平成22年度 秋期 ITパスポート試験 問21−40 解答編




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ITパスポート

(エントリ試験)

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問21 財務諸表のうち、“営業活動”、“投資活動”、“財務活動”の三つの活動区分に分けて表すものはどれか。
キャッシュフロー計算書
損益計算書
貸借対照表
有価証券報告書
解答
解説 財務諸表について下にまとめます。

キャッシュフロー計算書(C/F)は、収入と支出の資金についてを記載したもので、営業活動、投資活動、財務活動の3つからなります。
損益計算書(P/L)は、企業のある一定期間における収益と費用の詳しい状態を表したものです。
貸借対照表(B/S)は、企業のある一定時点における資産、負債、純資産の状態を表すものです。
有価証券報告書は、上場会社などが、事業状況などを報告するためのものです。

問22 CSRの説明として、最も適切なものはどれか。
企業が他社の経営の仕方や業務プロセスを分析し、優れた点を学び、取り入れようとする手法
企業活動において経済的成長だけでなく、環境や社会からの要請に対して、責任を果たすことが、企業価値の向上につながる考え方
企業の経営者がもつ権力が正しく行使されるように経営者が牽制する制度
他社がまねのできない自社ならではの価値を提供する技術やスキルなど、企業の中核となる能力
解答
解説 CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは、企業が事業活動を営む上で、社会に与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダ(利害関係者)からの要求に対し適切な説明責任を果たすことをいい、具体的には、関係者への説明責任などがこれにあたります。

選択肢アは、ベンチマーキングの説明です。
選択肢ウは、コーポレートガバナンス(企業統治)の説明です。
選択肢エは、コアコンピタンスの説明です。

問23 A作業、B作業、C作業からなる図のような業務プロセスがある。情報システムを導入することで改善が実現できるとき、製品を1個製造するために必要な作業工数は改善前に比べて何%削減されるか。ここで、図の矢印は作業順序を表し、作業工数は作業員数×作業時間で計算する。

画像(問23)を表示できません


【改善前】
・各作業の要員数は10名
・製品1個当たりの所要作業時間は、A作業は3時間、B作業は3時間、C作業は4時間である。

【改善後】
・A作業に必要な要員数が半分になる。
・C作業の製品1個当たりの所要作業時間が半分になる。
15
20
30
35
解答
解説 まずは、現在の仕事の量を考えます。通常は人数×時間を単位量として計算します。小さい作業であれば人時、大きい作業であれば人月という単位になります。

現在
A=10人×3時間=30人時
B=10人×3時間=30人時
C=10人×4時間=40人時
つまり、現在は製品1個当たり30+30+40=100人時の労力が必要であるといえます。

次に改善後は
A=5人×3時間=15人時
B=10人×3時間=30人時
C=10人×2時間=20人時
よって、製品1個当たり15+30+20=65人時の労力に削減できます。

これを比率に直すと、(100−65)/100 = 35%となります。

問24 住宅建材の製造・販売を行うA社は、物流業務の問題と、それを解決するための改善案を取りまとめた。改善案を実現するために、システム化すべき機能として、最も適切なものはどれか。

【問題】
 営業所で商品を発注してから納品されるまでに数日掛かるので、欠品を恐れた営業所が全取扱商品ごとに在庫を抱えてしまっている。その結果、A社全体で多大な在庫コストが発生している。

【改善案】
 営業地域の主要エリアに物流倉庫を設置して、配送トラックを追加し、営業所からの受注受付後、当日中に配送できるようにする。
営業所で担当地域の新規住宅着工戸数を照会できる仕組みを作る。
営業所の受注内容を物流倉庫に即時に伝えられる仕組みを作る。
各営業所の所長が現在の在庫コストを把握出来る仕組みを作る。
各営業所の販売成績を比較検討できる経営者用の分析機能を作る。
解答
解説 問題を要約すると、注文から届くまでに時間がかかるので、当日中に配送できるようにしたい。その際にどんなシステムが必要かということです。

