平成22年度 春期 基本情報技術者試験 問61−80 解答編




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基本情報

(基本情報技術者試験)

解答と解説のページです。

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問61 BPOを説明したものはどれか。
自社ではサーバを所有せずに、通信事業者などが所有するサーバの処理能力や記憶容量の一部を借りてシステムを運用することである。
自社ではソフトウェアを所有せずに、外部の専門業者が提供するソフトウェアの機能をネットワーク経由で活用することである。
自社の管理部門やコールセンタなどで特定部門の業務プロセス全般を、業務システムの運用などと一体として外部の専門業者に委託することである。
自社よりも人件費の安い派遣会社の社員を活用することで、ソフトウェア開発の費用を低減させることである。
解答
解説 BPO(business process outsourcing)とは、自社の業務プロセスの一部をアウトソーシング(外部委託)することです。広義のアウトーソーシングとの境界線はあいまいですが、自社の行っていることを外部に委託し、残りの業務に専念できるという特徴があります。

問62 ビジネスプロセスを根本的に考え直し、根本的にデザインし直すことによって、企業のコスト、品質、サービス、スピードなどのパフォーマンスを劇的に改善するものはどれか。
アライアンス
コアコンピタンス
ゴーイングコンサーン
リエンジニアリング
解答
解説 選択肢の用語を以下にまとめます。

アライアンス:企業提携のことであり、共同で事業を行っていくこと。
コアコンピタンス:利益をもたらすことのできる、他社より優越した自社独自のスキルや技術のこと
ゴーイングコンサーン:企業継続前提のこと。企業が事業を継続していくことを前提とした経営・会計・理念のこと。
リエンジニアリング:ビジネスプロセスなどを見直し、再設計するものです。

問63 改善の効果を定量的に評価するとき、複数の項目で評価した結果を結合し、定量化する方法として重み付け総合評価法がある。表の中で最も優先すべき改善案はどれか。

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案1
案2
案3
案4
解答
解説 一つずつ計算していきます。

案1:6X4+5X3+6X3=57
案2:8X4+5X3+4X3=59
案3:2X4+9X3+7X3=56
案4:5X4+5X3+6X3=53

よって、最も評価が高いのは案2であるので、選択肢イが正解となります。

問64 利用者が、インターネットを経由してサービスプロバイダ側のシステムに接続し、サービスプロバイダが提供するアプリケーションの必要な機能だけを必要なときにオンラインで利用するものはどれか。
ERP
SaaS
SCM
XBRL
解答
解説 SaaS(Software as a Service)は、従来のライセンス販売とインストールという形態ではなく、インターネット経由でサービスを提供するのが特徴です。ダウンロードして利用するのではなく、セキュリティで守られたWebページ上でサービスを利用します。

ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)は、企業全体の資源を統括的に管理することで効率化を目的としたものです。これを実現する支援ソフトウェアをERPパッケージといいます。
SCM(Supply Chain Management:供給連鎖管理)は、物流システムを1つの部署内で完結させるのではなく、会社規模・全社規模で一元管理し、最適化することで、納期の短縮やコストの低下を目的とするものです。
XBRL(eXtensible Business Reporting Language)は、各種財務諸表を電子化するために作られたXMLベースの言語です。

問65 情報化に関する費用のうち、ランニングコストに該当するものはどれか。
サーバなど情報機器の保守費用
情報システム戦略立案のコンサルティング費用
ソフトウェアパッケージの導入費用
要件定義を行うシステムエンジニアの費用
解答
解説 イニシャルコスト(初期コスト)とは、何かを始めるときに最初に一括でかかるコストとのことで、ランニングコスト(運用コスト)とはそれを維持するために継続的にかかる費用のことです。前者は導入費が代表例で、後者は維持費や教育費が代表例です。

選択肢アは、ランニングコストに分類されます。
選択肢イ、ウ、エは、イニシャルコストに分類されます。

問66 要件定義の段階で行う作業はどれか。
新たに構築する業務とシステムの仕様を明確化し、システム化範囲を明示する。
顧客が記述したニーズに合ったソフトウェアを開発する。
事業の目的、目標を達成するために必要なシステム化の方針を立案する。
ソフトウェア製品の運用及び利用者に対する運用支援を行う。
解答
解説 要求定義とは、システム開発の最も上流にある工程で、どんなシステムを開発するのかを決定します。

