平成18年度 春期 ソフトウェア開発技術者試験 問41−60 解答編




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(ソフトウェア開発技術者試験)

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問41 次のE−R図の解釈として、適切なものはどれか。ここで、多重度の*印は0以上を表すものとする。また、自己参照は除くものとする。

画像(問41)を表示できません
子組織の数より親組織の数が多い場合可能性がある。
組織は2段階の階層構造である。
組織は必ず子組織をもつ。
組織はネットワーク構造になっていない。
解答
解説 選択肢を順番に評価していきます。

選択肢ア:どちらも0以上なので、親組織のほうが多い可能性はあります。
選択肢イ:子組織は、さらに子組織を・・・と階層的になりえるので2段階とは限りません。
選択肢ウ:子組織は0以上なので、0の場合には子組織をもちません。
選択肢エ:共通の親をもつ子があるので、木構造やネットワーク構造になっているといえます。

問42 オブジェクト指向におけるインヘリタンスに関する記述はどれか。
あるクラスのサブクラスを定義するとき、基底クラスで定義されたデータ構造と手続をサブクラスで引き継いで使うことができる。
オブジェクトの性格を決めるデータ構造や値を隠ぺいし、オブジェクトの外部から直接アクセスすることを禁止する。
オブジェクトのデータ構造や手続を変更した場合でも、外部への影響を避けることができ、オブジェクトの独立性を向上させることができる。
同一のデータ構造と同一の手続をもつオブジェクトをまとめて表現したものである。
解答
解説 インヘリタンスとは、継承のことで、親(基底)クラスで定義したデータ構造と手続き(メソッド)を子(サブ)クラスで利用することで、再利用性を高める技術です。下に継承の例を図示します。

インヘリタンスを表示できません

継承によって、親のデータやメソッドを使うことができますが、親から継承したメソッドを上書き(再定義)することもできます。これをオーバーライドといいます。

問43 モジュール設計に関する記述のうち、モジュール強度が最も高いものはどれか。
ある木構造データを扱う機能をデータとともに一つにまとめ、木構造データをモジュールの外から見えないようにした。
複数の機能のそれぞれに必要な初期設定の操作が、ある時点で一括して実行できるので、一つのモジュールにまとめた。
二つの機能A,Bのコードは重複する部分が多いので、A,Bを一つのモジュールとし、A,Bの機能を使い分けるために引数を設けた。
二つの機能A,Bは必ずA,Bの順番で実行され、しかもAで計算した結果をBで使うことがあるので、一つのモジュールにまとめた。
解答
解説 プログラムを機能ごとに分割したものをモジュールといいます。そしてモジュールの分け方や結合の仕方により様々な形態があります。まず、モジュール強度とモジュール間結合度を以下にまとめます。

モジュールを表示できません

選択肢アは、情報的強度の説明です。
選択肢イは、時間的強度の説明です。
選択肢ウは、論理的強度の説明です。
選択肢エは、連絡的強度の説明です。

問44 ブラックボックステストのテストデータの作成方法として、最も適切なものはどれか。
稼働中のシステムから実データを無作為に抽出し、テストデータを作成する。
機能仕様から同値クラスや限界値を識別し、テストデータを作成する。
業務で発生するデータの発生頻度を分析し、テストデータを作成する。
プログラムの流れ図から、分岐条件に基づいたテストデータを作成する。
解答
解説 ホワイトボックステストとブラックボックステストの違いを以下にまとめます。

ホワイトボックステストは、内部構造に着目し論理がきちんとできているかを調べるテスト。単体テストなどに用いられ、条件網羅率などを調べる。
ブラックボックステストは、入力と出力の関係が仕様書通りにできているかを調べるテスト。結合テストなどに用いられ、限界値分析、同値分析などを行う。

問45 二つの独立したテストグループA,Bが、あるシステムについて一定期間並行してテストを行い、それぞれNA個及びNB個のエラーを検出した。このうち、共通のエラーはNAB個であった。このシステムの総エラー数Nを予測する式はどれか。ここで、NA>0、NB>0、NAB>0とし、グループA,Bのエラーを検出する能力及び効率は等しいものとする。
N=NA+NB−NAB
N=NAB×NA×NB
N=(NA+NB)/NAB
N=NA×NB/NAB
解答
解説 まず、グループAで発見されるエラーの比率はNA/N。グループBで発見されるエラーの比率はNB/N。両方のグループで発見されるエラーの比率はNAB/N。

両方のグループで発見されるエラーはグループAで発見されるかつグループBで発見されるなので、以下のような式が成立します。
AB/N = NA/N × NB/N
AB = NA × NB/N
N = NA × NBAB