つまり、注文内容をすぐに配達元に伝えられる仕組みが必要です(選択肢イ)。着工戸数や現在の在庫数、販売成績は納品速度に関係がありません。

問25 ERPの説明として、最も適切なものはどれか。
経営資源の有効活用の観点から企業活動全般を統合的に管理し、業務を横断的に連携させることによって経営資源の最適化と経営の効率化を図る。
現行のビジネスプロセスを見直し、仕事の流れややり方だけではなく、組織の構造や管理体制等も革新して、パフォーマンスの向上を図る。
顧客に関する情報をデータベース化し、顧客接点となる全部門が共有することによって、顧客への対応の迅速化を促進し、顧客との良好な関係構築を図る。
従業員の創造性、行動能力や知恵、データベース上に蓄積された知識や情報をばらばらなものとしてではなく、統合した経営資源として活用を図る。
解答
解説 ERP(Enterprise Resource Planning:全社的資源計画)とは、経営資源を最適化することを目的とするもので、導入に当たり、さまざまなプロセスの準備(検証・標準化等)が必要となり、専門の部門などにやらせるのが一般的です。これを実現する支援ソフトウェアをERPパッケージといいます。

選択肢イは、BPR(Business Process Reengineering)の説明です。
選択肢ウは、CRM(Customer Relation Management:顧客関係管理)の説明です。
選択肢エは、ナレッジマネジメント(知識管理)の説明です。

問26 A社は製品Bの製造及び販売を行っている。このとき、製品Bの総原価を計算する方法のうち、適切なものはどれか。ここで、総原価は製品Bの販売までに要したすべての原価を指す。
製品Bの売上高−製品Bの営業費
製品Bの売上高−製品Bの製造原価
製品Bの製造原価+製品Bの営業費
製品Bの製造原価+製品Bの営業利益
解答
解説 総原価とは、販売までにかかったすべての原価を指すと問題文にも記述されているので、売上には利益(利潤)が含まれてしまうので、計算式には関係しないことがわかります。つまり、製造コスト+販売コストである「製品Bの製造原価+製品Bの営業費」が正解となります。

問27 MOTの説明として、適切なものはどれか。
企業が事業規模を拡大するに当たり、合併や買収によって他社の全部又は一部の支配権を取得することである。
技術に立脚する事業を行う企業が、技術開発に投資してイノベーションを促進し、事業を持続的に発展させていく経営の考え方のことである。
経営陣が金融関係などから資金調達して株式を買い取り、経営権を取得することである。
製品を生産するために必要となる部品や資材の量を計算し、生産計画に反映させる資材管理手法のことである。
解答
解説 MOT(Management Of Technology:技術経営)とは、技術開発のイノベーション(革新)を促進させることで経済的価値を見出していく経営戦略をいいます。

選択肢アは、M&A(Mergers and Acquisitions:合併と買収)の説明です。
選択肢ウは、MBO(Management Buyout:経営陣買収)の説明です。
選択肢エは、MRP(Materials Requirements Planning:資材所要量計画)の説明です。

問28 別段の取決めがない請負契約の場合、民法に基づき、当事者である注文者又は請負者に課せられている義務のうち、適切なものはどれか。
請負人は、請け負った仕事を完成させる。
請負人は、請け負ったすべての仕事を自ら行う。
請負人は、仕事の完成後、その仕事に起因して発生した欠陥に対して恒久的に責任を負う。
注文者は、仕事に掛かる費用を請負人に前払いする。
解答
解説 請負契約とは、仕事の一部を外部に委託し、対価を支払って青果物を受け取るという形態です。請負人には仕事を完成させる義務が生じ、完成した仕事(目的物)の引渡しと同時に対価を支払います。欠陥に対して責任を負うのは一年間です。

問29 経営戦略の目標や目的を達成するうえで、重要な要因を表すものはどれか。
CSF
ERP
MRP
SCM
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

CSF(Critical Success Factors:重要成功要因)とは、目標達成に大きな影響を与える要因のことです。
ERP(Enterprise Resource Planning:全社的資源計画)とは、経営資源を最適化することを目的とするもので、導入に当たり、さまざまなプロセスの準備(検証・標準化等)が必要となり、専門の部門などにやらせるのが一般的です。これを実現する支援ソフトウェアをERPパッケージといいます。
MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)とは、適切な場所で適切な量(過剰や不足を防ぐ)の在庫を確保するために、発注点や発注量を計算し計画することです。Materialとは資材・物質、Requirementsは必要物、要求という意味です。
SCM(Supply Chain Management:供給連鎖管理)は材料の調達から販売までを最適化することで無駄をなくし、最適な生産を行うという材料販売管理システムです。

問30 災害による事業中断へのリスク対策として、データセンタを関東と関西の2か所に設置することにした。このリスク対策は、リスクマネジメントにおける四つのリスク対応のうち、どれに該当するか。
移転
回避
低減
保有
解答
解説 リスクについて大まかにまとめると、以下のようになります。

