平成17年度 春期 ソフトウェア開発技術者試験 問41−60 解答編




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(ソフトウェア開発技術者試験)

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問41 図において、“営業状況を報告してください”という同じメッセージで、営業課長と営業担当者は異なるサービスを行っている。オブジェクト指向で、このような特性を表す用語はどれか。

画像(問41)を表示できません


・営業部長が、営業課長と営業担当者へ“営業状況を報告してください”というメッセージを送る。
・営業課長が、課全体の売上目標、売上実績を応答として返す。
・営業担当者が、自分個人の売上目標、売上実績、担当顧客状況を応答として返す。
カプセル化
継承
抽象化
ポリモーフィズム
解答
解説 いずれもオブジェクト指向に関する用語です。以下にまとめます。

インヘリタンス:継承ともいう。親のクラスの属性やメソッド(動作)を子のクラスへ引き継がせること
カプセル化:データ隠ぺいともいう。メソッドとデータを一体化することで、内部をブラックボックス化すること
抽象化:共通の性質やメソッドをもったクラスをまとめること。また、実態のないメソッド(抽象メソッド)をもつクラスを抽象クラスといいます。
ポリモーフィズム:多態性ともいう。同じメソッドに対して異なる応答をすること。例えば鳴けというメソッドで犬クラスは『ワンワン』と鳴き、猫クラスは『ニャーニャー』と鳴くというような性質です。

問42 モジュールの独立性を高めるには、モジュール結合度を弱くする必要がある。モジュール間の情報の受渡し方法のうち、モジュール結合度が最も弱いものはどれか。
共通域に定義したデータを、関係するモジュールが参照する。
制御パラメタを引数として渡し、モジュールの実行順序を制御する。
データ項目だけをモジュール間の引数として渡す。
必要なデータだけを外部宣言して共有する。
解答
解説 モジュール強度とモジュール間結合度をまとめると下のようになります。

モジュールを表示できません

問43 次のテストケース設計法を何と呼ぶか。

読み込んだデータが正しくないとき、エラーメッセージを出力するかどうかをテストしたい。プログラム仕様書を基に、正しくないデータのクラスを識別し、その中から任意の一つを代表として選んでテストケースとした。

原因結果グラフ
限界値分析
同値分割
分岐網羅
解答
解説 正しくないデータから代表としてテストケースを選ぶという記述から、同値分割法によるテストケース設計だと分かります。有効なクラスと無効なクラスから代表値を選びテストケースとします。限界値分析は、有効と無効の境界になっている値をテストケースにする手法です。両方ともブラックボックステストの手法です。

原因結果グラフは、複雑な因果関係があるプログラムのテスト法で、原因と結果を決定木などにすることで、ソフトウェアの品質を確かめます。分岐網羅は、ホワイトボックステストの一種で、分岐命令をすべて調べ、正しく動作しているかを調べます。

問44 図のように、プロジェクトを大枠から詳細なレベルまでの具体的な作業に分割したものを何というか。

画像(問44)を表示できません
DFD
DOA
PERT
WBS
解答
解説 WBS(Work Breakdown Strucuture:作業分割構成)とは仕事を分割して、作業のしやすい量にすることです。この分割の最下位の仕事の単位をワークパッケージといい、これをそれぞれの人員に割り当てることで、OBS(organization breakdown structure:組織分割構成)を作成することができます。

ほかの選択肢についてまとめます。
DFD(Data Flow Diagram):データの源泉・吸収・処理・蓄積などの関係を表現します。
DOA(Data Oriented Approach):データ中心アプローチとも呼び、データ構造や流れに注目して分析を行う手法
PERT(Program Evaluation and Review Technique):アローダイアグラムとも呼び、プロジェクト上の最短経路や求めたりするのに利用されます。

問45 あるプロジェクトの作業が図に従って計画されているとき、最短日数で終了するために結合点5を通過していなければならないのは、プロジェクトの開始から遅くとも何日後か。

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解答
解説 まず、このプロジェクトのクリティカルパスを求めます。ダミー作業は同期のための線で、作業日数0日の実線と考えます。

