平成23年度 春期 ITパスポート試験 問1−20 解答編




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ITパスポート

(エントリ試験)

解答と解説のページです。

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問1 コンピュータプログラムの開発や作成に関する行為のうち、著作権侵害となるものはどれか。
インターネットからダウンロードしたHTMLのソースを流用して、別のWebページを作成した。
インターネットの掲示板で議論されていたアイディアを基にプログラムを作成した。
学生のころに自分が作成したプログラムを使い、会社業務の作業効率を向上させるためのプログラムを作成した。
購入した書籍に掲載されていた流れ図を基にプログラムを作成した。
解答
解説 著作権は、制作物に対して製作者に権利を与えるものです。よって、選択肢アのように他者が作成したHTMLやそのほかのコンテンツを勝手に利用することは違法となります。選択肢ウのように自分が権利者である場合には問題がありません。

また、著作権法におけるアイディアや流れ図に関しては以下のようになっています。

第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
<中略>
九 プログラムの著作物

2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。


つまり、プログラム自体は保護の対象になるが、プログラミング言語そのものやプロトコル、アルゴリズム、アイディア、流れ図(フローチャート)は著作権の保護対象外ということになります。

問2 労働派遣に関する記述のうち、適切なものはどれか。
派遣先企業には派遣労働者からの苦情処理に当たることは認められていない。
派遣された労働者を別会社へ再派遣することは認められていない。
派遣労働者の就業場所の変更を伴う配置転換は、派遣先企業に認められている。
派遣労働者への指揮命令権は派遣元企業に認められている。
解答
解説 労働派遣と委託契約について、以下に3者の関係を図示します。指揮・命令関係が異なるので注意してください。

派遣を表示できません

選択肢ア:労働派遣法40条等に「苦情の申出を受けたときは、当該苦情の内容を当該派遣元事業主に通知するとともに、当該派遣元事業主との密接な連携の下に、誠意をもって、遅滞なく、当該苦情の適切かつ迅速な処理を図らなければならない。」とあります。
選択肢イ:労働派遣は、自己が雇用する労働者を派遣するものなので、再派遣(二重派遣)は違法となります。
選択肢ウ:派遣先の条件や場所は派遣元と派遣先の契約により決まりますので、派遣先が勝手に変更することはできません。
選択肢エ:労働者への指揮命令権は、派遣先にあります。

問3 評価指標には目標の達成度を評価する指標と、目的達成の手段を評価する2種類がある。“社員の英語力を向上する”との目標を設定したとき、目標の達成度を示している指標として、適切なものはどれか。
英語学習の重要性に関する社長メッセージの社員認知率が80%以上
英語力テストでの650点以上の得点者比率が60%以上
英語力テストへの社員参加率が90%以上
月例の社内英語研修の開催率が90%以上
解答
解説 まず、これらのかかわりの深いまず、2つの用語の意味を以下にまとめます。

KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標):目的を実現するための重要な業務が適切に行われているか評価する指標
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標):目的が達成されたかどうかを評価するための指標

実際に、英語力が向上している選択肢イのような評価は、KGIになります。
一方で、ほかの選択肢は、英語力向上につながるものですが、目標達成率にはならないので、KPIになります。

問4 図の手順でソフトウェアを調達するとき、1に該当する項目として、最も適切なものはどれか。ここで、ア〜エは、1〜4のいずれかに該当するものとする。

画像(問4)を表示できません
RFP説明
調達先選定基準作成
提案書作成
提案書評価
解答
解説 全体の流れを見ながら回答欄を埋めていきます。

1.要件仕様書の作成:どのようなシステムがほしいのかをまとめます。
2.RFPの作成:ベンダへ情報提供の具体的な依頼書を作成します。
3.調達先選定基準作成:ベンダを選ぶ基準を作成します。
 (回答欄を埋めるように考えるならば、直後に候補の選定があるので、その前に選択基準を作る必要があると見ることもできます。)
4.調達候補の選定:調達先選定基準に基づき、今回のシステム導入に適切なベンダをまとめます。(まだ1社に決まったわけではありません)
5.RFPの説明:ベンダに作成したRFPを説明し、提案書を作成してもらう要請を行います。
6.提案書作成:ベンダ側がシステム導入の提案書を作成します。
7.提案書評価:ベンダに作ってもらった提案書を評価します。
8.提案書の中でもっともシステム導入に適したベンダを選定します。
9.細かい取り決めのあと、選定したベンダと正式に契約を結びます。


