平成21年度 春期 応用情報技術者試験 問61−80 解答編




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応用情報

(応用情報技術者試験)

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問61 共通フレーム2007によれば、企画プロセスにおけるシステム化構想の立案の前提となるものはどれか。
業務要件定義
経営事業目標
システム化計画
システム設計
解答
解説 共通フレーム2007は、システム開発に関連する作業をプロセス、アクティビティ、タスク、リスト」の4つの階層で構成され。プロセスは、主ライフサイクル・プロセス、組織に関するライフサイクル・プロセス、支援ライフサイクル・プロセス、システム監査の視点、共通フレームの修正から構成されています。

企画プロセスは、主ライフサイクル・プロセスに位置します。その中でも業務要件定義は実現すべき要件の定義を行うため、プロセスは様々なプロセスに先立って行われます。

問62 “システム管理基準”によれば、全体最適化計画策定の段階で、業務モデルを定義する目的はどれか。
企業の全体業務と使用される情報の関連を整理し、情報システムの全体像を明確化すること
システム化の範囲や開発規模を把握し、システム化に要する期間、開発工数、開発費用を見積もること
情報システムの構築のために必要なハードウェア、ソフトウェア、ネットワークなどの構成要素を洗い出すこと
情報システムを実際に運用するために必要なユーザマニュアルや運用マニュアルを作成するために、業務手順を確認すること
解答
解説 経済産業省が平成16年10月に策定したシステム管理基準には、目的を以下のように定義しています。
・情報システムが、組織体の経営方針及び戦略目標の実現に貢献するため
・情報システムが、組織体の目的を実現するように安全、有効かつ効率的に機能するため
・情報システムが、内部又は外部に報告する情報の信頼性を保つように機能するため
・情報システムが、関連法令、契約又は内部規程等に準拠するようにするため

システム管理基準は以下の6つで構成されています。
1 情報戦略
2 企画業務
3 開発業務
4 運用業務
5 保守業務
6 共通業務

そのなかで、情報戦略の中の全体最適化の目的以下のように定義されています。
(1)ITガバナンスの方針を明確にすること。
(2)情報化投資及び情報化構想の決定における原則を定めること。
(3)情報システム全体の最適化目標を経営戦略に基づいて設定すること。
(4)組織体全体の情報システムのあるべき姿を明確にすること。
(5)システム化によって生ずる組織及び業務の変更の方針を明確にすること。
(6)情報セキュリティ基本方針を明確にするこ

今回は、この目的を見る限り、業務モデルを定義するのは、情報システムのあるべき姿を明確にして全体像を明確にすることであるといえます。

問63 ある営業部員の1日の業務活動を分析した結果は、表のとおりである。営業支援システムの導入によって訪問準備時間が1件当たり0.1時間短縮できる。相業務時間と1件当たりの顧客訪問時間を変えずに、1日の顧客訪問件数を6件にするには、“その他業務時間”を何時間削減する必要があるか。

画像(問63)を表示できません
0.3
0.5
0.7
1.0
解答
解説 顧客訪問時間は、5件で5時間なので、1件当たり1時間なのが分かります。1件増えるので全体で1時間削減する必要があります。
現在は5件で1.5時間準備にかかっています。これを6件にすると、1.8時間かかることになります。
ここで、システムを導入すると1件当たり0.1時間短縮できるので、6件で0.6時間短縮できます。1.8時間から0.6時間を引くと1.2時間になり、当初から0,3時間早まることになります。
1時間削減したいので、0.3時間を短縮できたので、あと0.7時間その他の業務で捻出する必要があります。

問64 ERPパッケージを導入して、基幹業務システムを再構築する場合の留意点はどれか。
各業務システムを段階的に導入するのではなく、必要なすべての業務システムを同時に導入し稼動させることが重要である。
現場部門のユーザの意見を十分に尊重し、現行業務プロセスと合致するようにパッケージのカスタマイズを行うことが重要である。
最初に会計システムを導入し、その後でほかの業務システムを導入することが重要である。
パッケージが前提としている業務モデルに配慮して、会社全体の業務プロセスを再設計することが重要である。
解答
解説 ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)は、基幹業務のビジネスプロセスを見直して、経営資源全体をリアルタイムに把握し、その有効利用を図ることができる企業全体の資源を統括的に管理することで効率化を目的としたものです。これを実現する支援ソフトウェアをERPパッケージといいます。

