オリジナル午前問題 問1−10 解答編




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オリジナル午前問題

解答と解説のページです。

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問1 キビバイトの説明として、適切なものはどれか。
バイトが2進数8桁を表すのに対して、キビバイトは2進数10桁を表す単位である。
103ではなく、210を明示的に表す単位である。
実際の固定的な値ではなく、概念的な極大数を表す2進数の単位である。
実際の固定的な値ではなく、概念的な極少数を表す2進数の単位である。
解答
解説 キビバイト(KiB)とはIECが定めた二進接頭辞です。1キビバイトと言われた場合は、1000バイトではなく、1024バイトとなります。キビバイト(210)、メビバイト(220)、ギビバイト(230)、テビバイト(240)となっていきます。
意図 情報処理技術者試験では、計算問題で、Kが1000か1024かを指定することがありますが、このような接頭辞が出る可能性もあるかと思い出題しました。

問2 クロスサイトリクエストフォージェリの説明として、適切なものはどれか。
Webサイトに利用者を誘導して、Webサイトの入力データ処理の欠陥を悪用し、利用者のブラウザで悪意のあるスクリプトを実行する。
サーバ内の想定外のファイル名を直接入力することによって、本来は許されないファイルを不正に閲覧する。
セッションIDによってセッションが管理されるとき、ログイン中の利用者のセッションIDを不正に取得し、その利用者に成りすましてアクセスする。
攻撃者の用意したページにアクセスしたときに、HTTPリクエストを送信させられ、掲示板に意図しない書き込みなどをさせられる攻撃である。
解答
解説 クロスサイトフォージェリとは、HTTPリクエストを悪用した攻撃です。2005年4月にmixiで『ぼくはまちちゃん! こんにちはこんにちは!!』という文章が書きこまれることで注目されました。

具体的な例が、ウィキペディアに載っていたのできちんと理解しておくといいでしょう。
wikipedia クロスサイトフォージェリ

選択肢アは、クロスサイトスクリプティングの説明です。
選択肢イは、ディレクトリトラバーサル攻撃の説明です。
選択肢ウは、セッションハイジャックの説明です。
意図 クロスサイトスクリプティングは、情報セキュリティアドミニストレータなどで何度か出題されていますが、クロスサイトフォージェリについては、一度も出題されていなかったので出題しました。

問3 DNSのオーソリティの説明として、適切なものはどれか。
DNSサーバの主系統のサーバをいう。
DNSサーバの副系統のサーバをいう。
特定のドメインのすべての情報をもつDNSサーバの特性をいう。
ネームサーバが管理する範囲をいう。
解答
解説 DNS(Domain Name System)はIPアドレスとホスト名を対応付ける(名前解決)を行うものです。このDNSは木構造で管理され、この階層構造の中で、管理内のすべての情報を持つDNSサーバが存在します。これをオーソリティ(権威)を持つといいます。

選択肢アは、プライマリDNSサーバの説明です。
選択肢イは、セカンダリDNSサーバの説明です。
選択肢エは、ゾーンの説明です。
意図 DNSの基本原理はたびたび出題されますが、オーソリティという言葉は一度も使用されていませんでした。ほかの解説書などにもなく、一般的でないかもしれませんが、現実的に使用されているため出題しました。

問4 P2Pの説明として、適切なものはどれか。
P2Pは違法ソフトであり、使用することは違法行為である。
インターネットを介して不特定多数のコンピュータの間でファイルを共有するソフトである。
基本的に端末同士が、対等な立場で通信を行う形態をいう。
サービスを提供するサーバとサービスを受け取るクライアントに分けられる。
解答
解説 まず、P2Pは(Peer to Peer)の略で、ソフトではなく、基本的にサーバを持たない対等な通信関係の形態をいいます。ですが、インデックス(ファイルの所在地)をどうやって管理するかが問題となり、インデックスサーバを持つハイブリット型、純粋に分散して保有するピュアP2P型、サーバ的な役割ができるノードが保有するスーパーノード型の3つが主にあります。

選択肢イは、ファイル共有ソフトの説明です。
選択肢エは、クライアント/サーバ型の説明です。
意図 P2P=ファイル共有ソフトという負のイメージが強いですが、あくまで両者が別物(P2Pの技術を利用したのがファイル共有ソフトである)であることを確認してもらうために、出題しました。

問5 チャタリングの説明として、適切なものはどれか。
スイッチが切り替わるときに、非常に短時間に信号が振幅する現象で、誤作動の原因となる。
電気回路の構成要素のうち、電池や計測機器などの微小な抵抗をいう。
本来は意図しない部分に電流が流れること。感電や火災などの原因となる。
電源を投入した時に一時的に流れる大電流のことをいう。
解答
解説 チャタリングとは、ボタンを押した際に、1、0がすっきり変わればいいのですが、現実的にはアナログなので、ノイズが混じります。これにより、ボタンを1回しか押していないのに、何度も入力されるような現象がおこります。一般的には、ボタンの劣化などによる電気回路が原因で、ソフトウェアで解消を行います。
意図 回路から現実的な問題であるチャタリングに関しては、一度も問題がでていなかったので、出題してみました。

