平成21年度 春期 基本情報技術者試験 問61−80 解答編




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基本情報

(基本情報技術者試験)

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問61 エンタープライズアーキテクチャ(EA)を説明したものはどれか。
オブジェクト指向設計を支援する様々な手法を統一して標準化したもので、クラス図などのモデル図によってシステムの分析や設計を行うための技法である。
概念データモデルを、エンティティ、リレーションシップで表現することで、データ構造やデータ項目間の関係を明らかにするための技法である。
各業務と情報システムを、政策・業務体系、データ体系、適用処理体系、技術体系の四つの体系で分析し、全体最適化の視点から見直すための技法である。
企業のビジネスプロセスを、データフロー、プロセス、ファイル、データ源泉/データ吸収の四つの基本要素に抽象化して表現するための技法である。
解答
解説 エンタープライズ(企業・企画)アーキテクチャ(構築・構成)とは組織や業務を見直し、全体構造を把握・最適化することを指します。

選択肢アはUMLの説明です。
選択肢イはE−R図の説明です。
選択肢エはDFDの説明です。

問62 情報システムの全体計画立案時に策定される業務モデルはどれか。
基幹系の機能とそれに必要なデータ項目を定義する。
既存の情報システムとデータベースの関係を定義する。
組織の機能と帳票とを関連付ける。
ビジネスプロセスとデータクラスを関連付ける。
解答
解説 業務モデルは、ビジネスプロセス(実体)とデータクラス(抽象的な関係)を関連付けて作成します。実際のビジネスプロセスだけを定義するのではありません。

問63 図は、業務改善の進め方を六つのステップに分解したものである。A〜Dのそれぞれにはア〜エに示す活動のいずれかが対応する場合とした場合、Cに該当する活動はどれか。

画像(問63)を表示できません
改善案の策定
改善案の評価
改善目標の設定
問題の把握
解答
解説 一般的なPDCA(計画、行動、評価、改善)サイクルと照らし合わせると分かりやすいです。

改善目的の確認

問題の把握

改善目標の設定

改善案の策定

改善案の評価

実施と効果の確認

問64 定性的な評価項目を定量化する手法としてスコアリングモデルがある。4段評価のスコアリングモデルを用いると、表に示した項目から評価されるシステム全体の目標達成度は何%となるか。

画像(問64)を表示できません
27
36
43
52
解答
解説 まず、全体の達成値は(5+8+12)×3=25×3=75となります。現状は5×3+8×0+12×1=15+12=27。よって、27/75×100=36となります。

問65 共通フレーム2007によれば、システム化計画を立案するときに考慮すべき事項はどれか。
運用を考えて、できるだけ自社の社員で開発するよう検討を進める。
失敗を避けるため、同業他社を調査し、同じシステムにする。
情報化の構想、運用マニュアル及び障害対策を具体的に示す。
情報システムの有効性及び投資効果を明確にする。
解答
解説 共通フレームとは、発注側と受注側で誤解が生じないように、用語の統一や作業内容の標準化などを行うガイドラインのことです。これにより、そのシステム化計画の有効性や効率性が明確に示せるようになるといえます。

問66 共通フレーム2007によれば、企画プロセスの目的はどれか。
経営事業の目的、目標を達成するために必要なシステム化の方針及びシステムを実現するための実施計画を得る。
作業成果物及びプロセスが、定義された条件及び計画に従っていることを保証する。
発見されたすべての問題を、識別、分析、管理及び制御して、解決することを確実にする。
プロセスによって生成され記憶されたシステム又はソフトウェア情報を文書化し、保守する。
解答
解説 共通フレーム2007は、システム開発に関連する作業をプロセス、アクティビティ、タスク、リスト」の4つの階層で構成され。プロセスは、主ライフサイクル・プロセス、組織に関するライフサイクル・プロセス、支援ライフサイクル・プロセス、システム監査の視点、共通フレームの修正から構成されています。

企画プロセスは、主ライフサイクル・プロセスの中に位置します。また選択肢イは支援ライフサイクル内の品質保証プロセス。選択肢ウは支援ライフサイクル内の問題解決プロセス。選択肢エは主ライフサイクル・プロセス内の保守プロセスの説明です。

問67 契約タイプで一括請負契約に属するものはどれか。
請け負った作業の履行に対するコストが償還され、更にプロジェクトのコスト見積りに対して一定比率の固定フィーを受け取る。
請け負った作業の履行に対するコストが償還され、事前に取り決めたフィーと、契約で定めたパフォーマンス目標レベルの達成度に応じたインセンティブを受け取る。
契約で合意した内容を実現するために、実施された労務に対する対価が支払われる。
契約で合意した内容を実現するために、指定された期日までに決められた価格で作成された成果物に対して対価が支払われる
解答
解説 一括請負契約は、要件定義から、設計、プログラミング、テスト、受入の一連の業務を一社に一括して行われる請負契約で、合意時点で期日や価格が決まるので被請負側はある程度のリスクが生じるといえます。