V字工程を表示できません

選択肢イは、開発の説明です。
選択肢ウは、立案の説明です。
選択肢エは、運用、保守の説明です。

問67 “提案評価方法の決定”に始まる調達プロセスを、調達先の選定、調達の実施、提案依頼書(RFP)の発行、提案評価に分類して順番に並べたときに、cに入るものはどれか。

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調達先の選定
調達の実施
提案依頼書(RFP)の発行
提案評価
解答
解説 選択肢を順番にならべると、提案評価方法の決定 → 提案依頼書(RFP)の発行 → 提案評価 → 調達先の選定 → 調達の実施となります。

RFI:(Request for Information)情報提供依頼書
RFP:(Request For Proposal)提案依頼書
RFQ:(Request For Quotation)見積依頼書

まず、RFIで業者に情報提供を依頼し、それをもとに業者を選定します。その後選定した業者に、具体的な内容を求めるRFPを依頼します。最後に価格などを決めるRFQを依頼します。RFPとRFQは一緒になる場合もあります。

問68 プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)マトリックスのa,bに入れる語句の適切な組合せはどれか。

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解答
解説 プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)は、市場における自社の客観的な立場を把握し、資源配分などを決めるために用いられます。例を下に図示します。

プロダクトポートフォリオマネジメント

各象限の状態を解説しておきます。
問題児(導入期):マーケティングへの参入を考える
花形(成長期):今後に期待ができるが、まだ資金の投入が必要
金のなる木(成熟期):利益が安定し、収入が期待できる
負け犬(衰退期):マーケティングからの撤退を考える

マーケティングの流れは、問題児 → 花形 → 金のなる木 → 負け犬となります。

問69 企業経営におけるニッチ戦略はどれか。
キャッシュフローの重視
市場の特定化
垂直統合
リードタイムの短縮
解答
解説 ニッチ戦略とは、ニッチ(=くぼみ)戦略は別名焦点絞込戦略とも呼ばれます。これは、他社が入りにくい隙間のような市場に焦点を当てた戦略です。

他にも以下のような代表的な戦略があります。

プッシュ戦略:プッシュは押すという意味で、自社のメリットや魅力をアピールすることで消費者に強く商品を売り込む戦略です。
ブランド戦略:ブランドは銘柄、有名商品という意味で、自社の製品のイメージを高めロイヤリティを高める戦略です。
プル戦略:プルは引くという意味で、広告やCM、チラシなどで商品を宣伝し、顧客を商品に引き付けて購入してもらう戦略です。

問70 T社では、A,B,Cの3種類の商品を販売している。現在のところ、それぞれの商品には毎月10,000人、20,000人、80,000人の購入者がいる。来年から商品体系を変更して、P,Q,R,Sの4種類の新商品を販売する予定である。

そこで、現在の顧客が新商品を購入する割合と新規の顧客数を試算した。この試算について、適切なものはどれか。

画像(問70)を表示できません
商品Aの購入者のうち、1,000人が商品Qを購入すると予想している。
商品Bの購入者は、商品P,Q,R,Sのどれかを購入すると予想している。
商品Pの購入見込者の5割は、商品Aの購入者であろうと予想している。
商品Sの新規顧客人数は、商品Cは購入者のうち商品Sを購入する人数より少ないと予想している。
解答
解説 選択肢を順番に評価していきます。

選択肢ア:10,000人の3割が商品Qを購入すると予想されているので、10,000×0.3=3000人で誤りです。
選択肢イ:商品Bの購入者はPに1割、Qに6割、Rに1割、Sに1割で1+6+1+1=9割。よって、1割はどの商品も買わなくなると予想されているので誤りです。
選択肢ウ:商品Aからの購入見込者10,000×0.5 = 5,000人。商品Bからの購入見込者20,000×0.1 = 2,000人。商品Cからの購入見込者80,000×0.1 = 8,000人。更に新規の顧客5000人を加えて20,000人と予想されています。なので、商品Aからの購入見込者は25%となります。
選択肢エ:商品Sno新規顧客人数は23,000人。商品Cから商品Sへの購入見込者は、80,000×0.3=24,000人なので、新規顧客人数のほうが少ないことが分かります。