また、導入には経営者を含めた慎重な判断と強い意志が必要です。また、さまざまなプロセスの準備(検証・標準化等)が必要となるため、専門の部門などにやらせるのが一般的です。

問65 共通フレーム2007によれば、要求定義プロセスで行うべき作業はどれか。
新しい業務のあり方や運用をまとめた上で、業務上実現すべき要件を定義する。
企業で将来的に必要となる最上位の業務機能と組織モデルを検討する。
システム化機能の整理とネットワーク構成などのシステム方式を策定する。
システムが提供する信頼性、性能、セキュリティなどのサービスレベルを定義する。
解答
解説 共通フレーム2007は、システム開発に関連する作業をプロセス、アクティビティ、タスク、リスト」の4つの階層で構成され。プロセスは、主ライフサイクル・プロセス、組織に関するライフサイクル・プロセス、支援ライフサイクル・プロセス、システム監査の視点、共通フレームの修正から構成されています。

要件定義プロセスでは、その名のとおり、業務上の実現すべき要件を定義します。

問66 提案依頼書を作成するために、必要な情報の提供を要求するものはどれか。
IFB
RFI
RFP
RFQ
解答
解説 RFI、RFP、RFQの3つを順に解説します。

RFI:(Request for Information)情報提供依頼書
RFP:(Request For Proposal)提案依頼書
RFQ:(Request For Quotation)見積依頼書

まず、RFIで業者に情報提供を依頼し、それをもとに業者を選定します。その後選定した業者に、具体的な内容を求めるRFPを依頼します。最後に価格などを決めるRFQを依頼します。RFPとRFQは一緒になる場合もあります。

問67 図に示すマトリックス表を用いたポートフォリオ類型によって、事業計画や競争優位の分析を行う目的はどれか。

画像(問67)を表示できません
目標として設定したプロモーション効果を測定するために、自らの置かれた立場を評価する。
目標を設定し、資源配分の優先順位を設定するための基礎として、自らの置かれた立場を評価する。
目標を設定し、製品の品質を高めることによって、市場での優先性を維持する方策を評価する。
目標を設定するために、季節変動要因や地域的な広がりを加味することによって、市場の変化を評価する。
解答
解説 プロダクトポートフォリオマネジメントの例を下に図示します。

プロダクトポートフォリオの図

各象限の状態を解説しておきます。
問題児(導入期):マーケティングへの参入を考える
花形(成長期):今後に期待ができるが、まだ資金の投入が必要
金のなる木(成熟期):利益が安定し、収入が期待できる
負け犬(衰退期):マーケティングからの撤退を考える

マーケティングの流れは、問題児 → 花形 → 金のなる木 → 負け犬となります。

これにより、市場における自社の立場を客観的に評価することができます。

問68 SWOT分析を説明したものはどれか。
企業の財務諸表を基に、収益性及び安全性を分析する手法である。
経営戦略を立てるために、自社の強みと弱み、機会と脅威を分析する手法である。
自社製品・サービスの市場での位置付けや評価を明らかにする手法である。
自社製品の価格設定のために、市場での競争力を分析する手法である。
解答
解説 SWOT分析とは、目的達成の環境を4つに分けて分析するものです。下に概要を示します。
まず、内部要因と外部要因に分けられます。

内部要因
強み(Strengths) :目標達成に貢献する個人や組織の要因
弱み(Weaknesses):目標達成に障害となる個人や組織の要因
外部要因
機会 (Opportunities):目標達成に貢献する外部の要因
脅威 (Threats) :目標達成に障害となる外部の要因

問69 サプライチェーンマネジメントを説明したものはどれか。
購買、生産、販売及び物流を結ぶ一連の業務を、企業間で全体最適の視点から見直し、納期短縮や在庫削減を図る。
個人がもっているノウハウや経験などの知的資産を共有して、創造的な仕事につなげていく。
社員のスキルや行動特性を管理し、人事戦略の視点から適切な人員配置・評価などを行う。
多様なチャネルを通して集められた顧客情報を一元化し、活用することで、顧客との関係を密接にしていく。
解答
解説 サプライチェーンマネージメント(SCM:供給連鎖管理)とは、物流システムを1つの部署内で完結させるのではなく、会社規模・全社規模で一元管理し、最適化することで、納期の短縮やコストの低下を目的とするものです。