A(8日)→D(18日)→G(30日)となります。
30日に間に合うように5に到達するためには、I(4日)とH(5日)を足して30日になるようにすればいいので、30−9で21日となります。

問46 システム化計画が策定されたが、一部の機能を取り入れるか否かが決定されていない。このシステムの開発を受託する場合、プロジェクトマネージャとして、望ましい選択はどれか。
受託先の担当者のニュアンスを確認して、開発が決定している機能で見積もり、請負契約で受託する。
機能が未確定であるので、システムインテグレーション契約で受託する。
機能確定を進めるため、委任契約でその支援業務を委託し、支援業務によって確定した機能に基づいてシステム開発業務を請負契約で受託する。
リスクを勘案し、見積もられた開発工数を2倍した金額によって請負契約で受託する。
解答
解説 間違いの選択肢の誤り部分を指摘していきます。

選択肢ア:決定していない部分を無視しているので、好ましくありません。
選択肢イ:システムインテグレーションとは、企画、構築、運用を一手に引き受けるもので、未確定部分があるとリスクが多くなります。
選択肢エ:2倍という根拠がないので、好ましくありません。

問47 −R管理図を用いて品質管理を行うときの“7の法則(the Rule of Seven)”を説明したものはどれか。
7回連続で平均値を上回ったか下回った場合に対応する。
下限値を連続して7回上回った場合に対応する。
上限値か下限値を通算で7回超えた場合に対応する。
平均値を通算で7回上回った場合に対応する。
解答
解説 −R管理図とは、平均と上方管理限界、下方管理限界を定め、品質を管理するものです。基本的に限界内に収まっていれば問題ないのですが、7回連続で平均値を上回ったあるいは下回った状態が続いた場合は、性質に偏りが生じたと判断し、異常であると判断するべきというものです。

下限値や上限値を超えた場合は、1回で異常と判断します。

問48 RAIDにおいて、信頼性向上ではなく、性能向上だけを目的としたものはどれか。
RAID0
RAID1
RAID3
RAID5
解答
解説 RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks あるいはRedundant Arrays of Independent Disks)とは、複数のHDDを1台の高信頼性のHDDとして利用する技術のことです。RAID1〜6は冗長ビットをどこに配置するかで決まります。代表的なRAIDの例を下に示します。

RAID0(ストライピング):複数のHDDに分散してデータを書き込む(冗長性はない)
RAID1(ミラーリング):複数のHDDに同じデータを書き込む
RAID2:ビット単位での専用誤り訂正符号ドライブをもつ
RAID3:ビット/バイト単位での専用パリティドライブをもつ
RAID4:ブロック単位での専用パリティドライブをもつ
RAID5:ブロック単位で冗長データをもつが、特定のドライブに冗長データを書き込むということはしない
RAID6:ブロック単位・複数パリティを分散して書き込む

また、複数の技術を組み合わせた、RAID1+0、RAID0+1、RAID5+0、RAID0+5、RAID5+1、RAID1+5などもあります。

問49 データの追加・変更・削除が少ないながら、一定の頻度で行われるデータベースがある。このデータベースのバックアップを磁気テープに搾取するに当たって、バックアップ作業の間隔を今までの2倍にした。このとき、データベースの運用に関する記述として、適切なものはどれか。
ジャーナル情報からの復旧処理時間が平均して約2倍になる。
データベースの容量が約2倍になる。
バックアップ1回あたりの磁気テープ本数が約半分になる。
バックアップ採取の平均実行時間が約2倍になる。
解答
解説 バックアップの間隔が2倍になったので、復旧作業には平均2倍となります。間違いの選択肢の誤り部分を指摘していきます。

選択肢イ:データベースの容量は変化しません。
選択肢ウ:バックアップの容量はほとんど変化しません。
選択肢エ:バックアップの時間もほとんど変化しません。

問50 東京本社と各支店間を直接接続している通信ネットワークに、回線多重化装置(図中の●印)を導入し、通信ネットワークのコストダウンを図った。このときの月額経済効果は何万円か。ここで、新旧ネットワークの各支店間の月額回線費用(万円)は図に示すとおりである。また、回線多重装置は1台300万円の装置を月額料率2%のリース契約で2台導入することにし、モデムなどの通信装置の金額は無視する。

