平成22年度 秋期 基本情報技術者試験 問21−40 解答編




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基本情報

(基本情報技術者試験)

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問21 仮想記憶方式では、割り当てられる実記憶の容量が小さいとページアウト、ページインが頻発し、処理能力が急速に低下することがある。このような現象を何というか。
スラッシング
スワッピング
フラグメンテーション
メモリリーク
解答
解説 どれも、よく出題される用語なので、以下にまとめます。

スラッシング:仮想記憶方式において、実メモリの容量が少なく、データの入れ替えばかりに時間がとられ、処理が進まないこと。
スワッピング:プログラム単位で、主記憶にあるデータをHDDに退避・復元する作業のこと。
フラグメンテーション:ファイルが断片化され、HDDの様々な部分に格納され、ファイルを読み出すのに時間がかかること。
メモリリーク:プログラマなどのミスにより、取得したメインメモリが開放されず、徐々に使用できるメモリ量が減っていく現象です。

問22 コンパイラによる最適化の主な目的はどれか。
プログラムの実行時間を短縮する。
プログラムのデバッグを容易にする。
プログラムの保守性を改善する。
目的プログラムを生成する時間を短縮する。
解答
解説 コンパイラは、ソースプログラムを機械語に一括で変換するプログラムをいいます。その際に、コンパイラは実行時のサイズを小さくしたり、高速に実行するようにプログラムを最適化します。デバッグや保守性はソースプログラムの段階で行われるものです。また、最適化を行うほど目的プログラムの生成時間は増える傾向にあります。

Linux系での一般的なコンパイラGCCやG++では、−Oオプションで最適化とそのレベルを調節できます。

問23 プログラムの静的解析ツールで検出できるものはどれか。
関数ごとの実行処理時間
後に使用されない変数への代入
プログラム仕様に対応する処理の記述漏れ
用意したテストケースでは実行されなかった命令
解答
解説 プログラムを解析するツールは静的なツールと動的なツールに分けることができます。

動的なツールとは、プログラムを実行して調べるものです。選択肢アや選択肢エは動的に検出します。
静的なツールとは、プログラムを実行せずに調べるものです。選択肢イは静的に検出します。

なお、仕様の漏れなどはツールでの検出はできません。

問24 図に示すディジタル回路と等価な論理式はどれか。ここで、論理式中の・は論理積、+は論理和、はXの否定を表す。

画像(問24)を表示できません
X=A・B+A・B
X=A・B+
X=A・・B
X=(+B)・(A+
解答
解説 まず、問題文の回路の出力を求めてみます。

画像(問24a)を表示できません

X=A・()+B・()が求められたので、簡略化していきます。
 =A・+A・+B・+B・
 =A・・B

よって、Xは選択肢ウと等価な式であるといえます。

問25 次の条件を満足する論理回路はどれか。

[条件]
階段の上下にあるスイッチA又はBで、一つの照明を点灯・消灯する。すなわち、一方のスイッチの状態にかかわらず、他方のスイッチで照明を点灯・消灯できる。

画像(問25)を表示できません
AND
NAND
NOR
XOR
解答
解説 まずは、今回の事象をまとめると以下のようになります。

画像(問25a)を表示できません

次に、これを真理値表に対応させます。

状態
OFFOFF消灯
OFFON 点灯
ON OFF点灯
ON ON 消灯

最後に、ON,点灯を1。OFF,消灯を0に対応させます。

状態
これは、排他的論理和(XOR)の真理値表と同じです。よって、正解選択肢エとなります。

問26 フラッシュメモリの説明として、適切なものはどれか。
書込み回数は無制限である。
書込み時は回路基板から外して、専用のROMライタで書き込まなければならない。
定期的にリフレッシュしないと、データが失われる。
データ書換え時には、あらかじめ前のデータを消去してから書込みを行う。
解答
解説 フラッシュメモリは、現在USBメモリを初めさまざまな場所で利用されているメモリです。フラッシュメモリは、書き換え可能であり電源を切ってもデータが消えない不揮発性の半導体メモリです。フラッシュメモリは一度前のデータを消去してから書き込みを行います。一見無制限に書き込みができそうなイメージですが、数百〜数千回という構造上の寿命があります。

選択肢イ:専用のライタは必要ありません。
選択肢ウ:リフレッシュ(再充電)が必要なのは、主記憶などに利用されているDRAMです。

問27 使用性(ユーザビリティ)の規格(JIS Z 8521)では、使用性を、“ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目的を達成するために用いられる際の、有効さ、効率及び利用者の満足度の度合い”と定義している。この定義中の“利用者の満足度”を評価するのに適した方法はどれか。
インタビュー法
ヒューリスティック評価
ユーザビリティテスト
ログデータ分析法
解答
解説 いろいろ書いてありますが、つまり“利用者の満足度”を調べる手法を答えよということです。満足度というのは1や0のような数値で測る定量的なデータではなく、性質などの定性的データである点に注意します。それぞれの手法を以下にまとめます。