問70 TLO(Technology Licensing Organization)法に基づき、承認又は認定された事業者の役割として、適切なものはどれか。
企業からの委託研究、又は共同研究を受け入れる窓口として、企業と大学との調整を行う。
研究者からの応募に基づき、補助金を支給して先進的な研究を発展させる。
大学の研究成果を特許化し、又は作業への技術移転を支援し、産学の仲介役を果たす。
民間企業が保有する休眠特許を発掘し、他企業にライセンスして活用を図る。
解答
解説 TLO:Technology Licensing Organization(技術移転機関)とは、大学の研究を特許化し、企業へ技術を転移させるものです。つまり産業と学問の中継を行う役割を担っています。

問71 ある期間の生産計画において、図の部品表で表される製品Aの需要量が10個であるとき、部品Dの正味所要量は何個か。ここで、ユニットBの在庫残が5個、部品Dの在庫残が25個あり、ほかの在庫残、仕掛残、注文残、引当残などはないとする。

画像(問71)を表示できません
80
90
95
105
解答
解説 まず、部品間の相関関係をまとめます。

Aを1つ作るのに、Bが4個、Cが1個必要
Bを1つ作るのに、Dが3個、Eが1個必要
Cを1つ作るのに、Dが1個、Fが2個必要

次に、必要なDの正味所要量(総所要量から引当可能在庫量を差し引いたもの)を求めます。 いま、Aが10個の需要があるので、Bが40個とDが10個必要とされています。Bの在庫残が5個あるので、Bの正味所要量は35個となります。
よって、Bを35個作るのに、Dが3×35個。Cを10個作るのに、Dが1×10個必要となります。
3×35+1×10=115個。Dの在庫残は25個あるので、115−25=90個がDの正味所要量となります。

問72 製造業のA社では、NC工作機械を用いて、四つの仕事a〜dを行っている。各仕事間の段取り時間は表のとおりである。合計の段取り時間が最小になるように仕事を行った場合の合計段取り時間は何時間か。ここで、仕事はどの順序で行ってもよいものとし、FROMからTOへの段取り時間で検討する。

画像(問72)を表示できません
解答
解説 すべての組合せを考えて、前のものより長いものを無効にするというのを繰り返してもよいのですが、小さい方から検証するのが効率的と言えるでしょう。
まず、選択肢アの4について行います。
1はa⇒c、b⇒c、b⇒aの3つです。dに行ったり戻ったりするのは2以上必要なので、abcを1づつで経由するためには、b⇒a⇒cで段取り可能です。
よって、b⇒a⇒c⇒dで4を実現できます。よって最短の4でできたので正解はアとなります。

問73 EDIを実施するための情報表現既約で規定されるべきものはどれか。
企業間の取引の契約内容
システムの運用時間
伝送制御手順
メッセージの形式
解答
解説 EDI(Electronic Data Interchange)は企業間商取引のことで、取決めには情報伝達規約、情報表現規約、業務運用規約、取引基本規約の4つの取決めがあります。
第1レベルの情報伝達規約では、ネットワークの種類や手順を決めます。
第2レベルの情報表現規約では、構文ルールなどのフォーマットを取り決めます。
第3レベルの業務運用規約では、業務の処理に関する取り決めを行います。
第4レベルの取引基本規約では、実際の契約を取り決めます。

これを選択肢にあわせると、下のようになります。
選択肢ア:取引基本規約
選択肢イ:業務運用規約
選択肢ウ:情報伝達規約
選択肢エ:情報表現既約

問74 組込みシステムの用途として、適切でないものはどれか。
FA機器又は医療機器を制御するシステム
音響・映像機器を制御するシステム
銀行のATM端末システム
列車の座席予約を管理するホストシステム
解答
解説 組込みシステムとは、機器に埋め込まれてその制御を行うもので、身近なところでは、冷蔵庫や、電子レンジ、車などの数多くのものに使われています。しかし、選択肢エのような大量のデータを高速に扱うこと(=高い演算能力)は向いていないため、使用されていません。