最後に、RFI、RFP、RFQの3つを順に解説します。

RFI:(Request for Information)情報提供依頼書
RFP:(Request For Proposal)提案依頼書
RFQ:(Request For Quotation)見積依頼書

まず、RFIで業者に情報提供を依頼し、それをもとに業者を選定します。その後選定した業者に、具体的な内容を求めるRFPを依頼します。最後に価格などを決めるRFQを依頼します。RFPとRFQは一緒になる場合もあります。

問5 ソフトウェアライフサイクルを企画プロセス、要件定義プロセス、開発プロセス、運用プロセスに分けたとき、企画プロセスの成果として、適切なものはどれか。
開発するソフトウェアの要件が定義され、レビューされている。
システムに対する要件と制約条件が定義され、合意されている。
システムを実現するための実施計画が策定され、承認されている。
データベースが最上位のレベルで設計され、レビューされている。
解答
解説 共通フレーム2007は、システム開発に関連する作業をプロセス、アクティビティ、タスク、リスト」の4つの階層で構成され。プロセスは、主ライフサイクル・プロセス、組織に関するライフサイクル・プロセス、支援ライフサイクル・プロセス、システム監査の視点、共通フレームの修正から構成されています。

企画プロセスは、主ライフサイクル・プロセスに位置します。その中でも業務要件定義は実現すべき要件の定義を行うため、プロセスは様々なプロセスに先立って行われます。

選択肢アは、要件定義、あるいは開発プロセスの成果です。
選択肢イは、要件定義プロセスの成果です。
選択肢エは、開発プロセスの成果です。

問6 “経営戦略に沿って効果的な情報システム戦略を立案し、その戦略に基づき、効果的な情報システム投資のための、またリスクを低減するためのコントロールを適切に整備・運用するための規範”はどれか。
システム監査基準
システム管理基準
情報セキュリティ監査基準
情報セキュリティ管理基準
解答
解説 まず、監査とは対象物やシステムが適切に利用されているか、法令に遵守されているかを調べることです。管理とは対象物やシステムを適切に管理し、効率よく利用することをいいます。

今回はシステムの運用に関することなので、選択肢イのシステム管理基準が正解となります。

それぞれの基準の、前文にある目的をまとめると以下のようになります。
システム監査基準:システム監査業務の品質を確保し、有効かつ効率的に監査を実施することを目的とした監査人の行為規範
システム管理基準:組織体が主体的に経営戦略に沿って効果的な情報システム戦略を立案し、その戦略に基づき情報システムの企画・開発・運用・保守というライフサイクルの中で、効果的な情報システム投資のための、またリスクを低減するためのコントロールを適切に整備・運用するための実践規範
情報セキュリティ監査基準:情報セキュリティ監査業務の品質を確保し、有効かつ効率的に監査を実施することを目的とした監査人の行為規範
情報セキュリティ管理基準:組織体が効果的な情報セキュリティマネジメント体制を構築し、適切なコントロールを整備、運用するための実践規範

いずれも、経済産業省により作成されてます。

問7 A社は、事業戦略の見直しのため、SWOT分析によって、内部環境と外部環境の分析を行った。内部環境の分析に該当するものとして、最も適切なものはどれか。
A社製品の競合製品の特徴の洗出し
A社製品の限界利益率の把握
A社製品の市場価格の調査
A社製品の代替品の市場調査
解答
解説 SWOT分析とは、目的達成の環境を4つに分けて分析するものです。下に概要を示します。

まず、内部要因と外部要因に分けられます。

内部要因
強み(Strengths) :目標達成に貢献する個人や組織の要因
弱み(Weaknesses):目標達成に障害となる個人や組織の要因

外部要因
機会 (Opportunities):目標達成に貢献する外部の要因
脅威 (Threats) :目標達成に障害となる外部の要因

製品や組織にかかわる、選択肢イは内部要因に分けられます。 製品を展開する市場にかかわる、選択肢ア、ウ、エは外部要因に分けられます。

問8 経営管理の仕組みの一つであるPDCAのCによって把握できるものとして、最も適切なものはどれか。
自社が目指す中長期のありたい姿
自社の技術ロードマップを構成する技術要素
自社の経営計画の実行状況
自社の経営を取り巻く外部環境の分析結果
解答
解説 PDCAサイクルとはPlan(計画)⇒Do(実行)⇒Check(点検・確認)⇒Act(処置・改善)⇒Plan・・・の循環をいいます。

