なプロセスに先立って行われます。

選択肢イ:要件定義プロセスの完了状態です。
選択肢ウ:開発プロセスの完了状態です。
選択肢エ:要件定義プロセスの完了状態です。

問20 ITを企業の経営戦略の実現に役立てていくために、情報戦略の立案にあたって留意すべきこととして、最も適切なものはどれか。
経営戦略の立案はトップマネジメントが狙い、他方、情報戦略の立案は情報システム部門が担当するものであり、これらは独立して進めていくこと
情報化に当たっては、現行業務の業務担当や業務フローを調査した上で、現行業務のプロセスそのものを、ITを活用して自動化することを目指していくこと
情報化に当たっては、情報システムのあるべき姿を明確にし、情報システムの目的や機能が経営戦略に適合しているかなどを検討すること
情報戦略の立案段階においてシステムの費用として初期コストを評価し、システム運用や保守に関する費用は、運用が開始する時点で改めて評価すること
解答
解説 各選択肢を順に見ていきます。
選択肢ア:経営戦略と情報戦略は密に連動する必要があり、どちらもトップマネジメントが担います。
選択肢イ:現行業務の課題解決をITで解決するために情報戦略を立案します。必ずしも自動化だけが目的ではありません。
選択肢ウ:情報化に当たって、理想とするあるべき姿を明確にし、それを達成するためのシステムが経営戦略と適合しているかを検討します。(正解)
選択肢エ:システム運用や保守に関する費用も立案段階で試算し費用対効果や採算性を評価します。