平成24年度 秋期 ITパスポート試験 問21−40 解答編




このページは

ITパスポート

(エントリ試験)

解答と解説のページです。

問題だけで勉強したい方は目次へ戻ってください




問21 図によって表される企業の組織形態はどれか。

画像(問21)を表示できません
事業部制組織
職能別組織
プロジェクト組織
マトリックス組織
解答
解説 それぞれの組織形態を以下にまとめます。

事業部制組織は、製品や市場ごとに社内組織を分割し、利益責任単位として権限と目標が与えられるものです。
職能別組織は、専門化を志向した組織であり、研究開発、製造、販売、人事・総務、経理・財務のような職能別に構成された組織形態です。
プロジェクト組織:特定の目的を達成するためのプロジェクトごとに人選を行い、柔軟かつ比較的一時的な組織形態です。
マトリックス組織:1人が複数の上司や部署に所属するものです。マトリックスとは行列の意味です。

問22 システム化構想の立案時点でベンダ企業から収集する情報として、最も適切なものはどれか。
開発を進めるに当たっての開発元企業の役割分担
計画しているシステムの開発コストの見積り
システム化する分野における情報技術動向
ベンダ企業の技術者が保有している技術資格
解答
解説 システムを外部委託する場合には、まずRFI(Request for Information:情報提供依頼書)で業者に情報提供を依頼し、それをもとに業者を選定します。その後選定した業者に、具体的な内容を求めるRFP(Request For Proposal:提案依頼書)を依頼します。最後に価格などを決めるRFQ(Request For Quotation:見積依頼書)を依頼します。RFPとRFQは一緒になる場合もあります。

問23 A社はB社に対してハウジングサービスを提要している。A社とB社の役割分担として適切なものはどれか。
画像(問23ans)を表示できません
解答
解説 まず、各種クラウドの形態を以下に整理します。

ホスティングサービス、レンタルサーバー:、サーバ、サーバの設置場所共にレンタルするサービス
ハウジングサービス、コロケーションサービス:サーバは自前で用意し、サーバの設置場所をレンタルするサービス
SaaS(Software as a Service):必要な機能やサービスをインターネット経由で提供する形態
PaaS(Platform as a Service):ソフトウェアを稼動させるためのプラットフォームをインターネット経由で提供する形態
IaaS(Infrastructure as a Service):コンピュータ(仮想マシンを含む)やネットワークをそのものをインターネット経由で提供する形態

ハウジングサービスでは、サーバの設置場所(=機器の設置施設の所有)のみ提供元の会社(=A社)が行います。

選択肢イはホスティングサービスの役割分担といえます。

問24 ソフトウェアの開発を外部ベンダに委託する。委託契約における特段の取決めがない場合、このソフトウェアの知的財産としての権利の帰属を規定している法律はどれか。
下請法
著作権法
不正競争防止法
民法
解答
解説 ソフトウェアも一般の著作物と同じ扱いのなので、著作権法の規定に従います。なお著作権では、特段の取決めない場合、担当者がだれであろうと開発した会社に権利が帰属します。

問25 X社の販売部門における期末時点の売掛金の回収状況が表のとおりであるとき、回収期限を過ぎた売掛金に対する長期債権額の比率は何%か。ここで、入金遅延が61日以上のものを長期債権とする。

画像(問25)を表示できません
2.5
2.8
10
25
解答
解説 まず、入金遅延全体は以下のとおりとなります。
A販売部:5+5+10=20
B販売部:5+5+0=10
C販売部:20+10+0=30
D販売部:10+0+10=20
よって、全体で20+10+30+20=80百万円

次に、長期債権(入金遅延が61日以上のもの)は、以下のとおりとなります。
A販売部:10
B販売部:0
C販売部:0
D販売部:10
よって、全体で10+0+0+10=20百万円

つまり、20/80=0.25で25%となります。

問26 マーケティングミックスの4Pの一つであるプロモーションの戦略には、プッシュ戦略とプル戦略がある。メーカの販売促進策のうち、プル戦略に該当するものはどれか。
商品知識やセールストークに関する販売員教育の強化
販売員を店頭へ派遣する応援販売の実施
販売金額や販売量に応じて支払われる販売奨励金の増額
販売店への客の誘導を図る広告宣伝の投入
解答
解説 代表的な戦略を以下にまとめます。