よって、選択肢エが正解となります。

問71 ナレッジマネジメントを説明したものはどれか。
企業内に散在している知識を共有化し、全体の問題解決力を高める経営を行う。
迅速な意思決定のために、組織の階層をできるだけ少なくした平型の組織構造によって経営を行う。
優れた業績を上げている企業との比較分析から、自社の経営革新を行う。
他者にはまねできない、企業独自のノウハウや技術などの強みを核とした経営を行う。
解答
解説 形式知だけでなく、暗黙知を含めた幅広い知識を共有して活用することで、新たな知識を創造しながら経営を実践する経営手法のことをナレッジマネジメントといいます。

他の選択肢の用語をまとめると以下のようになります。
選択肢イ:フラット型組織
選択肢ウ:ベンチマーキング
選択肢エ:コアコンピタンス

問72 アクセシビリティを説明したものはどれか。
携帯電話や自動車電話のように、利用者が移動しながら通信端末を利用することができる環境
高齢者や障害者でも容易に情報機器を活用でき、情報サービスを受けることができる環境
情報通信手段の活用によって、通勤時の時間的・精神的なロスのない勤務形態を実現できる環境
モバイルコンピューティング、ホームネットワークなどによって、コンピュータ利用の利便性を増した環境
解答
解説 アクセシビリティ(=近づきやすさ)とは、どんなひと(高齢者や障害者)でも利用しやすいという性質です。

選択肢アは、移動体通信の説明です。
選択肢ウは、SOHO(Small Office Home Office)の説明です。
選択肢エは、ユビキタスコンピューティングの説明です。

問73 @〜Bの手順に従って処理を行うものはどれか。

@ 今後の一定期間に生産が予定されている製品の種類と数量及び部品構成表を基にして、その構成部品についての必要量を計算する。
A 引当可能な在庫量から各構成部品の正味発注量を計算する。
B 製造/調達リードタイムを考慮して構成部品の発注時期を決定する。
CAD
CRP
JIT
MRP
解答
解説 MRP:(Material Requirements Planning)とは、資材所要量計画のことで、適切な場所で適切な量(過剰や不足を防ぐ)の在庫を確保するために、発注点や発注量を計算し計画することです。Materialとは資材・物質、Requirementsは必要物、要求という意味です。これにより、製造に必要な資材及びその必要量に関する情報が複雑で、発注量の算出を誤りやすく、生産に支障を来たしている。場合などに改善が見込まれます。

CAD(Computer Aided Design):コンピュータ支援設計と訳され、コンピュータを用いた設計や設計を支援するソフトウェアをいいます。
CRP(Continuous Replenishment Program):連続補充方式と訳され、POSなどなどを応用して、必要在庫数量を計算し、自動的に補充する仕組みをいいます。
JIT(Just-in-Time):トヨタ生産方式、カンバン方式などとも呼ばれ、必要な物を、必要な時に、必要な量だけ生産することで、工程間の中間在庫を減らすことで経済化・効率化を行います。

問74 RFIDを利用したものはどれか。
ICタグ
磁気カード
バーコード
メモリカード
解答
解説 RFID(Radio Frequency Identification)とは、小型のICチップを無線で認識することにより、対象物を認識する技術です。非接触であり、バーコードに変わる技術として注目されています。現在では図書館などの本の管理などで実用化され始めています。

磁気カード:磁性体によって、データを記憶するカード。基本的にデータがそのまま記録されているので、スキミングなどをされやすい傾向があります。
バーコード:縞模様状の線の太さによって数値や文字を表すもので、JANコードが有名です。
メモリカード:フラッシュメモリやSDカードに代表される薄型の補助記憶装置の総称です。

問75 事業部制組織を説明したものはどれか。
ある問題を解決するために一定の期間に限って結成され、問題解決とともに解散する。
業務を機能別に分け、各機能について部下に命令、指導を行う。
製品、地域などで構成された組織単位に、利益責任をもたせる。
戦略的提携や共同開発など外部の経営資源を積極的に活用することによって、経営環境に対応していく。
解答
解説 選択肢の事業形態を以下にまとめます。

選択肢ア:プロジェクト型組織
選択肢イ:機能別組織
選択肢ウ:事業部制組織
選択肢エ:アライアンス(企業提携)

問76 昨年度と今年度の入社試験問題を比較するために、多数の社員に両年度の問題を解答させた。昨年度の問題の得点をx軸に、今年度の得点をy軸にとって、相関係数と回帰直線を求めた。[結果]から分かることはどれか。