インタビュー法:利用者に直接聞き込みをする方法。インタビューをする人をインタビュアー、インタビューを受ける人をインタビュイーといいます。
ヒューリスティック法:専門家などの経験的な尺度に基づいて評価をする方法
ユーザビリティテスト:利用者に利用しやすさなどを調べるために行ってもらうテスト。操作ミスや感想などから評価をする方法
ログデータ分析法:利用者が残した記録(ログ)から問題点などを調べる方法

問28 3次元グラフィックス処理におけるクリッピングの説明はどれか。
CG映像作成における最終段階として、物体のデータをディスプレイに描画できるように映像化する処理である。
画像表示領域にウィンドウを定義し、ウィンドウ内の見える部分だけを取り出す処理である。
モデリングされた物体の表面に柄や模様などをはり付ける処理である。
立体感を生じさせるため、物体の表面に陰付けを行う処理である。
解答
解説 3Dグラフィックスの代表的な用語をまとめます。

アンチエイリアシング:黒と白の間にグレーを挟むような技術で、色が極端に変化する部分を目立たなくします。(極端に色が変化してギザギザになることをジャギーといいます。)
レイトレーシング:光源からの光線の経路を計算することで光の反射や透過などを表現し、物体の形状を描画する。
レンダリング:実際に画面に表示される画素や色を計算し、描画すること。
テクスチャマッピング:モデリングされた物体の表面に柄や模様などをはり付ける処理。
ブレンディング:半透明な画像を重ね合わせて表現する技術です。
メタボール:物体を球やだ円体の集合として擬似的にモデル化する。
ラジオシティ:光の相互反射を利用して物体表面の光エネルギーを算出することで、表面の明るさを決定する。
クリッピング:画面に見えている部分だけの計算をすることで、高速化をすることです。
シェーディング:光源の位置と角度を計算することで、影をつける技術です。
モーフィング:動画において、画像と画像の中間をいれることで、滑らかに変化しているように見せる技術です。

選択肢ア:レンダリング(具体的にはレイトレーシング法、ラジオシティ法など)
選択肢イ:クリッピング
選択肢ウ:テクスチャマッピング(はり付ける画像をテクスチャといいます)
選択肢エ:シェーディング

問29 次の“受注台帳”表を“注文”表と“顧客表”に分解し、第3正規形にしたとき、両方に必要な属性はどれか。ここで、送付先と支払方法は注文ごとに決めるものとする。また、表の下線は主キーを表す。

受注台帳(注文番号,注文年月日,顧客ID,顧客名,顧客住所,品目,数量,送付先,支払方法,受注金額)
顧客ID
顧客名
支払方法
注文番号
解答
解説 リレーションデータベースの正規化にはいくつかの段階があります。通常は第3正規形までですが、ボイス・コッドや第4、第5正規形というのもあります。

第1正規形:繰り返しや、反復している部分を独立させる。
第2正規形:第1正規形であり、部分関数従属を除去する(完全関数従属にする)
第3正規形:第2正規形であり、主キー以外に従属するものを除去する(推移従属を除去する)

用語についても少し解説しておきます。
関数従属:BがAに関数従属するとは、A(例:社員番号)を決めるとB(社員名)が一意に決定するというもの。Aを決定項、Bを従属項といいA→Bであらわす。
完全関数従属:決定項に余分なものがないときにいう。社員番号→社員名など。
部分関数従属:決定項に余分なものがあるときにいう。{社員番号、部署番号}→社員名など(部署番号がなくても社員名を特定できる)
推移関数従属:主キー以外に従属するものをいう。{社員番号}→{部署番号、部署名、社員名}のとき部署名は、部署番号にも従属しているので推移従属となる。


それでは、問題で与えられるデータを考えます。与えられたデータには反復部分がないので、第1正規形を満たしていることがわかります。また、主キーが1つしかないので部分関数従属にはならず、第2正規形であることがわかります。第3正規形にするためには、推移関数従属を除去します。ここで、推移関数従属になっているのは顧客ID→{顧客名、顧客住所}です。よって表は以下の2つに分けられます。

注文(注文番号,注文年月日,顧客ID,品目,数量,送付先,支払方法,受注金額)
受注台帳(顧客ID,顧客名,顧客住所)