問68 企業経営で用いられるベンチマーキングを説明したものはどれか。
企業全体の経営資源の配分を有効かつ総合的に計画して管理し、経営の効率向上を図ることである。
業務のプロセスを再設計し、情報技術を十分に活用して、企業の体質や構造を抜本的に変革することである。
最強の競合相手又は先進企業と比較して、製品、サービス及びオペレーションなどを定性的・定量的に把握することである。
利益をもたらすことのできる、他者より優越した自社独自のスキルや技術に経営資源を集中することである。
解答
解説 ベンチマーキングとは、他社のベストプラクティス(優れた事例)を参考にして、現状の業務プロセスを根本的に改善・改革することです。また、選択肢アはERP:Enterprise Resource Planning(企業資源計画)。選択肢イはBPR:Business Process Reengineering。選択肢エはコアコンピタンスの説明です。

問69 競争戦略において、ニッチ戦略の特徴はどれか。
市場での地位向上とトップシェア奪取を目標とした差別化戦略の展開を図る。
総市場規模を拡大することでシェアを維持しながら新規需要の獲得を図る。
他社が参入しにくい特定の市場に対して専門化し、高利益率を図る。
リーダの行動を観察し、迅速に模倣することで製品開発などのコスト削減を図る。
解答
解説 ニッチ戦略を含む幾つかの代表的な競争戦略について、下にまとめます。

ニッチ戦略:ニッチはくぼみという意味で、ニッチ戦略は別名焦点絞込戦略とも呼ばれます。これは、他社が入りにくい隙間のような市場に焦点を当てた戦略です。
プッシュ戦略:プッシュは押すという意味で、自社のメリットや魅力をアピールすることで消費者に強く商品を売り込む戦略です。
ブランド戦略:ブランドは銘柄、有名商品という意味で、自社の製品のイメージを高めロイヤリティを高める戦略です。
プル戦略:プルは引くという意味で、広告やCM、チラシなどで商品を宣伝し、顧客を商品に引き付けて購入してもらう戦略です。

問70 プロダクトライフサイクルにおける成長期の特徴はどれか。
市場が商品の価値を理解し始める。商品ラインもチャネルも拡大しなければならない。この時期は売上も伸びるが、投資も必要である。
需要が大きくなり、製品の差別化や市場の細分化が明確になってくる。競争者間の競争も激化し、新品種の追加やコストダウンが重要となる。
需要が減ってきて、撤退する企業も出てくる。この時期の強者になれるかどうかを判断し、代替市場への進出なども考える。
需要は部分的で、新規需要開拓が勝負である。特定のターゲットに対する信念に満ちた説得が必要である。
解答
解説 プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)に照らし合わせ、下の図を使って解説します。。

プロダクトポートフォリオの図

各象限の状態も解説します。
導入期(問題児):マーケティングへの参入を考える
成長期(花形):今後に期待ができるが、まだ資金の投入が必要
成熟期(金のなる木):利益が安定し、収入が期待できる
衰退期(負け犬):マーケティングからの撤退を考える

マーケティングの流れは、必然的に導入期 → 成長期 → 成熟期 → 衰退期となります。

今回の例では、選択肢エ → ア → イ → ウとなります。

問71 TLO(Technology Licensing Organization)法に基づき、承認又は限定された事業者の役割として、適切なものはどれか。
企業からの受託研究、又は共同研究を受け入れる窓口として、企業と大学との調整を行う。
研究者からの応募に基づき、補助金を支給して先進的な研究を発展させる。
大学の研究成果を特許化し、又は企業への技術移転を支援し、産学の仲介役を果たす。
民間企業が保有する休眠特許を発掘し、他企業にライセンスして活用を図る。
解答
解説 TLO:Technology Licensing Organization(技術移転機関)とは、大学の研究を特許化し、企業へ技術を転移させるものです。つまり産業と学問の中継を行う役割を担っています。

問72 ディジタルディバイドを説明したものはどれか。
PCや通信などを利用する能力や機会の違いによって、経済的、又は社会的な格差が生じること
インターネットなどを活用することによって、住民が直接、政府や自治体の政策に参加できること
国民のだれもが、地域の格差なく、妥当な料金で平等に利用できる通信及び放送サービスのこと
市民生活のイベント又は企業活動の分野ごとに、全てのサービスを1か所で提供すること
解答
解説 ディジタルディバイドとは、情報格差と訳され、主にインターネットによるICT技術を受けられない人との間に生まれる。情報的・経済的・社会的な格差のことを言います。

問73 デビットカードの決済方式はどれか。
後払い方式の決済を行う。
カード内で残高管理を行い、財布のように利用できる。
前払い方式の決済を行う。
利用金額を預金口座から即時に引き落とす。
解答
解説 各選択肢の代表的なカードの例を下に示します。