選択肢ウ以外は、Planで行うべき要素であるといえます。

問9 データマイニングの事例として、適切なものはどれか。
ある商品と一緒に買われることの多い商品を調べた。
ある商品の過去3年間の月間平均売上高を調べた。
ある製造番号の商品を売った販売店を調べた。
売上高が最大の商品と利益が最大の商品を調べた。
解答
解説 業務でいままで蓄積してきた大量のデータを目的別にまとめたものをデータウェアハウスといい、そこから、相関関係などを分析することによって、今まで見つけることができなかった関係を見つけ出し、今後の意思決定を支援する技術をデータマイニングといいます。

有名な例としては、おむつを買う客はビールも買う傾向がある(おむつを買う顧客は若い夫婦がおおいため)などがあります。

他の選択肢は、検索や統計処理により求めることができます。

問10 ある販売会社が取り扱っている商品の4月末の実在個数が100個であり、5月10日までの受発注取引は表のとおりである。商品は発注日の5日後に入荷するものとし、販売会社と商品発注先の休日、及び前月以前の受発注取引を考えない場合、5月10日時点の引当可能在庫数は何個か。ここで、引当可能在庫数とは、その時点の在庫のうち引当可能な数量とする。

画像(問10)を表示できません
60
90
110
140
解答
解説 ひとつずつ追いかけていきます。

4月末:在庫数=100個
5月2日:40個の受注。在庫数=60個
5月3日:50個の発注。
5月6日:20個の受注。在庫数=40個
5月7日:50個の発注。
5月8日:5月3日に発注したものが入荷し(50個)、30個の受注。在庫数=60個
5月12日:5月7日に発注したものが入荷し(50個)。在庫数=110個

5月10日時点での在庫数は60個となります。

問11 製造業のA社では、製品の組立てに必要な部品を購買している。A社では、自社の仕入金額全体に占める割合が大きい部品を、重点的に在庫管理を行う対象として選びたい。このとき利用する図表として、適切なものはどれか。
ガントチャート
管理図
特性要因図
パレート図
解答
解説 それぞれの選択肢の図を以下にまとめます。

 ガントチャートは以下のような図で、工程の進捗を管理するために用いられる図です。
ガントチャートを表示できません

 管理図は以下のような図で、工程の状態や品質を時系列に表した図であり、工程が安定した状態にあるかどうかを判断するために用いる図です。
管理図を表示できません

 特性要因図(フィッシュボーン)は以下のような図で、矢印付き大枝の先端に特性、枝に要因を表した図であり、影響の関係を分析するために用いる図です。
特性要因図を表示できません

 パレート図は下のような図で、値を表す棒グラフと累積比率を表す折れ線グラフで構成されています。値が全体に占める割合などを調べることができ、重要度の高い項目を探すABC分析などを行うのに適している図です。
パレート図を表示できません


問12 技術ロードマップに関する記述のうち、適切なものはどれか。
過去の技術の変遷を整理したものであり、将来の方向性を示すものではない。
企業や産業界の技術戦略のために作成されるものであり、政府や行政では作成されない。
技術開発のマイルストーンを示すものであり、市場動向に応じた見直しは行わない。
事業戦略に基づいた技術開発戦略などを示すものであり、技術者だけが理解すればよいものではない。
解答
解説 技術ロードマップとは、技術の進歩の予想図のことです。政府や行政によっても作成され、市場に応じて修正されます。

工業系の技術ロードマップは、経済産業省から「技術戦略マップ」として1年ごとに発表されています。

問13 それぞれの企業が保有する経営資源を補完することを目的とした、企業間での事業の連携、提携や協調行動を表すものはどれか。
M&A(Merger & Acquisition )
アウトソーシング
アライアンス
事業ポートフォリオマネジメント
解答
解説 選択肢の用語を以下にまとめます。

M&A(Mergers and Acquisitions):株式などによる企業の合併・買収
アウトソーシング(外部委託):自社で行っていた業務を外部へ委託すること
アライアンス:企業提携のことであり、共同で事業を行っていくこと
事業ポートフォリオマネジメント:事業部単位で行われるプロダクトポートフォリオマネジメントで、市場の客観的評価が行えます。