よって、二つの表に共通する項目(二つの表を結合するためのキー)は顧客IDであることがわかります。

問30 関係データベースにおいて、表から特定の列を得る操作はどれか。
結合
削除
射影
選択
解答
解説 関係データベースの操作に関する用語を下にまとめます。

結合:2つ以上の表を元に、1つの表として作り出すこと
射影は、条件にあった列を取り出すこと
選択は、条件にあった行を取り出すこと
挿入は、条件にあった行を表に入れること
削除は、条件にあった行を表から除くこと

問31 “商品”表に対してデータの更新処理が正しく実行できるUPDATE文はどれか。ここで、“商品”表は次のCREATE文で定義されている。

CREATE TABLE 商品
(商品番号 CHAR(4),商品名 CHAR(20),仕入先番号 CHAR(6),単価 INT,PRIMARY KEY(商品番号))

画像(問31)を表示できません
UPDATE 商品 SET 商品番号 = ‘S001’ WHERE 商品番号 = ‘S002’
UPDATE 商品 SET 商品番号 = ‘S006’ WHERE 商品名 = ‘C’
UPDATE 商品 SET 商品番号 = NULL WHERE 商品番号 = ‘S002’
UPDATE 商品 SET 商品名 = ‘D’ WHERE 商品番号 = ‘S003’
解答
解説 選択肢のSQL文を1つずつ見ていきます。

選択肢ア:実行すると商品番号=S001が2つ出てきてしまいます。商品番号は主キーで重複が認められないので問題があります。
選択肢イ:条件に該当するものが2つあり、実行すると商品番号=S006が2つ出てきてしまします。商品番号は主キーで重複が認められないので問題があります。
選択肢ウ:主キーにNULLを設定することはできません。
選択肢エ:問題なく更新できます。

主キー(PRIMARY KEY)とは、その行を一意に決定するために指定されるもので、重複やNULL(空値)は認められません。
なお、UNIQUEも値を一意に制限するものですが、NULLは認められています。

問32 データベースのアクセス効率を低下させないために、定期的に実施する処理はどれか。
再編成
データベースダンプ
バックアップ
ロールバック
解答
解説 データベースも利用しているうちに、データを追加したり、削除したりするため利用されない領域等が発生します。それを解消するために再編成を行います。デフラグメンテーションをイメージしていただけると分かりやすいと思います。なお、データベースの構造を変更することは再編成といいます。

データベースダンプは、データベースの内容をファイルなどに書き出すことをいいます。
バックアップは、障害などに備えて、データをコピーしておくことです。
ロールバックは、処理の確定(コミット)に失敗した場合に、処理を取り消す作業をいいます。

問33 関係データベース“注文”表の“顧客番号”は、“顧客”表の主キー“顧客番号”に対応する外部キーである。このとき、参照の整合性を損なうデータ操作はどれか。ここで、ア〜エの記述におけるデータの並びは、それぞれの表の列の並びと同順とする。

画像(問33)を表示できません
画像(問33ans)を表示できません
解答
解説 外部キーになっている(参照制約を受けている)ということは、そのキーが実際に存在していなくてはならないという制約です。

選択肢ア:顧客番号L035は注文表にないので、削除しても大丈夫です。
選択肢イ:顧客番号D010を注文表に追加するのは、顧客表に実在しているので大丈夫です。
選択肢ウ:顧客番号F020を注文表に追加するのは、顧客表に実在していないので、整合性上問題があります。
選択肢エ:注文表は参照制約をかけている側であって、受けている側ではないので、どのようなレコードを削除しても問題ありません。

問34 OSI基本参照モデルにおけるネットワーク層の説明として、適切なものはどれか。
エンドシステム間のデータ転送を実現するために、ルーティングや中継などを行う。
各層のうち、最も利用者に近い部分であり、ファイル転送や電子メールなどの機能が実現されている。
物理的な通信媒体の特性の差を吸収し、上位の層に透過的な伝送路を提供する。
隣接ノード間の伝送制御手順(誤り検出、再送制御など)を提供する。
解答
解説 OSI基本参照モデルをまとめると以下のようになります。

OSI基本参照モデルを表示できません

選択肢アは、ネットワーク層の説明です。
選択肢イは、アプリケーション層の説明です。
選択肢ウは、物理層の説明です。
選択肢エは、データリンク層の説明です。

問35 複数のLANを接続するために用いる装置で、OSI基本参照モデルのデータリンク層のプロトコル情報に基づいてデータを中継する装置はどれか。
ゲートウェイ
ブリッジ
リピータ
ルータ
解答
解説 OSI基本参照モデルと対応する機器をまとめると以下のようになります。

OSI基本参照モデルを表示できません

選択肢アは、トランスポート層以上でプロトコルの中継・変換を行う機器です。
選択肢イは、データリンク層でMACアドレスに基づくルーティングをする機器です。
選択肢ウは、物理層で信号の整形や増幅を行う機器です。
選択肢エは、ネットワーク層でIPアドレスに基づくルーティングをする機器です。