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解答
解説 まず、旧ネットワークのコストを計算します。旧ネットワークでは26+30+30=86万円かかっています。
次に、現ネットワークでは、37+15+9=61万円の回線費用料と300万円×0.02=6万円が2台分のリース料金が発生していますので、86−(61+6×2)=86−73=13万円の経済効果(コストダウン)になるといえます。

問51 図は、組織内のTCP/IPネットワークにあるクライアントが、プロキシサーバ、ルータ、インターネットを経由して組織外のWebサーバを利用するときの経路を示している。この通信のTCPコネクションが設定される場所はどれか。

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クライアントとWebサーバの間、クライアントとプロキシサーバの間
クライアントとプロキシサーバの間、プロキシサーバとWebサーバの間
クライアントとプロキシサーバの間、プロキシサーバとルータの間、ルータとWebサーバの間
クライアントとルータの間、ルータとWebサーバの間
解答
解説 プロキシサーバは、内部のネットワークから外部へアクセスするときに、代理してアクセスを行うシステムやサーバ。セキュリティの向上に加え、キャッシュ機能を利用することで、アクセスの高速化にも役立ちます。。逆に外部から内部へのアクセスを中継するものをリバースプロキシといいます。。

クライアントとWebサーバでコネクションを張る場合は、間にプロキシサーバが入るので、クライアントとプロキシサーバ間。プロキシサーバとWebサーバ間の2つのコネクションに分かれます。

問52 TCP、UDPのポート番号を識別し、プライベートアドレスとグローバルアドレスとの対応関係を管理することによって、プライベートアドレスを使用するLANの複数の端末が、一つのグローバルアドレスを共有してインターネットにアクセスする仕組みはどれか。
IPスプーフィング
IPマスカレード
IPマルチキャスト
NTP3
解答
解説 4つの用語を以下にまとめます。

IPスプーフィング:IPアドレスを偽装して不正アクセスや攻撃をする行為。
IPマルチキャスト:特定のIPのグループなどに一斉送信すること。
IPマスカレード:NAPTとも呼ばれる機能で、プライベートIPとグローバルIPを変換します。
NTP3:ネットワーク上で同期をとるためのプロトコルです。

問53 TCP/IPを利用している環境で、電子メールに画像データを添付するための規格はどれか。
JPEG
MIME
MPEG
SMTP
解答
解説 MIME(Multipurpose Internet Mail Extensions)とは、本来アスキーコードしか電子メールで様々なフォーマットを取り扱えるようにしたものです。また、これにセキュリティ機能を追加したS/MIMEという規格もあります。

JPEGは、静止画の国際標準で、高圧縮率の割りに劣化が目立ちにくいという性質があります。
MPRGは、動画の規格で、MPEG−1,2,4,7などがあります。
SMTPは、メールクライアントからメールサーバ、メールサーバ間でメールを転送するプロトコルです。

問54 図は、あるデータ通信システムの端末、モデム、アナログ回線の接続を示している。端末とモデム間のモデム制御信号の規定など、物理層のインタフェースを規定している規格はどれか。

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IEEE488
IEEE802.3
V.24
X.25
解答
解説 それぞれの規格を以下にまとめます。

IEEE488は、GPIBとして知られ、主に計測機器と接続するために用いられるインタフェース規格です。
IEEE802.3は、イーサネット(データリンク層)の規格です。
V.24は、物理層の規格で、端末装置と回線終端装置間の相互接続について定められています。
X.25は、物理層からネットワーク層の規格で、端末装置と回線終端装置間のパケット通信を行うための規格です。

問55 OSI基本参照モデルにおけるネットワーク層の説明として、適切なものはどれか。
エンドシステム間のデータ転送を実現するために、ルーティングや中継などを行う。
各層のうち、最も利用者に近い部分であり、ファイル転送や電子メールなどの機能が実現されている。
物理的な通信媒体の特性の差を吸収し、上位の層に透過的な伝送路を提供する。
隣接ノード間の伝送制御手順(誤り検出、再送制御など)を提供する。
解答
解説 OSI基本参照モデルを以下にまとめます。