プッシュ戦略:プッシュは押すという意味で、自社のメリットや魅力をアピールすることで消費者に強く商品を売り込む戦略です。
プル戦略:プルは引くという意味で、広告やCM、チラシなどで商品を宣伝し、顧客を商品に引き付けて購入してもらう戦略です。
選択肢ア、イ、ウはプッシュ戦略に相当します。

問27 流通システムや販売情報システムなどで用いられている商品コードはどれか。
ASCII
EUC
JAN
JIS
解答
解説 一般的にスーパーなどで見られる一次元のバーコードをJAN(Japanese Article Number)コードといいます。一番右のけたにチェックディジットを持ち、標準タイプと短縮タイプの2種類があります。コードには、国コード、メーカーコード、商品アイテムコード、チェックディジットが含まれています。

なお、選択肢ア、イ、エはいずれも文字コードの一種です。

問28 コンカレントエンジニアリングの目的として、適切なものはどれか。
開発期間の短縮
開発した技術の標準化
自社の技術的な強みを生かした製品開発
生産工程の歩留り率向上
解答
解説 コンカレントエンジニアリングとは、工程を並列的に行うことで納期を短縮する手法です。(コンカレントとは並行という意味です。)

問29 製造業A社では、翌月の製造量を次の計算式で算出している。

翌月の製造量=翌月の販売見込量 − 当月末在庫量 + 20

翌月の販売見込量が当月までの3か月の販売実績量の移動平均法によって算出されるとき、9月の製造量は幾らか。

画像(問29)を表示できません
90
92
95
100
解答
解説 問題文の内容を書き換えると以下のようになります。

翌月の製造量=翌月の販売見込量 − 当月末在庫量 + 20

9月の製造量=当月までの3か月の販売実績ー8月末の在庫量+20

当月までの3か月の販売実績は、移動平均法で算出されるとあります。移動平均法とは、直近の値を使い平均を求める計算方法です。
よって、(6月の販売実績量+7月の販売実績量+8月の販売実績量)/3で求めるという意味です。

なので、これらを式に代入すると9月の製造量=(100+90+95)/3−25+20=95−25+20=90となります。

問30 e−TAXなど行政への電子申請の際に、本人証明のために公的個人認証サービスを利用することができる。このサービスを利用する際に使用できるものはどれか。
印鑑登録カード
クレジットカード
住民基本台帳カード
パスポート
解答
解説 住民基本台帳ネットワークシステム(よく住基ネットと略されます)は、行政機関が個々に管理する国民の情報を共有化しするために構築されたネットワークで、総務省によって管理されています。これにより、行政サービスの効率化や統一化、品質の向上を図ることを目的としています。様々な手続が簡素化される一方で、リスクの集中になるという指摘もあります。


問31 プロジェクト成果物が期待される品質を満たしていることを確認するために行う作業はどれか。
プロジェクト成果物の作成に必要なツールの納入者の選定
プロジェクト成果物のレビューの実施
プロジェクト成果物を作成するスケジュールの作成及び進捗管理の実施
プロジェクト成果物を作成するためのそれぞれのメンバの役割と責任の定義
解答
解説 一般的にプロジェクトの成果物には、レビュー(設計書など)とテスト(プログラムなど)を実施します。その際にレビューでの指摘件数やテストのバグ件数などを品質指標とします。

選択肢ア、ウ、エはプロジェクトを適切に運用するために行う作業です。

問32 図のプロセスでシステム開発を進める場合、システム方式設計に含める作業として、適切なものはどれか。

画像(問32)を表示できません
システムの新機能及び処理能力の決定
ソフトウェアの最上位レベルの構造とソフトウェアコンポ―ネントの決定
ハードウェアやネットワークの構成の決定
利用者インタフェースの決定
解答
解説 選択肢を問題文のプロセスに当てはめると以下のようになります。

システム要件定義:選択肢ア
システム方式設計:選択肢ウ
ソフトウェア要件定義:選択肢エ
ソフトウェア方式設計:選択肢イ

ここでいうシステムとは開発する全体を指し、ソフトウェアはシステムを構成する機能を指すものと考えられます。

問33 ソフトウェア開発におけるシステムテストに関する記述のうち、適切なものはどれか。
開発側が開発の最終段階のテストとして実施し、システム要件を満たしているか確認する。
システム要件定義に過不足がないか確認する。
プログラムの単体テスト及び結合テストを同時に実施する。
利用者が開発者からは独立して実施し、完成したシステムの業務への適合性を確認する。
解答
解説 まず、システムテストの位置を下図のV字モデルで確認します。