[結果]
相関係数は0.8であった。
回帰直線の傾きは、1.1であった。
回帰直線のy切片の値は10であった。
回帰直線のy切片の値から、今年度の問題の得点が0点の人でも、昨年度の問題では10点程度とれることが分かる。
回帰直線の傾きから、今年度の問題の平均点は、昨年度の問題の平均点の1.1倍であることが分かる。
回帰直線の傾きとy切片の値から、今年度の問題は昨年度の問題に比べて得点しやすい傾向にあることが分かる。
回帰直線の傾きと相関係数の値から、今年度の問題は質が高いことが分かる。
解答
解説 2つの関係は求めた回帰直線(一次方程式)のy=ax+bにあてはめて考えると分かりやすいです。傾きとはaのことで、切片とはbのことです。これを代入しグラフにすると以下のようになります。

画像(問76kai)を表示できません

質の良さや平均値はこのグラフからは分かりません。選択肢アは逆で、昨年度0点の人でも、今年度は10点程度とれるといえます。

なお、相関には以下の3種類の相関があります。

散布図を表示できません

回帰直線はすべての点からの誤差が最も小さくなるように引いた直線のことで、実際には、最小2乗法などで求めます。

問77 損益分岐点の特性を説明したものはどれか。
固定費が変わらないとき、変動費率が低くなると損益分岐点は高くなる。
固定費が変わらないとき、変動費率の変化と損益分岐点の変化は正比例する。
損益分岐点での売上高は、固定費と変動費の和に等しい。
変動費率が変わらないとき、固定費が小さくなると損益分岐点は高くなる。
解答
解説 まず、重要な用語を下にまとめます。

損益を表示できません

なお、損益分岐点売上高は、損益分岐点のときの売上で、損益分岐点比率は、損益分岐点売上高の売上高に対する割合を指します。
これに基づいて考えると以下のようなことが分かります。
固定費が大きいほど、損益分岐点比率は高くなり、利益は減少する。
変動費率が高いほど、損益分岐点比率は高くなり、利益は減少する。
損益分岐点比率が高いほど、売上に対する利益は低くなる。

選択肢を順に見ていきます。
選択肢ア:固定費が変わらないとき、変動費率が低くなると、損益分岐点は低くなります。
選択肢イ:変動費率と損益分岐点は連動しますが、正比例ではありません。
選択肢ウ:損益分岐点は、利益=0なので、売上=費用となります。(正解)
選択肢エ:変動費率が変わらないとき、固定費が下がると損益分岐点は低くなります。

問78 A社は顧客管理システムの開発を、情報システム子会社であるB社に委託し、B社は要求定義を行った上で、設計・プログラミング・テストまでを協力会社であるC社に委託した。C社では優秀なD社員にその作業を担当させた。このとき、開発したプログラムの著作権はどこに帰属するか。ここで、関係者間の間には、著作権の帰属に関する特段の取決めはないものとする。
A社
B社
C社
D社員
解答
解説 著作権は特段の取決めない場合、作った会社に権利があり担当者がだれであろうと会社に帰属します。よって、実際に開発を行ったC社に権利があります。

問79 労働者派遣法に基づいた労働者の派遣において、労働者派遣契約の関係が存在するのはどの当事者の間か。
派遣先事業主と派遣労働者
派遣先責任者と派遣労働者
派遣元事業主と派遣先事業主
派遣元事業主と派遣労働者
解答
解説 労働派遣と委託契約について、以下に3者の関係を図示します。指揮・命令関係が異なるので注意してください。

派遣を表示できません

問80 JISQ27001:2006におけるISMSの確立に必要な事項@〜Bの順序関係のうち、適切なものはどれか。

@ 適用宣言書の作成
A リスク対策のための管理目的及び管理策の選択
B リスクの分析と評価
@ → A → B
@ → B → A
A → B → @
B → A → @
解答
解説 ISMSの確立手順を大まかにまとめると下のようになります。

@基本方針の決定
Aリスクの特定
Bリスクの分析と評価(Bに相当)
Cリスク対応(Aに相当))
D残留リスクの承認
E宣言書の作成(@に相当)
F遵守

細かく分けるともう少し細かくなりますが、大まかにはこのようになります。よって、選択肢エのようになります。