問36 ルータがパケットの経路決定に用いる情報として、最も適切なものはどれか。
あて先IPアドレス
あて先MACアドレス
発信元IPアドレス
発信元MACアドレス
解答
解説 ルータ(第3層で動作)が経路を制御する際にはIPアドレスを用います。(ブリッジ(第2層)はMACアドレス)そして、相手側に届けるのですから、あて先の情報が必要となります。極端なことをいえば、発信元は必要ありません。(よって偽造される可能性もあります。)

問37 TCP/IPネットワークにおいて、二つのlANセグメントを、ルータを経由して接続する。ルータの各ポート及び各端末のIPアドレスを図のとおりに設定し、サブネットマスクを全ネットワーク共通で255.255.255.128とする。ルータの各ポートのアドレス設定は正しいとした場合、IPアドレスの設定を正しく行っている端末の組合せはどれか。

画像(問37)を表示できません
AとB
AとD
BとC
CとD
解答
解説 まず、サブネットマスクからネットワーク部とホスト部を考えます。

サブネットマスクは、255.255.255.128なので2進数にすると11111111.11111111.11111111.10000000です。1の部分がネットワーク部で0の部分がホスト部に相当します。

まず、左側はルータのアドレスが172.16.0.1なので、10101100.00010000.00000000.00000001となり、使えるホストは 10101100.00010000.00000000.00000001(172.16.0.1)〜10101100.00010000.00000000.01111110(172.16.1.126)までの126台分となります。よってAは正しく、Bは間違った設定といえます。

次に、右側はルータのアドレスが172.16.1.5なので、10101100.00010000.00000001.00000101となり、使えるホストは 10101100.00010000.00000001.00000001(172.16.1.1)〜10101100.00010000.00000001.01111110(172.16.1.126)までの126台分となります。よってCは間違い、Aは正しい設定といえます。

なお、ホスト部がすべて0のアドレスはネットワークアドレスと呼ばれ、ネットワーク自身を指すため利用できません。また、ホスト部がすべて1のアドレスはブロードキャストアドレスと呼ばれ、すべての端末にデータを送るために利用されるため、端末に割り振ることはできません。

問38 LANに接続されている複数のPCを、FTTHを使ってインターネットに接続するシステムがあり、装置AのWAN側インタフェースには1個のグローバルIPアドレスが割り当てられている。この1個のグローバルIPアドレスを使って複数のPCがインターネットを利用するのに必要となる装置Aの機能はどれか。

画像(問38)を表示できません
DHCP
NAPT(IPマスカレード)
PPPoE
パケットフィルタリング
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol):動的にIPアドレスを割り振るや設定を行うプロトコルです。
NAPT( Network Address Port Translation):IPとポート番号をを組み合わせて、1つのグローバルIPアドレスと複数のプライベートIPアドレスを相互変換するものです。
PPPoE(Point to Point Protocol over Ethernet):PPP(2点間通信のプロトコル)をLNAの規格であるEthernetに拡張したものです。ADSLに応用されています。
パケットフィルタリング:ルータやファイアウォールで提供される機能で、ルールに従ってパケットを通すか通さないを決める機能です。

問39 ディジタル署名に用いる鍵の種別に関する組合せのうち、適切なものはどれか。
画像(問39ans)を表示できません
解答
解説 ディジタル署名は、公開鍵を利用した本人確認と改ざん検出を行う技術です。以下にその概要図を示します。

ディジタル署名を表示できません

なお、ディジタル署名には共通鍵は使用しません。

問40 バイオメトリクス認証には身体的特徴を抽出して認証する方式と行動的特徴を抽出して認証する方式がある。行動的特徴を用いているものはどれか。
血管の分岐点の分岐角度や分岐点間の長さから特徴を抽出して認証する。
署名するときの速度や筆圧から特徴を抽出して認証する。
どう孔から外側に向かって発生するカオス状のしわの特徴を抽出して認証する。
隆線によって形作られる紋様からマニューシャと呼ばれる特徴点を抽出して認証する。
解答
解説 バイオメトリクス認証(生体認証)とは人間の持つ固有の特徴を利用した認証で、パスワードのような知っていれば誰でも使えるようなものと違い、安全性が高いといわれています。バイオメトリクス認証は、身体的特徴(生体器官)抽出と行動的特長(癖)抽出があります。

さらに、バイオメトリクス認証を導入する際には、本人拒否率(FRR)と他人受入率(FAR)などを十分に考慮した閾値を設ける必要があります。

選択肢ア、ウ、エはいずれも身体的特徴抽出の説明です。
選択肢アは血管(静脈)認証、選択肢ウは虹彩認証、選択肢エは指紋認証の説明です。