問46 あるプログラムについて、流れ図で示される部分に関するテストデータを、判定条件網羅(分岐網羅)によって設定した。このテストデータを、複数条件網羅による設定に変更したとき、加えるテストデータとして、適切なものはどれか。ここで、( )で囲んだ部分は、一組のテストデータを表すものとする。

画像(問46)を表示できません


・判定条件網羅(分岐網羅)によるテストデータ
(A=4、B=1),(A=5、B=0)
画像(問46ans)を表示できません
解答
解説 ホワイトボックステストの手法について下にまとめます。

命令網羅:命令が必ず1度は実行されるようにする。つまり、if文(if-elseではない)では真だけ通過すればよい。
判定条件網羅(分岐網羅):すべての判定条件で、真と偽を1回以上行うようにする。
条件網羅(分岐条件網羅):すべての判定条件で、条件文の中のANDやORも真と偽のすべての組み合わせを行うようにする。
複数条件網羅:すべての条件の真と偽の組み合わせを1度は実行するようにする。

まず、条件判定網羅ではYesとNoを1回ずつ通るテストケースが作成されています。
(A=4,B=1)は、A>6は偽、B=0は偽
(A=5,B=0)は、A>6は偽、B=0は真

あとは、A>6とB=0が真、A>6が真、B=0が偽になるテストを加えることで複数条件網羅にすることができます。
つまり、(A=7、B=0)と(A=8、B=2)を追加する必要があります。

問47 次のアローダイアグラムで表される作業A〜Hを見直したところ、作業Dだけが短縮可能であり、その所要日数を6日間にできることが分かった。業務全体の作業日数は何日短縮できるか。ここで、矢印に示す数字は各作業の所要日数を表す。

画像(問47)を表示できません
解答
解説 まずは、現在の状態の作業日数をもとめます。なお点線は同期のための線で、作業時間0の実線と考えてください。

画像(問52a_1)を表示できません

クリティカルパスはA → C → D → E → Hで31日かかります。

次に、作業Dを6日に短縮した作業日数をもとめます。

画像(問52a_2)を表示できません

クリティカルパスはA → C → F → Hで28日かかります。

作業日数が短縮される場合には、クリティカルパスが変更される可能性があり、短縮した日数4日(10日から6日)が単純に短縮されるわけではないので注意してください。

問48 プログラムの変更管理の実施に関する記述のうち、適切なものはどれか。ここで、障害発生率とは、変更したことによる新たな障害の発生率をいう。
変更依頼の基準として、変更依頼書の標準形式を決め、依頼時に障害発生率の目標値を決める。
変更実施結果の評価基準として、変更作業工数の予測値、障害発生率の目標値を決める。
変更の実施基準として、実施のタイミング、障害発生率の目標値を決める。
変更の分類項目として、影響範囲、必要性、障害発生率を採用する。
解答
解説 変更管理はITIL(ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス)を構成するプロセスのひとつで、ITサービス運営に手法について書かれています。サービスサポートは、一つの機能と、五つのプロセスで構成されています。下に内容をまとめます。

インシデント管理:障害時の迅速な回復を行い、影響を最小限にする
問題管理:インシデントや障害の原因の解明と対策・再発防止を行う
構成管理:構成アイテム情報の収集や維持・管理・確認・検査を行う
変更管理:構成アイテムの変更を安全かつ効率的に実施する
リリース管理:変更管理プロセスで承認された内容を本番環境に反映させる
サービスデスク:顧客との窓口の役割をし、サポート業務を行う

選択肢ア:変更依頼書に関しては適切ですが、依頼時に障害発生率の目標を決めることはありません。
選択肢ウ:変更のタイミングに関しては適切ですが、実施基準に障害発生率の目標を決めることはありません。
選択肢エ:変更の分類に影響範囲や必要性は適切ですが、障害発生率で分類することはありません。

問49 多重プログラミングを行っているシステムで、システム全体のスループット低下を招くようなプログラムの組合せはどれか。
演算処理を中心となるプログラム同士
共有データを格納したメモリ領域を参照するプログラム同士
異なる磁気ディスクにアクセスするプログラム同士
利用者の入力操作と入力されたデータの演算処理とが混在しているプログラム同士
解答
解説 多重プログラミングでは、同期や資源の競合によってスループットの低下します。選択肢アのように演算処理(CPUでの処理)ばかりだと、CPUを取り合い、待ちが生じるのでスループットが低下するといえます。

選択肢イ:読み取りの場合にはロックが発生しないので、スループットの低下はありません。
選択肢ウ:別の装置にアクセスをしているので、スループットの低下はありません。
選択肢エ:入力操作の間に別のプログラムが演算処理をするので、スループットの低下はありません。