OSI基本参照モデルを表示できません

選択肢イは、アプリケーション層の説明です。
選択肢ウは、物理層の説明です。
選択肢エは、データリンク層の説明です。

問56 パケット交換方式とATM交換方式におけるパケットサイズ、及び交換制御パラメタの適切な組合せはどれか。
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解答
解説 パケット交換方式とATM交換方式を以下にまとめます。

パケット交換方式:データを幾つかのブロックに分割(可変長)し、各ブロックに制御情報を付加して送信する方式。
LCNは一つの論理チャネルで、これをまとめたグループがLCGNになります。

ATM交換方式:転送するデータをセルと呼ばれる単位(固定長)に区切り、それぞれにあて先を付け、高速に交換する方式。
仮想チャネル(ルーティングされる最小単位)を区別するための識別番号。セル・ヘッダに格納された制御情報の一つ。

問57 10Mビット/秒のLANを使用し、1件のレコード長が1,000バイトの電文を1,000件連続して伝送するとき、伝送時間は何秒か。ここで、LANの伝送効率は40%とする。
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解答
解説 まず、伝送路は10Mビット/×0.4=4Mbpsの伝送ができます。次に、伝送するデータは、1000バイト×1000件=1Mバイト=8Mビット

よって、8Mビット/4Mbps=2秒となります。

問58 CSMA/CD方式のLANに接続されたノードの送信動作に関する記述として、適切なものはどれか。
各ノードに論理的な順位付けを行い、送信件を順次受け渡し、これを受け取ったノードだけが送信を行う。
各ノードは伝送媒体が使用中かどうかを調べ、使用中でなければ送信を行う。衝突を検出したらランダムな時間経過後に再度送信を行う。
各ノードを環状に接続して、送信権を制御するための特殊なフレームを巡回させ、これを受け取ったノードだけが送信を行う。
タイムスロットを割り当てられたノードだけが送信を行う。
解答
解説 CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection):搬送波感知多重アクセス/衝突検出方式のことで、LANの制御方式の一種です。これは、まずネットワークを監視し、データが流れていなことを確認します。その後送信をしますが、ここで衝突をする可能性があります。その場合は、複数の送信者がランダムな時間待機し、再送信を行います。

選択肢アはトークンバス、選択肢ウはトークンパッシングの説明です。送信権のことをトークンといいます。
選択肢エは、TDMA(Time Division Multiple Access:時分割多元接続)の説明です。タイムスロットとは、データを送るための時間間隔のことをいいます。

問59 図で示したネットワーク構成において、アプリケーションサーバA上のDBMSのデーモンが異常終了したという事象とその理由を、監視用サーバXで検知するのに有効な手段はどれか。

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アプリケーションサーバAから監視用サーバXへのICMPあて先到達不能(Destination Unreachable)メッセージ
アプリケーションサーバAから監視用サーバXへのSNMP Trap PDU
監視用サーバXからアプリケーションサーバAへのfinger
監視用サーバXからアプリケーションサーバAへのping
解答
解説 まず、デーモンとは、バックグラウンドで特定の条件や接続を待っているプロセスをいいます。

デーモンの異常検出のようなものは、イベント処理を利用します。SNMP(Simple Network Management Protocol)には、特定のイベントが発生した際に、エージェント(監視対象)からマネージャー(監視サーバ)に通知を行うトラップという機能があります。

選択肢アのICMPや選択肢エのpingはネットワークの接続などを調べるために用いられるもので、デーモンの異常終了の検知などはできません。選択肢ウのfingerはユーザ情報を得るためのもので、これもデーモンの異常終了の検知はできません。

問60 関係データベースの説明として、適切なものはどれか。
階層構造によって、データの関係を表現する。
関連するデータを、ポインタで結合する。
データとその操作手続きを併せもったデータ構造を扱う。
データの集合を幾つかの2次元の表によって表現する。
解答
解説 関係データベースは一般的には2次元の表で表されるもので、主キーや従属キーといったもので関連付けられ、各属性には数値や文字列などといったものが対応します。

選択肢アは、木構造などの説明です。
選択肢イは、リスト構造などの説明です。
選択肢ウは、オブジェクト指向の説明です。