リスクを表示できません

今回のように、発生したリスクによる被害を少なくする対策は、リスク低減やリスク分散に相当します。リスク移転は他方へリスクを転嫁するので、この場合は適切ではありません。リスク保有はリスクの発生を受け入れるという考え方で、リスクが小さいときに行う対策です。

問31 業務をモデル化する際のモデリング手法の適切な組合せはどれか。
画像(問31ans)を表示できません
解答
解説 選択肢のモデリング手法を以下にまとめます。

DFD(Data Flow Diagram)は、データの源泉・吸収・処理・蓄積などの関係を表現します。以下のような記号を利用します。

DFDを表示できません

E−R(Entity-Relationship Diagram)図は、2つの実体と実体間の関係を表すのに適しています。リレーショナルデータベースの設計などで用いられます。以下のように利用します。

E−R図を表示できません

PERT(Program Evaluation and Review Technique)図は、作業の前後関係を整理して矢印で表現したネットワーク図を作成し、工程上のクリティカルパスなどを見つけ、計画に役立てる。以下のように利用します。

PERT図を表示できません

問32 CD−ROMに記録されたPCのソフトウェアパッケージを購入することによって、購入者に帰属する権利はどれか。
CD−ROMに記録されたプログラムの使用権
CD−ROMに記録されたプログラムの著作権
プログラムの記録されたCD−ROMの意匠権
プログラムの記録されたCD−ROMの著作権
解答
解説 一般的にソフトウェアパッケージを購入するということは、(CDやDVDに記録された)プログラムを使う権利(いわゆるライセンス)を購入するということです。著作権が委譲されてしまうと、その人が販売権などを所有することになってしまいます。また、CD−ROM自体の権利を売買することではありません。

問33 ITサービスマネジメントのプロセスには、インシデント管理、問題管理、リリース管理などの活動がある。問題管理の活動はどれか。
電子メールが送信できないと各部署から連絡があった。サービスを再開するためバックアップシステムを立ち上げた。
電子メールが送信できないと問合わせがあった。利用者にPCの設定を確認してもらったところ、電子メールアドレスが誤っていたので修正してもらった。
メールシステムがサーバのハードウェア障害でダウンした。故障したハードウェア部品の交換と確認テストを実施した。
メールシステムがダウンした。原因を究明するために情報システム部門の担当者とシステムを構築したベンダの技術者を招集し、情報収集を開始した。
解答
解説 サービスサポートプロセスはITIL(ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス)を構成するプロセスのひとつで、ITサービス運営に手法について書かれています。サービスサポートは、一つの機能と、五つのプロセスで構成されています。下に内容をまとめます。

インシデント管理:障害時の迅速な回復を行い、影響を最小限にする
問題管理:インシデントや障害の原因の解明と対策・再発防止を行う
構成管理:構成アイテム情報の収集や維持・管理・確認・検査を行う
変更管理:構成アイテムの変更を安全かつ効率的に実施する
リリース管理:変更管理プロセスで承認された内容を本番環境に反映させる
サービスデスク:顧客との窓口の役割をし、サポート業務を行う

選択肢ア、イは問題管理。選択肢ウは問題管理あるいは、リリース管理に相当すると考えられます。

問34 システム開発を上流工程から下流工程まで順番に進めるとき、システムの利用者によるテストの段階で大幅な手戻りが生じる可能性がある。それを防ぐために、早い段階で試作ソフトウェアを作成して利用者の要求事項を明確にする方法はどれか。
オブジェクト指向
スパイラルモデル
データ中心アプローチ
プロトタイピング
解答
解説 上流から下流へ順番に工程を行っていく開発モデルをウォータフォールモデルといいます。問題文にもあるとおり、上流工程で修正を行うのが大変(テストによる設計の見直しなど)というデメリットがあります。そこで、試作ソフトウェア(プロトタイプ)を作成し、早い段階からユーザ(あるいはクライアント)の意見を反映させるモデルをプロトタイピングといいます。

オブジェクト指向とは、Java言語にに代表されるプログラミング言語の指向で、データと操作(メソッド)を一体化(クラス化)してプログラムを構成する手法です。
スパイラルモデルとは、要求定義から実際に実装までを繰り返しながら開発を進めます。ウォータフォールモデルとプロトタイピングモデルの中間のような感じで、大規模システム開発に向いています。
データ中心アプローチとは、データの構造や流れに着目し設計を行なう手法。データベースを一元化することで設計をシンプルにするというアプローチ。それ以前は、プロセス中心アプローチというのが主流でした。