問50 ツールレス保守に該当するものはどれか。
異常が発生した場合、現場から離れた保守センタから障害状況を調査する。
故障の前兆となる現象を事前にとらえて、対象となる部品を取り替える。
サーバマシン内部の基板などをモジュール化し、取付けをレバー式にする。
電源や磁気ディスクなどを二重化し、故障時は縮退運転して故障装置を交換する。
解答
解説 ツールレス保守とはツール=道具、レス=無しということで、道具を使わない保守法です。

選択肢アは、遠隔保守の説明です。
選択肢イは、予防保守の説明です。
選択肢エは、フォールトトレランスの説明です。

問51 IPv4のIPアドレスに関する記述のうち、適切なものはどれか。
IPアドレスのクラス分けは、32ビットのうちの先頭2ビットによって、クラスAからクラスDまでの四つのクラスに識別される。
IPアドレスは32ビットであり、8ビットごとに四つの部品に分けて、16進数で表記する。
IPアドレスは32ビットであり、クラスA、クラスB及びクラスCのアドレスフィールドは、ネットワークアドレス部とホストアドレス部とに分かれる。
限られたIPアドレス空間を有効に利用するために、32ビットのうちのネットワークアドレス部を分割して一部をサブネットアドレス部として使用する。
解答
解説 IPv4は32ビットで10進数4桁で表現されます。そして、クラスは先頭から4ビットの並びでクラスが分類されます。

クラスA:0XXXXXXX:使えるホスト数=224。使えるIPアドレスの範囲(10.0.0.0 〜 10.255.255.255)
クラスB:10XXXXXX:使えるホスト数=216。使えるIPアドレスの範囲(128.0.0.0 〜 128.255.255.255)
クラスC:110XXXXX:使えるホスト数=28。使えるIPアドレスの範囲(192.168.0.0 〜 192.168.255.255)
クラスD:1110XXXX:マルチキャスト用で、ホストアドレス部分はなし。
(クラスE:1111XXXX:実験用・予約用のIPで一般的には利用されない。)

なお、以下の特別な2つのアドレスはホストに割り振ることができません。
ホスト部がすべて0のアドレスはネットワークアドレスとよばれ、ネットワーク自身を表すのに使われる。
ホスト部がすべて1のアドレスはブロードキャストアドレスとよばれ、ブロードキャスト(全送)用に使われる。

サブネット化はホスト部を分割し、一部を部分ネットワークのように扱いますが、IPアドレス空間の有効活用というよりも論理的なネットワークの区分けのために用いられます。

問52 電子メールでMIMEの機能を必要とする場合はどれか。
あて先(To)フィールド中に日本語の文字を用いる。
本文中のURLをクリックするとブラウザがそのページを表示する。
本文に日本語の文字を用いる。
本文の最後にシグネチャを自動的に付加する。
解答
解説 MIME(Multipurpose Internet Mail Extensions)は本来アスキーコードしか電子メールで様々なフォーマットを取り扱えるようにしたものです。現在では、MIMEにセキュリティ機能をつけたS/MIME(Secure/MIME)が多く利用され、暗号化やディジタル署名をすることができ、改ざんを検出することができます。

選択肢イ:メーラー(メールソフト)とブラウザの機能です。
選択肢ウ:一部を除き、MIMEがなくても日本語は利用可能です。
選択肢エ:メーラーの設定で可能です。

問53 TCPを使用したデータ転送において、受信ノードからの確認応答を待たずに、連続して送信することが可能なオクテット数の最大値を何と呼ぶか。
ウィンドウサイズ
確認応答番号
シーケンス番号
セグメントサイズ
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

ウィンドウサイズ:受信側からの応答(ACK)を待たずに一度に送っても良いデータ。ウィンドウサイズを1から徐々に大きくしていくスロースタートという技術もあります。
確認応答番号:受信側が受信したデータに対し、応答側へ返答する番号
シーケンス番号:送信したデータの連番
セグメントサイズ:送信単位のこと。最大セグメントサイズをMSSといいます。

問54 誤り検出方式であるCRCに関する記述として、適切なものはどれか。
検査用データは、検査対象のデータを生成多項式で処理して得られる1ビットの値である。
受信側では、付加されてきた検査用データで検査対象のデータで割り、余りがなければ送信が正しかったと判断する。
送信側では、生成多項式を用いて検査対象のデータから検査用データを作り、これを検査対象のデータに付けて送信する。
送信側と受信側では、異なる生成多項式が用いられる。
解答
解説 CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)とは、送信列から生成多項式とよばれる式をつくり、送信側で余りがを加え、受信側で計算式の余りが0かどうかを調べるものです。なお、生成多項式は同じでなければ正しいデータを得られません。