選択肢ア:クレジットカード
選択肢イ:ICカード(カードに入金することをチャージといいます)
選択肢ウ:プリペイドカード
選択肢エ:デビットカード(即時ではなく、数日以内の場合もあります)

問74 組込みシステムの用途として、適切でないものはどれか。
FA機器又は医療機器を制御するシステム
音響・映像機器を制御するシステム
銀行のATM端末システム
列車の座席予約を管理するホストシステム
解答
解説 組込みシステムとは、機器に埋め込まれてその制御を行うもので、身近なところでは、冷蔵庫や、電子レンジ、車などの数多くのものに使われています。しかし、選択肢エのような大量のデータを高速に扱うこと(=高い演算能力)は向いていないため、使用されていません。

問75 M&Aの利点はどれか。
機能別に分業を行うことで、専門化による知識と経験の蓄積ができ、規模の経済を得ることができる。
自社にない技術やノウハウを獲得することによって、新規事業を短期間で実現することができる。
自律感による高い心理的エネルギーを活用でき、既存事業からの影響を最小限にすることができる。
製品別や市場別に事業を区分し、独立採算制とすることで、利益責任を明確にすることができる。
解答
解説 M&A:Mergers and Acquisitions(合併と買収)は、他社の株式などを取得し自社に取り込む場合や、子会社化することを指します。これにより自社にとって未開の分野の技術や知識を早急に取り入れることができます。また、競争力の強化などにもつながります。

問76 取引商品をABC分析した場合、Aグループの管理対象となる商品の商品番号はどれか。

画像(問76)を表示できません
1と2
2と5
2と6
4と8
解答
解説 ABC分析とは、その累計比率から分析を行うもので、製品をA、B、Cの3つの区分に分けます。一般的にはA区分は70%程度に設定します。問題文中に境界値は示されていませんが、売上の1位と2位が2と5のため、これが正解であることが分かります。

なお、ABC分析にはよくパレート図が使われます。下にパレート図の例を示します。

パレート図

問77 部品の受払記憶が表のように示される場合、先入先出法を採用したときの4月10日の払出単価は何円か。

画像(問77)を表示できません
100
110
115
118
解答
解説 先入先出法は、先に入れたものから順に使っていくという考え方で在庫高を評価するものです。支払は3000個なので、前月繰越の2000個と購入の1000個が使われたことになります。

つまり、2000×100+1000×130=200,000+130,000=330,000円です。
あとは、330,000/3000=110とすることで、1個当たりの単価を計算できます。

問78 著作権法において、保護の対象とならないものはどれか。
インターネットで公開されたフリーソフトウェア
ソフトウェアの操作マニュアル
データベース
プログラム言語や規約
解答
解説 著作権法では以下のように定められています。

第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物

2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。

つまり、プログラムは著作物であるが、プログラム言語、プロトコル、アルゴリズムやフローチャートは保護の対象外であると定められています。

問79 特許権を説明したものはどれか。
産業上利用することができる新規の発明を独占的・排他的に利用できる権利であり、所轄の官庁への出願及び審査に基づいて付加される権利
事業者が自己の商品を他人の商品と識別するために商品について使用する標識を、独占的・排他的に使用できる権利
新規の美術・工芸・工業製品などで、その形・色・模様・配置などについて加える装飾上の工夫を、独占的・排他的に使用できる権利
文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する著作物を、その著作者が独占的・排他的に支配して利益を受ける権利
解答
解説 特許権は『@管轄官庁に登録しないと権利が発生しない。A管轄官庁は特許庁である。B権利の存続期間は20年である。C産業上の利用性があること』などの特徴があります。

なお、他の選択肢は下のような権利の説明です。
選択肢イは商標権
選択肢ウは意匠権
選択肢エは著作権

問80 “コンピュータ不正アクセス対策基準”に適合しているものはどれか。
監視効率を向上させるためにすべてのネットワークを相互に接続する。
業務上必要な場合は、利用者IDを個人間で共有して使用できる。
システム管理者が、すべての権限をもつ利用者IDを常に使用できる。
組織のセキュリティ方針を文書化し、定期的に研修を開催する。
解答
解説 コンピュータ不正アクセス対策基準は『コンピュータ不正アクセスによる被害の予防、発見及び復旧並びに拡大及び再発防止について、企業等の組織及び個人が実行すべき対策をとりまとめたもの』であり、『システムユーザ基準、システム管理者基準、ネットワークサービス事業者基準及びハードウェア・ソフトウェア供給者基準』から構成されます。

しかし、この内容を知らなくても十分常識的な知識だけで解答可能です。すべてのネットワークの相互接続は利用効率を高める可能性はありますが、監視効率が高まるとはいえません。IDを個人間で共有すると、だれが利用したのか特定できなくなります。また、管理者であってもすべての権限をもつのは避けるべきで、分散的に権利を保有するべきです。