問6 HDLの説明として、適切なものはどれか。
ブール的な演算を行う電気回路である。
出力を入力にフィードバックすることで、値を保持する電気回路である。
ディジタル回路をソフトウェアで設計するためのプログラミング言語である。
プログラムをオブジェクトやメッセージなどの概念で管理し、記述するプログラム言語である。
解答
解説 HDL(Hardware Description Language)とはハードウェア記述言語と訳されます。代表的なものに、VHDLやVerilogがあります。論理回路をプログラミング言語で記述し、テストやシミュレーションも行えます。通常のプログラミング言語との違いは、実際にコンパイルされると論理的な回路が合成される点や、逐次的ではなく、複数のプロセスが同時に行われる点などです。実際に検証が難しい大規模回路のシミュレーションを比較的簡単にできるので、さまざまなところで利用されています。

選択肢アは、論理回路の説明です。
選択肢イは、フリップフロップの説明です。
選択肢エは、オブジェクト指向プログラミング言語の説明です。
意図 基本情報・応用情報では毎年のようにオブジェクト指向の問題が出題されています。一方でHDLに関する問題は出題されていないので出題しました。

問7 p→qを『∨q』と定義する。p→qと同値なのはどれか。
q→p
→p
q→
解答
解説 命題論理学は1と0のディジタルを表すうえで重要な分野です。その中で最も重要な記号『→』(含意やならばと読みます)についてです。p→qはpが成立するならば、qも成立するという主張です。これが唯一成立しないのは、pが真でqが偽の場合です。

これを踏まえて、真理値表や、変換をしていくと、選択肢エとなります。

これは、p→qを証明するのが難しいならばを証明すればよいという背理法に相当します。

なお、p→qに対して、q→pを逆。を裏といいます。元の命題の逆の裏が対偶です。
(逆と裏は正しいは限りません。対偶はの真偽は元の命題と一致します。)
意図 背理法を実際にあてはめる例は1、2問出題されていましたが、命題のほうからの出題はなかったので1度出題しておこうと思いました。

問8 整数論において次の値のうち、11を法とすると合同なのはどれか。
11と13
11と21
11と22
11と111
解答
解説 aとbがnの倍数であるときaとbはnを法として合同であるといいます。これをa≡b(mod n)と書きます。これは、整数論(とくに暗号分野)において非常に重要であり、基本的な概念です。つまり、11と22は11を法とすると、どちらも0と合同となります。

11を法としたときの合同関係を下にまとめます。

0≡11≡22
1≡12≡23
2≡13≡24
3≡14≡25
4≡15≡26
5≡16≡27
6≡17≡28
7≡18≡29
8≡19≡30
9≡20≡31
10≡21≡32

これは、無限大の数字を11個のグループに分けることを意味しています。

ある意味で、偶数と奇数も2を法としたものだといえます。
意図 整数論はコンピュータの技術を支える重要な学問なので、その中から最も基本的なことを出題しました。

問9 フィボナッチ数列となっているのはどれか。
1,2,3,4,5
0,1,1,2,3
1,2,4,8,16
1,−1,1,−1,1
解答
解説 フィボナッチ数列とは、最初を0、次を1として、その次は、前の2つを足した値という規則で並んでいる数列をいいます。これは自然界で多く出現することがしられています。よって、0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89と続いていきます。

選択肢アは、公差1の等差数列です。
選択肢ウは、公比2の等比数列です。
選択肢エは、公比−1の等比数列です。

公差とは、2つの値の差のことで、公比とは、2つの値の比のことです。
意図 数学は、コンピュータのあらゆる原理の根底になっています。そこでその数学から基本的な用語を出題しました。

問10 つぎのうち、閉じている演算子はどれか。ただし、a,bは整数とする。
×
÷
解答
解説 集合や離散数学で用いられる演算子に関する問題です。閉じているとは、集合から取り出した二つの要素の演算結果が元の集合に入るかどうかという意味です。

具体的に言うと、
整数+整数=整数、整数−整数=整数、整数×整数=整数。
しかし、
整数/整数=整数とは限らない(3/5=0.6、0.6は整数でなく実数です。)

もうひとつ具体的な例をあげます。
a,bを自然数(0以上の整数)とすると、自然数−自然数=負数になる可能性があるので、自然数は−で閉じていないといえます。

ほかにも重要な概念をまとめておきます。△は任意の演算子です。
a△b=b△aが成立することを交換則を満たすといいます。(可換であるともいいます。)
a△(b△c)=(a△b)△cが成立することを結合則を満たすといいます。

例えば、−は可換ではありません。÷は結合則を満たしません。
意図 集合論もコンピュータの根底技術を支える数学の分野の一つです。しかし、あまりにも範囲が広く深い学問なので、ここでは基本的なことを出題しました。