問55 音声のサンプリングを1秒間に11,000回行い、サンプリングした値をそれぞれ8ビットのデータとして記録する。このとき、32×106バイトの容量をもつUSBフラッシュメモリに、最大何分の音声を記録できるか。
48
60
解答
解説 順番に計算していきましょう

まず、1秒間に必要なデータ量は11,000×8ビット(1バイト)=11,000バイト/秒。これを32×106バイトの容量に記録するので、32,000,000/11,000=32,000/11≒2909秒記録できます。これを分に換算すると、2909/60≒48秒となります。

問56 100Mビット/秒のLANに接続されているブロードバンドルータ経由でインターネットを利用している。FTTHの実効速度が90Mビット/秒で、LANの伝送効率が80%のときに、LANに接続されたPCでインターネット上の540Mバイトのファイルをダウンロードするのにかかる時間は、およそ何秒か。ここで、制御情報やブロードバンドルータの遅延時間などは考えず、また、インターネットは十分に高速であるものとする。

画像(問56)を表示できません
43
48
54
60
解答
解説 まず、ブロードバンドルータ−インターネット間のダウンロード時間を計算します。90Mビット/秒=11.25MB/秒。この回線で540Mバイトをダウンロードするので、540/11.25=48秒かかります。
 つぎに、LAN−ブロードバンドルータ間は100Mビット/秒の80%なので、100×0.8Mビット/秒=10MB/秒。この回線で540Mバイトをダウンロードするので、540/10=54秒かかります。

この場合、LAN−ブロードバンドルータ間がボトルネックとなり、54秒かかります。

問57 LANのアクセス制御方式であるCSMA/CD方式に関する説明として、適切なものはどれか。
送出した信号の衝突を検知した場合は、ランダムな時間の経過後に再送信する。
送信権を与えるメッセージ(フリートークン)を得たノードがデータを送信する。
ディジタル信号をアナログ信号に変換(変調)して通信を行う。
転送する情報を、セルと呼ばれる固定長のブロックに分割して転送する。
解答
解説 CSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection):搬送波感知多重アクセス/衝突検出方式のことで、LANの制御方式の一種です。これは、まずネットワークを監視し、データが流れていなことを確認します。その後送信をしますが、ここで衝突をする可能性があります。その場合は、複数の送信者がランダムな時間待機し、再送信を行います。

選択肢イは、トークンパッシングの説明です。
選択肢ウは、アナログ変調通信の説明です。
選択肢エは、ATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード)の説明です。

問58 図のようなIPネットワークのLAN環境で、ホストAからホストBにパケットを送信する。パケットがホストAからルータに伝送されるとき、パケット内のイーサネットフレームのあて先とIPデータグラムのあて先の組合せとして適切なものはどれか。ここで、図中のMACn/IPmはホスト又はルータがもつインタフェースのMACアドレスとIPアドレスを示す。

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解答
解説 第3層のIPアドレスは、最終的な送信元と送信先のアドレスを指定します。第2層のMACアドレスは、隣接するノード間での通信を実現するので、ホストAは、送信先IPアドレス=ホストB、送信先MACアドレスはルータというパケットを作成します。

なお、ルータで、送信元MACアドレス=ルータ(MAC4)、送信先MACアドレス=ホストBのパケットにヘッダが書き換えられ送信されます。

問59 磁気ディスク装置や磁気テープ装置などのストレージ(補助記憶装置)を、通常のLANとは別の高速な専用ネットワークで構成する方式はどれか。
DAFS
DAS
NAS
SAN
解答
解説 選択肢の用語を以下にまとめます。

DAFS(Direct Access File System):クラスタ環境などでファイルを共有アクセスできるプロトコル
DAS(Direct Attached Storage):直接接続された記憶装置(ストレージ)のこと
NAS(Network Attached Storage):コンピュータネットワークに直接接続して使用するファイルサーバやストレージ
SAN(Storage Area Network):LANとは別に、外部記憶装置間および記憶装置などのストレージとコンピュータの間を専用のネットワークによって接続する形態。通信には、ファイバチャネルプロトコルなどが用いられる。

問60 図は10BASE−TによるLAN接続ケーブルを用いて、PCを接続したネットワークの概念図である。図中のAをPC,Bをネットワークインタフェースカードとしたとき、Cの装置名として適切なものはどれか。

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ターミネータ
トランシーバ
ハブ
モデム
解答
解説 装置CはLAN接続ケーブルを集線しているので、ハブであるといえます。

ターミネータは、ケーブルの両端において、信号の反射を防ぐために用いられる終端抵抗
トランシーバは、コンピュータ・ケーブルなどの間に仲介し、信号の制御や衝突検知などを行う。
モデムは、ディジタル・アナログを相互に変調・復調するための変復調装置