V字工程を表示できません

システムテストは外部設計書に基づき、開発側が受け渡し前に行う最終的なテストで、システムの機能や性能が要件を満たしているかを確認します。

選択肢イ:要件定義のレビューの説明です。
選択肢ウ:原則として、単体テスト→結合テストの順にテストを実施します。
選択肢エ:運用テストの説明です。

問34 ITガバナンスを説明したものはどれか。
企業の社員個人の保有する知識を蓄積し、それを社内で共有することによって、社員のスキルや創造力を高めて企業競争力の強化を図る。
個々のIT投資の正当性の評価をするのではなく、経営戦略とIT戦略との整合性や投資効果、組織の在り方などの評価のフレームワークを適用する。
財務、顧客、内部業務プロセス、学習の四つの視点を用いて戦略に適合した個別の実施項目、数値目標などを設定してモニタリングすることで企業変革を推進する。
複数の企業で共通的に存在する業務を、企業から切り離して集中・統合して独立させ、それぞれの企業で共有してサービス提供をうけることで経営の効率化を目指す。
解答
解説 ITガバナンスは、コーポレートガバナンス(企業統治)から派生した概念で、ITへの投資・効果・リスクを継続的に最適化する組織的な枠組みをいいます。

実際の内容は様々な定義があり下にその例をまとめます。
経済産業省:企業が競争優位性の構築を目的としてIT戦略の策定及び実行をコントロールし、あるべき方向へと導く組織能力
日本監査役協会:リスクマネジメントとパフォーマンスマネジメントを実施するにあたっての健全性確保のためのコンプライアンスマネジメントの確立

選択肢アは、ナレッジマネジメントの説明です。
選択肢ウは、バランススコアカードの説明です。
選択肢エは、シェアードサービスの説明です。

問35 システム監査の目的として、適切なものはどれか。
開発されたシステムを、実際にシステムを使う利用者自身が、本番稼働してよいかどうかを判断するためにテストすること
システムを利用するための認証として、指紋、眼球の虹彩、声紋などの身体的特徴による本人認証を行うこと
組織体の情報システムに関わるリスク対策が適切に整備・運用されているかを、独立的な立場で検証すること
ネットワークを通じて外部からシステムに侵入し、無断でデータやプログラムを盗み見たり、改ざん・破壊などを行ったりすること
解答
解説 システム監査基準では、システム監査の目的を「システム監査の目的は、組織体の情報システムにまつわるリスクに対するコントロールがリスクアセスメントに基づいて適切に整備・運用されているかを、独立かつ専門的な立場のシステム監査人が検証又は評価することによって、保証を与えあるいは助言を行い、もってITガバナンスの実現に寄与することにある。」としています。

そして、監査の基本は、監査機関と被監査機関の独立と、専門的で中立的な立場からの客観的指摘です。また、証拠資料はかならずコピーなどを取り複数保管しておくのが基本です。また、企業の監査部門が行う内部監査と第三者機関に依頼する外部監査の二つがあります。また独立性にも外観上の独立(身分や立場が独立している)と精神上の独立(偏見や主観がまじらない)が必要です。

選択肢アは、運用テストの説明です。
選択肢イは、バイオメトリクス認証(生体認証)の説明です。
選択肢エは、不正アクセスの説明です。

問36 ITサービスマネジメントのプロセスにおいて、過去の履歴や構成情報などをデータベース化する目的a〜cのうち、適切なものだけを全て挙げたものはどれか。

a ITサービスに関連する構成要素の情報を常に正しく、最新の状態であるように維持管理し、必要な情報をいつでも確認できるようにする。
b 過去に対応したインシデントの記録をナレッジとして蓄積し、利用者からの問い合わせに対する一次回答率を高める。
c 過去に発生した障害の原因と対策を蓄積し、再発の防止に役立てる。
a,b,c
b,c
解答
解説 ITサービスマネジメントとは、顧客の要求に対して最適なサービスを実施するためのマネジメント活動の総称をいいます。それぞれの項目を確認していきます。

a:ITサービスに関する構成要素は、適切に構成管理・変更管理、履歴管理を行うことで、最新状態を維持し必要な情報を確認できるようにします。(正しい)
b:過去にあった同じ問合せに対して、素早く回答できるように、過去に起きたインシデント(サービスの中断や品質低下を招いた出来事)を記録しておくことは大切です。(正しい)
c:過去に発生した障害の原因と対策は、迅速に分析を行いナレッジとして蓄積することで、再発防止と類似案件に対して素早く水平展開できるようにします。(正しい)