問14 組込みシステムの特徴の一つであるリアルタイム性の説明として、適切なものはどれか。
いつでもどこでも必要な時間に必要な場所で使用できる性質
定められた時間の範囲内で一定の処理を完了する性質
制約の厳しいリソースの範囲内で一定の処理をこなす性質
制約の厳しいリソースの範囲内でトラブルなく稼動する性質
解答
解説 リアルタイム性(リアルタイムシステム)とは、入力を与えるとすぐに処理が行われる(対話的な処理)形態をいいます。(処理をためてから行う形態はバッチシステムといいます。)

リアルタイムシステムは一般に3つに分類されます。なお、デッドラインとはそれまでに終了しなければならない時間を指します。
@ ハードリアルタイムシステム:デッドラインを超えたときに、システムに甚大な被害を及ぼす
A ファームリアルタイムシステム:デッドラインを超えたときに、システムの処理価値がなくなる
B ソフトリアルタイムシステム:デッドラインを超えはじめると、システムの処理価値が徐々に低下していく

問15 気温と売上高の関係が負の相関となっているものはどれか。
画像(問15ans)を表示できません
解答
解説 散布図の相関関係を下にまとめます。なお、散布図はQC7つ道具の一つです。

散布図を表示できません

問16 会社の規模によって、会社法で設置が義務付けられているものはどれか。
会計監査人
システム監査人
税理士
内部監査人
解答
解説 会社法は、会社の設置や適切な運営に関する法律です。その中で会計監査人は資本金5億円以上、又は負債金額200億円以上の株式会社に設置されることが義務付けられています。また、会計監査人の資格は公認会計士又は監査法人となっています。

問17 CRMの目的として適切なものはどれか。
顧客満足度の向上
消費者の購入動向の把握
新規顧客の獲得
マーケットシェアの拡大
解答
解説 CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)は、企業内のすべての顧客チャネルで情報を共有し、サービスのレベルを引き上げて顧客満足度を高め、顧客ロイヤルティの最適化に結び付ける考え方である。

問18 A社の3年間の業務推移を示すグラフに関して、次の記述中のa,bに入れる字句の適切な組合せはどれか。

売上高に対する、売上原価の比率は[ a ]傾向、販売費及び一般管理費の比率は[ b ]傾向にある。

画像(問18)を表示できません
画像(問18ans)を表示できません
解答
解説 まず、2つの項目の計算式をまとめます。

売上原価の比率:原材料の売り上げにおける比率
営業利益、営業損益:原材料に、仕入れコストなどを考慮して出した利益『売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費』

まず、売上原価の比率をもとめます。
2007年:60/100×100=60%
2008年:70/130×100≒53.8%
2009年:80/160×100=50%

よって、売上原価は減少傾向にあります。

つぎに、営業利益をもとめます。
営業利益=売上高 − 売上原価 − 販売費及び一般管理費より、販売費及び一般管理費=売上高−売上原価−営業利益となります。
また、営業利益率=営業利益/売上高なので、営業利益=営業利益率×売上高となります。
つまり、販売費及び一般管理費=売上高−売上原価−(営業利益率×売上高)となります。 2007年:100−60−(0.15×100)=40−15=25
2008年:130−70−(0.12×130)=60−15.6=44.4
2009年:160−80−(0.10×160)=80−16=64

よって、販売費及び一般管理費は増加傾向にあります。

問19 企業が投下した自己資本に対してどれだけの利益を上げたかを示す、企業の収益性指標として、最も適切なものはどれか。
EVA
PER
ROA
ROE
解答
解説 それぞれの用語を以下にまとめます。

EVA(Economic Value Added:経済的付加価値)= 税引き後営業利益 −(投下資本×加重平均資本コスト)
PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)= 株価 / 1株当たりの利益
ROA(Return On Assets:総資産利益率)= 利益 / 総資産でもとめられ、高いほど資金を有効に利用していることになる
ROE(Return On Equity:自己資本利益率)=利益/ 自己資本でもとめられ、資本に対してどれだけ利益を上げられたか、高いほどよい

問20 不正競争防止法の不正競争に該当するものはどれか。
競争関係にある他社の信用の低下につながる、反社会的な行為を公表した。
自社で使っているドメイン名が、偶然他社のドメイン名と類似していた。
新聞に記載されていた掃除用具開発の着想を参考にして、オリジナルな文房具を開発した。
取引先から入手した情報が他社の営業秘密に当たるものであることを知っていながら、自社で使用した。
解答
解説 不正競争防止法では、『秘密として管理されている有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの』を営業秘密としています。これを保護することで、市場経済での公平的な競争が行われるようになります。

選択肢ア、イ、ウは不当に利益を得るものではありませんので、不正競争防止法には抵触しません。