問35 内部統制が有効に機能することを持続的に評価するプロセスはどれか。
暗号化対策
災害復旧対策
ベンチマーキング
モニタリング
解答
解説 内部統制とは、企業の業務を適切に行っていくためにルールやプロセスを整備することをいいます。内部監査とも密接なかかわりがあります。そのため、業務の監視(モニタリング)が重要な役割を果たします。

暗号化対策は、セキュリティ。災害復旧対策は、リスク管理。ベンチマーキングは、製品比較に関する事項です。

問36 システム監査の流れの中で、被監査側が実施するものはどれか。
改善の確認
監査計画作成
監査報告書作成
業務改善
解答
解説 監査とは、業務が正しく行われているかどうかをチェックすることです。監査を受ける側(被監査側)は、監査への積極的な協力と、結果を基にした業務改善を実施する必要があります。

問37 ITサービスマネジメントにおけるインシデントはどれか。
サービスの提供者と利用者の間で合意されたサービスの内容及びレベル
サービス品質の低下を引き起こすもの
サービス利用の課金情報の提供
サービスレベルを維持管理する活動
解答
解説 インシデントとはセキュリティやサービスを脅かす脅威のことで、障害や損害を引き起こすような攻撃のことを指します。そして、攻撃をうけたときにいかに速やかに回復・復旧できるかということを目的にしたものをインシデント管理といいます。

問38 ソフトウェアの品質評価の基準である品質特性には、機能性、信頼性、使用性、効率性などがある。機能性に関するテストとして、適切なものはどれか。
応答時間や処理時間など求められる性能が備わっていることを検証する。
使用目的や要件に従って正しく動作することを検証する。
必要なときに使用でき、故障時には速やかに回復できることを検証する。
利用者にとって理解、習得、操作しやすいことを検証する。
解答
解説 ソフトウェアの品質には、ISO/IEC 9126という規格があり、以下の6つの特性が定義されています。

機能性(functionality):ソフトウェアが、指定された条件の下で利用されるときに、明示的及び暗示的必要性に合致する機能を提供するソフトウェア製品の能力
信頼性(reliability):指定された条件下で利用するとき、指定された達成水準を維持するソフトウェア製品の能力
使用性(usability):指定された条件の下で利用するとき、理解、習得、利用でき、利用者にとって魅力的であるソフトウェア製品の能力
効率性(efficiency):明示的な条件の下で、使用する資源の量に対比して適切な性能を提供するソフトウェア製品の能力
保守性(maintainability):修正のしやすさに関するソフトウェア製品の能力
移植性(portability):ある環境から他の環境に移すためのソフトウェア製品の能力

それぞれの特性には、副特性というさらに細かい性質が定義されています。

問39 情報システムの運転状況を監査する場合、監査人として適切な立場の者はどれか。
監査対象システムにかかわっていない者
監査対象システムの運用管理者
監査対象システムの運用担当者
監査対象システムの運用を指導しているコンサルタント
解答
解説 監査の基本は、監査機関と被監査機関の独立と、専門的で中立的な立場からの客観的指摘です。また、証拠資料はかならずコピーなどを取り複数保管しておくのが基本です。また、企業の監査部門が行う内部監査と第三者機関に依頼する外部監査の二つがあります

問40 ソフトウェアベンダから提供されたセキュリティパッチの内容を確認し、自社システムに適用する場合の影響を評価した。この作業はシステムの運用管理業務のうちどれに該当するか。
インシデント管理
構成管理
変更管理
リリース管理
解答
解説 サービスサポートは、一つの機能と、五つのプロセスで構成されています。下に内容をまとめます。

インシデント管理:障害時の迅速な回復を行い、影響を最小限にする
問題管理:インシデントや障害の原因の解明と対策・再発防止を行う
構成管理:構成アイテム情報の収集や維持・管理・確認・検査を行う
変更管理:構成アイテムの変更を安全かつ効率的に実施する
リリース管理:変更管理プロセスで承認された内容を本番環境に反映させる
サービスデスク:顧客との窓口の役割をし、サポート業務を行う

今回の場合は、パッチをあてシステムを修正するので、変更管理に相当します。