問75 企業活動におけるBCPを説明したものはどれか。
企業が事業活動を営む上で、社会に与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダからの要求に対し適切な説明責任を果たすための取組のこと
形式知だけでなく、暗黙知を含めた幅広い知識を共有して活用することで、新たな知識を創造しながら経営を実践する経営手法のこと
災害やシステム障害など予期せぬ事態が発生した場合でも、重要な業務の継続を可能とするために事前に策定される行動計画のこと
組織体の活動に伴い発生するあらゆるリスクを、統合的、包括的、戦略的に把握、評価、最適化し、価値の最大化を図る手法のこと
解答
解説 BCP(business continuity plan:事業継続計画)とは、災害や事故などによって業務が停止しないように、事前にまとめられた行動基準となる対策文章のことです。自社のプロセスが抱えるリスクを分析し作成されます。
また、BCM(business continuity management:事業継続管理)とは、BCPを発展させ、BCPの策定、導入、運用、見直しなどの継続的なマネジメントを言います。

選択肢アは企業の社会的責任・CSR・ステークホルダ経営等の説明です。
選択肢イはナレッジマネジメントの説明です。
選択肢エは全社的リスクマネジメント(ERM:Enterprise Risk Management)の説明です。

問76 ゲーム理論を使って検討するのに適している業務はどれか。
イベント会場の入場ゲート数の決定
売れ筋商品の要因の分析
競争者がいる地域での販売戦略の策定
新規開発商品の需要の予測
解答
解説 ゲーム理論とは、数学の分野で定式化された個人や集団が相互に影響を与えていくなかで、目的にどうやってたどり着くかの振る舞いを研究する分野です。
選択肢ア:待ち行列モデルを使うのが適しています。
選択肢イ:特性要因図を使うのが適しています。
選択肢エ:需要の予測は様々な要因があるため、さまざまな手法があります。

問77 表は、ある企業の損益計算書である。損益分岐点は何百万円か。

画像(問77)を表示できません
250
490
500
625
解答
解説 各用語がどんな意味をもち、どうやって算出されるのかを下にまとめておきます。

固定費:売上に関係なくかかる費用(例:人経費)
変動費:売上に比例してかかる費用(例:材料費)
変動費率:売上高に対する変動費の割合 これは変動費/売上高で算出されます。(変動費=変動費率×売上高)

利益:企業の儲け
利益 = 売上高 − 費用
= 売上高 − (変動費 + 固定費)
= 売上高 − (売上高 × 変動費率) − 固定費

固定費を移行して、売上高を括弧でくくると
利益 + 固定費 = 売上高(1 − 変動費率)

(1 - 変動費率)で両辺を割ると
(利益 + 固定費)/(1 − 変動費率)= 売上高 ・・・ @

損益分岐点とは損と売上が0つまり、これを上回ると黒字、下回ると赤字という分岐点のことです。
@の式で利益が0なので、損益分岐点 = 固定費/(1− 変動費率)で求めることができます。

今回の問題では、固定費の合計は200+300=500。変動費の合計は100+40=140。変動費率は140/700=0.2。
よって、500/0.8=625万円となります。

これを図でまとめると以下のようになります。
損益分岐点を表示できません

問78 不正競争防止法において、営業秘密となる要件は、“秘密として管理されていること”と“事業活動に有用な技術又は営業上の情報であること”ともう一つはどれか。
営業譲渡が可能なこと
期間が10年を超えないこと
公然と知られていないこと
特許出願をしていること
解答
解説 不正競争防止法では、『秘密として管理されている有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの』を営業秘密としています。これを保護することで、市場経済での公平的な競争が行われるようになります。

問79 請負契約の下で、自己の雇用する労働者を契約先の営業所などで働かせる場合、適切なものはどれか。
勤務時間、出退勤時刻などの労働条件は、契約先が調節する。
雇用主が自らの指揮命令の下に当該労働者を業務に従事させる。
当該労働者は、契約先で働く期間は、契約先との間にも雇用関係が生じる。
当該労働者は、契約先の指示によって配置変更が行える。
解答
解説 請負と派遣の違いの大きな違いの一つに雇用主が自ら指揮・命令する関係にあることがあります。下に相関関係を図示します。

派遣

問80 圧縮された情報を伸張しても、完全には元の情報を復元できない場合がある圧縮方式はどれか。
GIF
JPEG
MH
MR
解答
解説 圧縮された情報を完全に元に戻せる圧縮を可逆圧縮、圧縮された情報を完全に元に戻せない圧縮を非可逆圧縮といいます。可逆圧縮の代表例はGIFで、非可逆圧縮の代表はJPEGです。非可逆圧縮は元に戻せない分、圧縮率が高くなる傾向があります。MHやMRはFAX(ファクシミリ)などで使われる可逆圧縮の手法です。