よって、a,b,c全て正しいので、選択肢イが正解となります。

問37 利用者がベンダに委託したソフトウェア開発において、利用者側が実際の運用と同様の条件でソフトウェアを使用し、正常に稼働することを確認するテストとして、適切なものはどれか。
受入れテスト
結合テスト
システムテスト
単体テスト
解答
解説 まず、各テストの位置を下図のV字工程で確認します。

V字工程を表示できません

次に、各テストについてまとめると以下のようになります。
単体テスト:1つのモジュールが正しく動作するかを主にホワイボックステストで確認するテスト
結合テスト:複数のモジュールを結合し、正しく動作するかを主にブラックボックステストで確認するテスト
システムテスト:開発側が納品前に全体のシステムとして、正しく動作するかを機能面・性能面で確認するテスト
運用テスト(受入れテスト):発注側が要求通りの仕様になっており、サービス開始ができるかを確認するテスト

問38 システム開発プロセスを、要件定義、外部設計、内部設計の順番で実施するとき、内部設計で行う作業として、適切なものはどれか。
画面応答時間の目標値を定める。
システムをサブシステムに分割する。
データベースに格納するレコードの長さや属性を決定する。
入出力画面や帳票のレイアウトを設計する。
解答
解説 各プロセスの概要を以下にまとめます。

要件定義:顧客側が求めているシステムの目的、背景、機能、性能を整理し、定義します。
外部設計:システムを機能ごとのサブシステムに分割し、画面設計や画面遷移、DBやネットワーク構成を設計します。
内部設計:サブシステムを詳細化し、論理データの項目やDBの構造を設計します。
詳細設計:プログラミングが可能なレベルに落とし込むために、モジュール分割や共通関数を設計します。

選択肢アは、要件定義で行う作業です。
選択肢イ、エは、外部設計で行う作業です。

問39 SLAとSLMに関する説明のうち、適切なものはどれか。
SLAとはサービス提供者から提示されるサービス改善の提案書であり、SLMとはサービスレベルを維持するための技術的な手段を提供する活動である。
SLAとはサービス提供者とサービス利用者との間で取り決めたサービスレベルの合意書であり、SLMとはITサービスの品質を維持し、向上させるための活動である。
SLAにはサービスレベルの達成度合いを測定し、問題を発見する活動が規定され、SLMには問題解決のための技術的な手段が規定される。
SLAの狙いはサービスレベルのさらなる向上を図ることにあり、SLMの狙いはサービスの内容、要求水準などの共通認識を得ることにある。
解答
解説 SLAとSLMについて以下にまとめます。

SLA(Service Level Agreement)とは、サービス品質保証契約ともよばれ、継続したサービスに関する取り決めを行うものです。利用者と提供者が取り交わす契約事項であり、課金項目、問合せ受付時間、システム障害時の復旧時間などの項目が盛り込まれます。また、契約事項が実行されなかった場合の補償規定も盛り込まれることもあります。

SLM(Service Level Management)とは、サービス水準管理ともよばれ、SLAを遵守するために行う維持・管理の取り組みをいいます。

問40 コンピュータシステムが稼働しているサーバ室への侵入リスクを低減するために、コンピュータの設置場所を示す標識を出さないことにした。この対策が当てはまるマネジメントはどれか。
サプライチェーンマネジメント
ナレッジマネジメント
ビジネスコンティニュイティマネジメント
ファシリティマネジメント
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

サプライチェーンマネジメント(供給連鎖管理):物流システムを全社規模で一元管理し、最適化することで納期の短縮やコストの低下を目的とする。
ナレッジマネジメント:社員の経験や知識をデータベースなどの統合した資源としてまとめ、共有する。
ビジネスコンティニュイティマネジメント(事業継続管理):災害や不祥事などが発生した際に、事業が中断しない(あるいは早急に回復できる)ように管理すること。
ファシリティマネジメント:経営的視点から会社が所有する土地・建物・施設・設備・工場などを最適化し、コスト削減と効果の最大化を行うように管理すること。